ガルシア・マルケスの代表作(?)として(二十年ほど)前から興味を興味を持っていた本をついに読むことが出来た。
○最初の感想
最後の1ページで種明かし、ということで最後まで中身があって読み応えがあり、素晴らしかった。また、全体的なストーリーも6代?に亘ってブエンディア家、および集落マコンドの隆盛と滅亡を淡々と描いており、何かのドキュメンタリーを見たような充実感を得られた。
・似たような名前の登場人物
ホセ=アルカディオとアウレリャノという文字列を憶えるだけで主要メンバの半分の名前を憶えたことになる、というくらい上記の名前ばかり。
南米で良くあることなの? 本の表紙の近くにブエンディア家の家系図があるのだが、それを見ながら読めば特に人物の特定には困らない。一応家系図にいない登場人物もいるのだが、
まぁ名前を憶えなくても特に読了するには困らない。
・時間の流れが速く、みんな死んでいく。滅亡=みんな死ぬ
ある章ではある人物にスポットライトが当たり、その章の最後にそいつが死ぬ、という展開がひたすら続く。先に述べた家系図も、(年長者の)上からどんどん人が死んでいくので、自分が読書のどのあたりにいるのか家系図と今目立っている人を見れば分かる。こういう構成は僕には珍しかった。
・周囲に人が居ても孤独
各登場人物はそれぞれに家庭を作り、決して一人ではないはずなのだが、不義の子を設けたり出奔したりしているうちに、家族と心を通い合わせることが出来なくなっていく。自分で自分の世界を閉ざして、孤独の裡に死んでいく。
・人は忘れ去られていく
6代に亘る家庭が描かれているため、2代目の人間をもはや6代目の人間は知らない。帰り場所を求めて屋敷に帰った3代目の人間(2代目の落胤)を、6代目の人間は変質者と見なし、警察を呼んで追い払ってしまう(挙げ句そいつは銃殺される。)
生前に功を成し偉人として奉られてたとしても、時の流れは、ある偉人の記憶をぼやかし、なかったことにしてしまう。
後半の2項目は、2022年の今でも他人事たりえない、普遍的な人間の性だ。
いくら記録媒体の進歩が進み技術的には記録を半永久的に残せるようになったとしても、ある誰かの記録なんて、どこかの偉い教授が必死にかき集めでもしない限り、人の一生と同じくらいの時間で消え失せてしまうだろう。人の暮らしも記録もはかないものだ。
普遍的な人の営みを描いた名作だと思う。
小説としては、先日メモを書いた"肩をすくめるアトラス"よりもおすすめ。
------------ある旅人は、ブエンディア家の彼らの思い出を次のように語った。
初代
ホセ・アルカディオ・ブエンディア):
マコンドを起こした人だからそりゃ立派だし、死に際もそりゃあ詩的なものだったと、自分もそういう死に方がしたいかもって思ったね。でも、ちょっと早く死に過ぎたかな。いや、もう少し遅かろうが別に何も変わらなかったかな。
ウルスラ・イグアラン:
ウルスラ婆ちゃんがブエンディア家の守り神ってみんな思ってたと思う。
だから、いよいよ命尽きたってときは、もうこの一家の終わりだって思ったね。実際そうなったし。
2代目
ホセ・アルカディオ
なんか俺の中ではセブ(火の鳥)みたいな風体を想像してたんだよね。
目立って悪いことしていないのに銃で撃たれて可哀想なんだけど、
血が変な方角に垂れまくって婆ちゃんをビックリ仰天させたのは笑っちゃったよ。何だありゃ。
アウレリャノ・ブエンディア大佐
ウルスラに次いで長生きした男なのと、想像する姿が比較的見目好いものだったので応援していたけど、最後まで彼も孤独だったのだなぁというシーンが多すぎて、自分の老後が心配になる。
レメディオス・モスコテ
登場して30分くらいで死んじゃったのであまり覚えてない。
ブエンディア家に嫁いだ不幸なのか、あるいはどこに行ってもそんなもんだったのかね?
アマランタ
謎の女だったわ、最後まで誰にも心を許しているように見えなかった。
レベーカ
土食って姿を消したと思ったら思い出した頃に死に戻った人だったなぁ
何故か緑の布をまとったイメージなんだけど、バイオハザードのせいか?
3代目
アルカディオ(Arcadio)
アウレリャノ・ホセ(Aureliano José)
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダ
影薄い
17人のアウレリャノ
一山いくらって勢いで消えていったけど、終盤まで粘った君は立派だった。
この世の無情さを見せつけた
4代目
小町娘のレメディオス(Remedios the Beauty)
ホセ・アルカディオ・セグンド
あまり印象ない
アウレリャノ・セグンド
やっていることがアウレリャノの面汚しっぽくて嫌いだった…
フェルナンダ・デル=カルピオ
この話の中でも、とても分かりやすく孤独を抱えていた人って感じ。
自分のしたいようにしたくて出来なかったって言うとかわいそうな気もするけど、ひたすらKYだったとも書かれていて、実際に近くにいたら面倒だと思いそうだった。
5代目
ホセ・アルカディオ
ホセ・アルカディオ
司祭の勉強をしてきたはずなのだがなんかボンクラな印象しかないと思っていたら死んだね(すみません)
レナータ・レメディオス(メメ)
なんか2代目レメディオス並みにアッサリ死んでしまった。この話の中では割と今どきの子に近い描写がされていたように思う。謎のDQNと子供を作ったのはまずかったなぁ…
アマランタ・ウルスラ
ベルギーに行ったまでは素敵だったが終盤の呪われっぷりが酷かった。
明るげな空気を出しながら退廃的な空気を出す魔女のような…
6代目
アウレリャノ・バビロニア
アウレリャノ・バビロニア
奇しくもブエンディア家の出来事を一冊の本にしてしまった元凶。
ブエンディア家は本の中に閉じ込められ、彼だけは本の中から出られずに、まだ生きているって話だ。
(強いて言えば7代目)
アウレリャノ・バビロニア(豚のしっぽ)
(強いて言えば7代目)
アウレリャノ・バビロニア(豚のしっぽ)
家系図に名前が書いてあるのに最後の数ページだけの登場、おまけにブエンディア家の破滅フラグをかっさらっていくって酷いよね…
絶対に近親相姦をするなというウルスラの教えが破られた結果がこの結果だと。皮肉なものです。