近年の作品では異次元の名作という噂を基に見に行った"ドライブ・マイ・カー"の感想を書いておきたい。
さて、ちょっと乱暴な言い方をしてしまうと村上春樹の小説の4大キーワードと言ったら
「自分の世界観語り」「喪失」「感傷」「セックス」であり、
彼の小説内ではかなり高い頻度でこの中のどれかが行われる。
で、今日の映画がどうだったかと言えば…
まぁ自分語り多いわ、喪失多いわ、感傷多いわ、何かというとすぐセックスするわ…ということで
いつもの村上春樹だなぁという印象。
特に「自分の世界観語り」の長セリフについては、小説の文字をそのまま使っているだろうというものも多く、実際の会話らしさを感じないものも多かった。
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ストーリーとしての第一印象は上記なのだが、高槻(岡田将生)の車の中での最後の語りが始まる辺りから話の筋がハイライトに入り、それから北海道の墓参り?が終わるまでは緊張感があって非常に見応えがあった。
この辺りの無音とドライブ音の使い分けが緊張感と連動していて巧さを感じた。
あと、いつもの村上春樹の小説のノリだと、
北海道に行って会話が噛み合ったと思ったら流れでユウスケとミサキがセックスして終了みたいなノリになりがちなのが、そうならずに互いの道を歩き始めたという筋だったのは良かったと思う。
上記の会話が噛み合ったというのは、
相手を受け入れきれなかった=殺したも同じ、という感覚の共有のことで、
この辺りが見ている人にも刺さる部分ということになるだろうか。
そうだとしても、相手を受け入れきれないなんて、決して責められることとは思わないけどね。お互いがお互いを赦して受け入れられたらいいのに…