ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【逝く人】難波先生より

2013-11-14 12:38:14 | 修復腎移植
【逝く人】「逝くものはかくの如きか昼夜をおかず」、「論語」に出て来る言葉だ。孔子が川の流れを見て考えたという。「方丈記」冒頭の有名な文章も、この流れを汲む。
 鴨長明も「論語」は読んだだろう。


 時間の流れを川に喩えるのは古今の発想だ。ヘラクレイトスは「人は同じ川に二度と足を踏み入れることはできない」と述べている。映画に「帰らざる川(The River of No Return)」もある。ギターの弾き語りをする、マリリン・モンローの甘い声が蠱惑的だった。


 9日土曜日の夜、かつての「悪性リンパ腫」研究グループの同士を偲ぶ会が博多のホテルであり、一泊の予定で出席した。亡くなってもう1年半になる。89歳のご老体から40代の病理医、血液内科医まで全国から、40人を超える出席者があった。


 「追悼集を作ったら」と言いだした手前、会の前に、故人を含めて2006年秋、紀伊田辺にグループ旅行した時の座談会録音記録を転写する予定だったが、全部で3時間近くあり、間に合わなかった。IC録音だが、保養地の温泉ホテルなのに、会食場のBGMがやかましく、とてもコンピュータでの自動転写はできない。
 おまけに酒が入っているから、声が聞き取りにくい。何度も同じ箇所を聞かねばならないので、やけに時間がかかる。


 当時の手帳を開いてみると、2006年11月の予定表は空白欄がほとんどない。今は真っ白なので、えらい違いだ。


 あの年は、11月3日の新聞で宇和島の「病腎移植」が報じられ、すぐに全紙を購読し1週間ほど考えこみ、11月14日地元紙「中国」に「病腎移植支持論」を掲載してもらった。
 11月16日夜、広島大医学部同窓会館で開かれた「医療と生命倫理の会」で、この問題について特別発表を行ったら、取材のメディアがわんさか来た。
 19日は「産経」に、同趣旨の論評が掲載になった。
 21日には東京に行き、「毎日」本社での取材に応じた後、夜は国家公安委員長に就任した寮の下級生Mの祝賀会に出席した。


 翌日は和歌山市で開かれていた日本病理学会秋の総会に出席し、理事長のAと会って、「病理の役割を社会に認知してもらう、よい機会なので、病腎移植問題に学会として積極的に取り組んでほしい」という話をした。
 24日金曜日の夜は、田辺市のホテルに小旅行のグループで移動し、届いていた「毎日」記事のFAX原稿の校正を宴会前に行った。(これは27日月曜日に掲載になった。)


 あの頃は、「病腎移植バッシング」の真っ最中で、私のような意見はまったく異端だった。
 今回、録音の転写をやっていると、次のような発言があった。


<N: あの、「リンパ腫の会」の総意を伝えますと、先生が何かをいうのはいいんだけど、「病理医」と言わんでくれと…。
 K:なんでそんなことをいう。私には何も言わんかったよ。
 難波:Kさんにはよういわんで、言いやすいあんたにいったわけか…
 K:これこそ「病理医」と言うたほうが、ええやろう。

 難波:「病腎移植」問題の進展をお知らせしますと、病理学会の代表として保健衛生大の堤寛君を、徳洲会病院調査委員会の委員として送り込むことになり、今日の病理学会の倫理委員会でも、僕が提起した問題を委員長の井藤君が取り上げ、病理学会としても病理の重要性をアピールする機会として、積極的に協力するということになりました。
 要するに、「病理医というな」という連中は、わからんちんの集まりだ、と私は言いたいわけです。(爆笑)>
 

 「修復腎移植」問題については、項を改めて書きますが、事件発生からまる7年。


 「悪性リンパ腫」研究グループという、血液病理学、免疫学、がん医学全般に通じているはずのグループの(当時の)若手でさえ、あの頃はこんな状態だった。

 山本七平のいう「空気」に流されていた。まあ、そういう「空気」の上昇気流に乗る奴が、世間では出世するので、今や、あの時どういったかは、すっかり忘れているでしょう。




 この時、「病理医ということを積極的に言うたほうがよい」と私と同じ意見だったK先生は、その2年後、病をえて亡くなられた。一時は奇跡的な寛解に入ったのですが、再発した。私より7歳上で、高齢だから骨髄移植という治療法は無理だった。




 K先生とは、2007年秋に、奈良=熊野に2泊3日の同じグループ旅行を一緒にしたのが最後でした。会場で、天武天皇とその后で、後に持統天皇になった二人の合葬陵墓をバックに撮影した記念写真が投影されたのを見て、1976年から始まった30年以上にわたる、交友を懐かしく思い起こしました。




 ファウスト博士は「時よ止まれ、お前は美しい!」と「ファウスト」でいうが、時は止まらない。逝く人も後を断たない。

 世界を支配しているのが熱力学第二法則、すなわちエントロピー増大の法則だからです。
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