君よ!
君よ、自らを恥ずかしむるなかれ!お金のないことも、無名であることも、友のないことも、それらは、決して君の価値を低下せしむるものではないのだから。
もしも、金を稼ぐ能力が立派だというのなら、我々は小さな子供にだって頭が上がらない。
ニューオリンズのバーボン・ストリートでタップを踏む子供たちは、僅か10分の演技で数十ドル稼ぎだす。
世界一の売春婦が集うパリの街では、月収一千万円という娼婦もいるらしい。
もしも、金を稼ぐ能力が立派だというのなら、我々は、彼らこそ偉大といわなければならない。
人間の価値はそんなもので決まるものではないのだ。人間は自分でものを考え、世の中を正そうとするから尊いのだ。
けれども、そのような生き方をしているものは、僅かに少ない。
多くの人間は、もって生まれた天性を顧みることもなく、一生を終わってしまうからつまらないのだ。
お仕着せの価値観に自己を封じ込め、新聞雑誌を読んだだけで、もう一端の常識人気取り。
後はくだらない娯楽に現をぬかしているだけだ。一年のうちに、たった一冊の良書も手にしない輩が、人間の一般だと知ったら、君よ、恐怖を感じないか。
君よ、自らを恥ずかしむるなかれ!
君のいらだちや不安こそが正しいいのだ。君の感じている淋しさこそが人生の基調なのである。
決して、そこからの逃避を考えてはならない。見たまえ、周囲のおとな達の薄汚い姿や人相を。
「生きていくために仕方がないのだ」「家族のためなんだ」そんな言葉に君は耳を貸してはいけない。
一度耳を貸せば、いつの日か、君自身が、同じ言葉を吐くことになるからだ。
君よ、自らを恥ずかしむるなかれ!
お金のないことも、無名であることも、友のいないことも、それらは、決して君の価値を低下せしむるものではないのだから。
だから恐れることなく、自分の道を歩めばよいのだ。先人に続く、長い一筋の小道を歩いてゆけばよいのだ。
その道は、か細くいばらに満ちているが、間違いなく、至上のものへと続いている。
先人の言葉にこそ、君よ、耳を傾けるのだ。彼らは共通して、貧困と孤独を友とした人たちだが、
「生きていくために仕方がないのだ」
「家族のためなんだ」などとは決して口にしなかった人たちである。
そうして、唯一彼らこそが、人類に共通の財産を遺していったのである。
君よ、自らを恥ずかしむるなかれ!決して、現世の幸福など望むなかれ。
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