5時就寝、12時起床。
やべ。この体内時計が安定してきちゃった。
以前、このブログにも書いた『ブラバン(津原泰水 著)』を読了。
なんか、非常に不思議な余韻が残りました。
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388ページもあるのに、
まるで夢から覚めたように、突然終わってしまう感じ。
それでいて、あっさり感はなく、何とも言えない後味が、いまだ続いています。
その原因は、文章の温度感でしょう。
熱くなるような部分はなく、驚くような展開もなく、
常に温度感が一定なんです。しかも、どちらかというと、低い。
語り手である主人公が、とりとめもない回想を書きまとめたような印象で、
『テンションが低い』と表現する読者の方もいるようです。まったく、その通り。
それにも関わらず、何故か心に沁みます。
内容的には、先に『驚くような展開もなく』と書きましたが、
実際には、主人公を取り巻く吹奏楽時代の仲間のその後の人生は、
まさに波乱万丈です。
そうは言っても、非現実的なものではなく、
いつでも自分が、そして自分の周囲で起こりえる出来事ばかりであるところが、
特に驚くこともない代わりに、非常にリアルに感じられます。
強いて言えば、あまりハッピーな話ではありません。
でも、アン・ハッピーな感じも、まったく残りません。
自分の日常を振り返る物語なのかもしれません。
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この小説、物語の本筋ではないけど、それでも登場人物の重要な付加情報として
吹奏楽の楽器や楽曲の話など、いろんな話が出てきます。
そのどれもが、非常に緻密で細かく、そしてマニアック。
僕がこの小説にハマってしまった理由は、ここにもあります。
吹奏楽部の話以外にも、
ジャズ、ギター、洋楽、オーディオ機器、そして80年代文化の話など、
まるで『僕のために書かれたんじゃないか?』と思ってしまうほどど真ん中で、
しかも、それらの描写が非常にマニアックなんです。
#そうは言っても、ココに惹かれる人の方が、圧倒的に少数派でしょうけど。
この部分、かなりのページが割かれているため、
吹奏楽以外の部分に興味のない人には、邪魔くさく感じるかもしれません。
でも、それなりに人物像を理解するうえでは大切な描写なので、
『この人はロック好きなのね』『この人は、理系なのね』程度に、
詳細は理解できなくとも、飛ばさずに読み進めていくとよいでしょう。
そうすると、吹奏楽部を舞台にした総勢34人もの登場人物それぞれの、
顔や髪型、風貌までもが、なんとなくイメージできるようになってきます。

『ブラバン』津原泰水 著
定価1,680円(税込) / ISBN 4862380271