はっきりは覚えてないけど、僕がBOOWYを知った(というか、そういうバンドがあると認識した)のは、たぶん浪人時代だと思う。当時、高校の隣にあった予備校に通っていて、その際に、全然知らない現役高校生(つまり、後輩)男子が、布袋寅泰さんのヘアスタイルを真似してて、「何だコイツ」と思った記憶があるので、その時には、何となくBOOWYを知ってたのだろう。
でも、音楽的には、まったく興味がなく。というか、「ロックバンドでしょ?」程度の認識で、曲は聴いたことがなかった。BOOWYがどうこうではなく、単にロックにまったく興味がなかったからだ。イギリスのニューウェーヴとか、そのあたりを聴いていたので、むしろロックバンドのことは、というか、ギターロックを、ちょっとバカにしていたところもある。
どのくらい知らなかったかと言えば、後輩と話している時に、そいつが「BOOWYが好き」と言うので、僕はてっきり、デビッド・ボウイのことだと思い、その後輩に30分以上、デビッド・ボウイのことを話し続けたくらいで(その時に、後輩がBOOWYのことを話していたのだと気づいたのは、その数年後のこと)。
次に覚えているのが、BOOWYだったのか、氷室京介さんのソロだったのかは覚えてないけど、レコード大賞的な表彰式で、「皆さんと、オレの才能のおかげです」といった受賞の挨拶をしていたのが、すごく記憶に残ってる(でも、僕の勘違いかもしれないので、コメントの真偽は追求しないこと)。
そんなBOOWYに、音楽的な関心を持ったのは、大学3~4年の頃だったかな? 深夜番組を見まくっていた時期に、氷室ソロ曲「KISS ME」のPVが、結構カッコいいと思ったのと、曲もなかなかいいなと感じたのがきっかけだった(と思う)。
それで、「ちょっとBOOWYとやらも聴いてみるか」と買ったCDが、『LAST GIGS』だった。そう、もうBOOWYは解散した後だったわけで。聴いてみたら、とてもカッコよかったのだ。そして、こういう音楽があるのかと驚いた。
ひとつは、僕が好きなテクノに通じる、8分刻みのベース。後で知ることになるのだが、あの松井常松さんのダウンピッキング・ベースだ。そして、高橋まことさんのドラムも、僕がロック・バンドに対して抱いていたビートと違って、とてもタイトで、なおかつラウドさもあって、「へぇ」と思ったわけだ。あと、高橋まことさんは、パールのエレカッション(エレドラ)も使っていたので、そういうサウンドもロックで使われるんだといった驚きもあった。
そしてもうひとつ、ギター、ベース、ドラムの3人だけで、ここまで完成度の高いアンサンブルが鳴らせるということにもビックリした。それまで僕は、シーケンサーを多用する音楽であったり、大人数バンドのサウンドばかり聴いていたので、3ピースでこれほどまで骨のある音楽が奏でられるということに衝撃を受けたのだ。
…もちろん、当時のロック・ファンからすれば、僕が衝撃を受けたことは、「お前、何言ってんの?」というくらいのことだと思うけど、ロックを小バカにしていた僕にしては、知らないことだらけだったのだ。
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そんな『LAST GIGS』は、テープに録って相当聴きまくった。しかし、BOOWYは既に解散していて、新しいBOOWYの曲が生まれてくることはない。だからか、旧譜にはあまり関心が向かず、とにかく『LAST GIGS』ばかりを聴いていた。なので僕は、BOOWYファンというわけではなう、『LAST GIGS』ファンと言った方が正しいだろう。実際に、『LAST GIGS』は、DVDも買ったし、完全版も買っている。僕がインディーズバンドの航空電子に参加していた時、ロック的側面のお手本というと、これを見るのが唯一の方法だったくらいだ(その後、いろんなギターロックバンドを好きになっていくのだが)。後に、高橋まことさんに2度ほど取材する機会があったけど、サインをもらえばよかったと悔やんでも、今となっては後の祭。
そして今年、氷室京介さんが『LAST GIGS』を行った。解散してからBOOWYの音楽を聴き始めたように、今回も、チケットがソールドアウトしてから、「一度、生で見てみなかったなぁ」と思うようになった。が、ヤフオクで高額のチケットを買うほどでない。でも、行きたい。…というか、これほどのロック・スターのライブを一度も体験していないというのは、音楽に関わる仕事をしている者としていかがなものかとも思ったし、その最後のライブを体験しなくていいのかという後悔の念が、急速に膨らんでいったのだった。
そう感じている時に、急遽「リアルライブビューイング席」なるエリアが東京ドーム内に設定されたことを、追加販売日の当日に知った。つまり、ステージは一切見えない、通常は観客を入れないステージ裏の席を解放するということだった。もしかしたら、このことを発売2日前とかに知ったとしたら、購入までに至らなかったかもしれないが、このニュースを知って、数時間後に発売されるということで、テンションが上がって、即、購入を決意。発売開始の18時と同時にiPhoneで申し込み、何とか22日(3days公演の2日目)のチケットを手に出来た。
そして、その日がやって来た。
*****
東京ドームには、開演30分前に余裕で到着したのだが、電子チケットに書かれていた入場ゲートが、当日には急遽変更されていたことを知らず(しかも、耳のせいもあって、係員のメガホンでの誘導も、よく聴こえてなかった)、ゲートをたらい回しにされて、結局、席に着いたのは開演時間ギリギリ。左耳にイヤープロテクターをはめて、いざ、待機。
そして、ライブが始まった。
ステージ裏のエリアなので、一応、こちら向きにPAスピーカーが用意されていたものの、客席側からの音の跳ね返りも強かったりして、やはり音はあまり良くななかった。とは言え、「ステージでも、こんな感じで聴こえるんだろうな」という疑似体験は、マニア目線では、なかなか楽しいものだった(もちろん、実際のステージには、“コロガシ”と呼ばれるプレイヤー用のモニタースピーカーや、各人イヤモニをしているわけだけど)。
あと、リアルライブビューイング席ように設置されたサービスモニター(映像スクリーン)を見るには、自分の席からは右方向をむく必要があったのだけど、PAスピーカーの音を、聴こえる右耳で聴くには左方向をむかねばならず、それがちょっと困ったものの、結局は音優先で、サービス映像はチラ見程度にとどめることにした。
というのも、実は1曲目、BOOWYの『LAST GIGS』で何度も聴いていた「DREAMIN'」だったにも関わらず、左耳が聴こえないために(加えて、後で分かるのだが、左耳にイヤープロテクターをしていたことで)曲が始まってしばらくの間、何の曲だか分からなかっただけでなく、ビートを掴むこと自体が難しかったからだ。そんな感じで、その後もなかなか曲に乗れず、MCもあまりよく聴き取れなかった。
だが、1時間ほど経過して、このエリアはそれほど大音響ではないことに気付いて、左耳にはめていたイヤープロテクターを外したところ、スネアがかなり聴き取りやすくなり、歌や演奏もかなりクリアに聴こえるようになって、ようやくライブを楽しめるようになった。左耳はほとんど聴こえていないとはいえ、やはり両耳で聴くと、これだけよく聴こえるんだという、ちょっとした驚きと再確認にもなった(反面、最初からイヤープロテクター外しておけばよかったとも、ちょっとだけ後悔した)。
そんなこんなもありつつ、僕にとって最初で最後のチャンスで、氷室の歌を生で聴けて、本当によかった。そして、ステージが一切見えなくとも、ステージとほぼ同じくらいの高さから、メンバーに近い目線で観客を一望でき、大歓声を浴びられるという“バーチャル・ドームライブ体験”というも、おそらくこれが最初で最後かもしれない、貴重な機会。アンコール時、このエリアで観た観客のウェーブと大歓声には、たぶん一生忘れないだろうというほどの鳥肌モノ。
この日、「NO!NEW YORK」は演奏されなかったけど、「ONLY YOU」が生で聴けた時、やっぱり来てよかったと心底感じた一瞬だった。
氷室さんも、耳の不調によるステージからの卒業だったと聞く。今まで、本当におつかれさまでした。