お恥ずかしい話であるが、これまで臼井吉見は女性だと思っていた。その書き出しが可笑しくて、古本屋で立ち読みをして済ませるには惜しいような気がしたので、彼女の?「事故のてんまつ」を買い求めた。
文体が粘っこい割りには、話の展開が意外なほど理性的な点に奇妙さを感じた。見たまま感じたままの風を装いながら、川端康成の風貌やら性格やらをかなりこっぴどくこき下ろしている。女性にしては沈着冷静すぎるので、ひょっとしたらと思って経歴を調べてみると、臼井吉見さんは正真正銘の男性であったという次第。
あとがきで吉見さん、「事故のてんまつ」という小説は(この作品って小説なんだって?)、川端をこきおろすのが目的ではないとかなんとかそれらしい言い訳はしているのだが・・・。あくまで小説の中の語り手である女性の川端評はかなり辛らつで、読み通してはみたものの、小心者のわたしなど、つい目を覆いたくなるような表現すらあちこちにあった。小市民からすると、教科書にも大きく載った「美しい日本語の書き手である文豪川端康成大先生」のことを、ここまでこきおろしちゃっていいの?という感慨である。
「痩せて小柄、貧相で、小さな顔のくせに、とんびみたいな鋭い目をぎろりと光らせて、わたしの方をじーっと見た。思わずゾッとした。とんびの目は、わたしを見据えたままで、ひとことも口をきかなかった。気味が悪かった。こんな妙なひとには、これまであったことも見たこともなかった。みみずくのように立てた耳の格好も異様だった。」初対面で「チンチクリンな老紳士・・・、顔色が黒ずんで、白髪には串を入れたことがないようで、ぼうぼうにみだれている。」という第一印象のあと、このような描写が続くのだから半端じゃない。
師匠筋に当たる川端をここまでコケにされた三島由紀夫や親族が怒るのも無理はない。息がかかりそうな至近距離からノーベル賞作家を描写するこの作品を、芸術家の孤独がなんたらといった硬い方向からではなく、週刊誌的好奇心で一気に読み通した。
文体が粘っこい割りには、話の展開が意外なほど理性的な点に奇妙さを感じた。見たまま感じたままの風を装いながら、川端康成の風貌やら性格やらをかなりこっぴどくこき下ろしている。女性にしては沈着冷静すぎるので、ひょっとしたらと思って経歴を調べてみると、臼井吉見さんは正真正銘の男性であったという次第。
あとがきで吉見さん、「事故のてんまつ」という小説は(この作品って小説なんだって?)、川端をこきおろすのが目的ではないとかなんとかそれらしい言い訳はしているのだが・・・。あくまで小説の中の語り手である女性の川端評はかなり辛らつで、読み通してはみたものの、小心者のわたしなど、つい目を覆いたくなるような表現すらあちこちにあった。小市民からすると、教科書にも大きく載った「美しい日本語の書き手である文豪川端康成大先生」のことを、ここまでこきおろしちゃっていいの?という感慨である。
「痩せて小柄、貧相で、小さな顔のくせに、とんびみたいな鋭い目をぎろりと光らせて、わたしの方をじーっと見た。思わずゾッとした。とんびの目は、わたしを見据えたままで、ひとことも口をきかなかった。気味が悪かった。こんな妙なひとには、これまであったことも見たこともなかった。みみずくのように立てた耳の格好も異様だった。」初対面で「チンチクリンな老紳士・・・、顔色が黒ずんで、白髪には串を入れたことがないようで、ぼうぼうにみだれている。」という第一印象のあと、このような描写が続くのだから半端じゃない。
師匠筋に当たる川端をここまでコケにされた三島由紀夫や親族が怒るのも無理はない。息がかかりそうな至近距離からノーベル賞作家を描写するこの作品を、芸術家の孤独がなんたらといった硬い方向からではなく、週刊誌的好奇心で一気に読み通した。