小説家といえば、確か一昨年に脳梗塞で倒れたはずの野坂昭如が、昨年の12月に出した「死刑長寿」の「あとがき」を自らが書いているという情報を得た。躊躇はしたが、怖いもの見たさという好奇心が後押しするのでつい買ってしまった。以下、かれの「あとがき」のすべて、である。
「ぼくは、もの心ついて以降、嘘ばかりついてきた。
子供の頃は無邪気な嘘。
14歳で焼き出され、生きるための嘘が身についた。
糊口を過ごすようになって、嘘と現実の別が無くなった。
ここに収められた作品群は、その一部。
わが嘘に終わりはない。」
敬愛する野坂は、骨の髄まで小説家という名の売文業者なのである。