
会津若松駅13時5分発小出行きワンマンカーに乗車する。
キハE120とキハ110たらこ色の2両編成で、
車両の美しいキハE120に乗車することにした。
進行方向右側は4人掛けのクロスシート、左側は2人掛けのクロスシートがあり
私たち夫婦と知らないおばさんが4人掛けに座り、
2人掛けには上品そうなおばさんが独りで乗車されている。
ツアーコンダクターもいるので、何人かのツアー客の一人と見られる。
皆、只見線のパンフレットを持っているが景色を楽しんでいるようには、見えない。
むしろ退屈そうにして黙々とパンフレットを眺めている。
妻がその姿を見ていて「全然楽しそうじゃない」と話す。
私たちのように時刻表とガイドブックを何度も見開きながら細かく計画を立てる旅は
シミュレーション段階ですでに疑似旅行をしており、
それぞれの場所での見どころもチェックしているから目が離せない。
一方ツアー客の場合、旅行会社の計画したコースをなぞるように参加されておられ
このコースを選んだ目的までは意識もせずに流されるように参加されるからだろうか。
列車は只見川に沿って走行し、大きな橋梁を通るたびに車内アナウンスが流れ、
速度を落として通過してくれる。撮影ポイントなのだろうが
上からの景色は、深緑色の大きな川が流れているだけ。
やはり車外から列車や鉄橋を入れて撮影しないことにはその感動は表現しづらい。
それでもツアー客らはいちいち席を立って撮影している。
一方、1分でも早く移動したい地元民には迷惑である。
それでも2011年の新潟・福島豪雨による甚大な被害を受けた只見線は
2022年10月小出駅〜会津若松駅間の全線で運転を再開している。
総延長距離は135・2km、全駅36駅。全線単線で非電化のローカル線。
小出駅から会津若松駅まで、全線通して運行する列車はわずか3本しかなく
全線で乗り通すと、約4時間45分もかかる。

赤字路線で有名な芸備線だったら全線開通は見込まれない。
地元住民の悲願とともに観光にも力を入れているのが分かる。
私たち夫婦も10年ほど前に不通区間の代替バスを利用したことがある。
そのことを考えると地元民に多少のしわ寄せがくるのは仕方のないことかもしれない。
「鉄橋の度に徐行運転は困りますよね」と前に乗っておられたおばさんに話しかけた。
そして私たちは次の早戸駅で降りると伝えると、
「早戸温泉にお泊りですか?」と訊かれて「はい。自炊宿です」と伝えると、
「だからさっき、納豆やネギをお持ちだったんですね。」と得心した笑顔で答えられた。
ずっと不思議に思っておられたのかと思うと、なんだかこちらが笑いそうになった。

そろそろ早戸駅に着く時間なのでワンマンカーの運転席近くに行くと、
運転手が振り返り「降りるの?」と声をかけられ、「はい」と答えると
ドアを開けて下さり、そこには駅名板しかない殺風景な広場だった。
扉は自動で開かないこともあって私は、とても駅で停車しているとは思えず、
信号所か何かで運転停車しているだけにしか思えなかったのだ。

駅に降りると、駅名表示板のすぐ横に宿の送迎車が横付けされていた。