2019年2月10日(日)☀ 千畳敷駅より木曽駒ヶ岳往復
宝剣岳分岐からの続きです
乗越浄土についてからの私は
虚脱感に包まれ 意欲も何もかも
削ぎ取られた状態でした
そして…
目の前の氷の世界の美しさに
暫く呆然としていました
県警の救助隊の詰所となっている小屋の前で
休憩をとっていると 少し気持ちが落ち着き
眺める宝剣岳の美しさを実感し始めます
ですが…その宝剣岳の北斜面は美しくも冷たく
拒絶するかのように冷ややかな輝きを見せていました
今日は無理…
駒ヶ岳頂上も無理…
そんな声が自分の中でしてきます
しかし…なぜか体が動いてしまいます
せめて途中の中岳だけでも…と
なぜ体が動いてしまうのかはわかりませんが
もういい 帰ろう…と思う気持ちと
この 滅多に見る事の出来ない氷の稜線を
歩かずしてどうする…という思いが
複雑に交差し心を揺さぶります
行くか?
チチの一言で決まります
うん…
そしてザックを背負い 足は中岳へと向かっています
県警救助隊の詰所
ゆっくりでいいから 先に行きなさい…
直ぐに追いつくから
チチの言葉を背中に聞いて 歩き始めます
少し進んでから 振り返ると
伊那前岳からの延長上に
ぽつんと一軒家のような詰所小屋の前で まだ…
救助隊の人と話をしているチチの姿が見えます
昔…培ってきた血が騒ぐのでしょうか…
何を話しているのかは大体想像はつきますが
チチを待たずにそのままゆっくりと
雪に埋もれた宝剣山荘の前を過ぎていきます
宝剣岳
振り返ってみる宝剣岳は
方向によっては姿を変えますが やはりカッコいい…
だけど…
西面に人の顔を見るような岸壁
何故か今日は空虚の表情を見せているような気がします…
昨日…滑落事故があり 1キロも下に落ち…
今日…へりで救助に行く予定になっているという…
本当に 今日のお山は
美しくも厳しい表情をしています
中岳への向かうチチ
中岳と天狗荘
いつの間にかチチに追いつかれ
再びチチの背を見ながら歩きます
赤い屋根の天狗荘は白く同化し
その先に見える中岳が近くに感じます
これなら行けそう…
失った気力がまだ残っていたようです
稜線の美しさにやはり欲は出てくるものでしょう…
何時しか 歩調もしっかりと
前を向いて歩いていました
中岳へ
南アルプスと富士山
度々足を止めて振り返ると
蒼い南アルプスが広がり その向こうには
富士山が覗くようにその姿を見せています
雪は然程深くは付いていませんが
やはり上の方はアイスバーンになっています
ゆっくりと 確実に歩を進め
諦めかけていた頂上を目指していきます
中岳への登り
頂上に近づくにつれ凍った斜面が牙をむき
そこにトラバース地点があります
ここが救助隊の言っていた所
上付近は凍っているので トラバースはなるべくせず
南面を巻いて歩くように…と
その言葉が耳に残っており 緊張しながら歩きます
しかし 中岳への道は 思いの外短く感じ
標識を見た時には 呆気にとられた私が居ました
中岳 2925m
この時期の中岳は 夏の時とは違う装いで
岩肌が硬い氷を纏い 拒むような冷たさを感じます
どうする?
チチがじっと私を見つめます
チチの目線が何を言わんとするのか…わかります
自然 木曽駒ヶ岳山頂の方に目を移し
静かに見つめる私…
…行く
この時 稜線が優しく誘う様に感じたのです
誘われるように足が出た…
中岳から望む御嶽山
凍てついた岩の向こうで御嶽山が
優麗な姿を見せてほほ笑む…
風は強く吹き付けているのに
この時の風の記憶はなく
素晴らしき眺望だけが今もありありと蘇ります
中岳からは 一旦 急坂を下り
登り返す事になります
白き駒ヶ岳頂上山荘
ここから一気に登坂
山頂直下の急登
風は自由気ままに吹き荒れて
雲は流れに身を任せ
時折舞う雪煙を纏い
ただ只管雪面と睨めっこ…
山頂への最後の急登を登り終えて振り返ると…
宝剣岳と空木岳の凛々しくも雄大な姿が飛び込む…
圧巻でした…
漏れた言葉が風に攫われ
眺望に心が奪われた時でした
山頂に近づくとまずは東側にある
伊那駒ヶ岳神社が先に出迎えてくれます
その前で風を避ける人々の姿が目に留まります
伊那駒ヶ岳神社の屋根
甲斐駒ヶ岳 仙丈岳 北岳
空には薄っすらと薄雲が広がりだし
南アルプスが蒼然とした姿の展望が広がる…
蒼ざめた世界の美しさに ふたたび心を奪われ…
呆然と立ち尽くしてしまうほど
あぁ…来てよかった
あぁ…諦めなくてよかった
厳しくも美しい淡粧濃抹の眺望に
風に揺さぶられながらも何度も足が止まります
見かねたチチが私を呼び
風を避ける場所を見つけて休む様に声を掛けます
それでも 徘徊して回る私…
北アルプス
乗鞍岳 穂高岳
360℃の展望は 北から南の主峰を見せてくれます
暫く眺めていても 然程寒さを感じないのは
クライマーズ・ハイのようになっていたのでしょうか…
木曽駒ヶ岳神社
山頂の西側いわゆる木曽側にある木曽駒ヶ岳神社
エビのしっぽをつけて 寒々しさが漂うものの
凛とした姿で 沈黙を守るように建っています
ただ…
山は眠り静かに無の世界を作り上げています…が
静寂さをかき乱す様に吹く風が
小さな人間なんぞ吹き飛ばしてしまうぞ~と
言わんばかりの勢いを見せています
山頂 2956.1m
少し休もう…
再度誘うチチの声に 記念写真を撮って
風を避ける場所を見つけて 体を休める事にしました
暫し冬山を堪能して後は下るだけ…でしたが
やはり山は 下山時が一番怖いのかもしれません…
つづく
宝剣岳分岐からの続きです
乗越浄土についてからの私は
虚脱感に包まれ 意欲も何もかも
削ぎ取られた状態でした
そして…
目の前の氷の世界の美しさに
暫く呆然としていました
県警の救助隊の詰所となっている小屋の前で
休憩をとっていると 少し気持ちが落ち着き
眺める宝剣岳の美しさを実感し始めます
ですが…その宝剣岳の北斜面は美しくも冷たく
拒絶するかのように冷ややかな輝きを見せていました
今日は無理…
駒ヶ岳頂上も無理…
そんな声が自分の中でしてきます
しかし…なぜか体が動いてしまいます
せめて途中の中岳だけでも…と
なぜ体が動いてしまうのかはわかりませんが
もういい 帰ろう…と思う気持ちと
この 滅多に見る事の出来ない氷の稜線を
歩かずしてどうする…という思いが
複雑に交差し心を揺さぶります
行くか?
チチの一言で決まります
うん…
そしてザックを背負い 足は中岳へと向かっています
県警救助隊の詰所
ゆっくりでいいから 先に行きなさい…
直ぐに追いつくから
チチの言葉を背中に聞いて 歩き始めます
少し進んでから 振り返ると
伊那前岳からの延長上に
ぽつんと一軒家のような詰所小屋の前で まだ…
救助隊の人と話をしているチチの姿が見えます
昔…培ってきた血が騒ぐのでしょうか…
何を話しているのかは大体想像はつきますが
チチを待たずにそのままゆっくりと
雪に埋もれた宝剣山荘の前を過ぎていきます
宝剣岳
振り返ってみる宝剣岳は
方向によっては姿を変えますが やはりカッコいい…
だけど…
西面に人の顔を見るような岸壁
何故か今日は空虚の表情を見せているような気がします…
昨日…滑落事故があり 1キロも下に落ち…
今日…へりで救助に行く予定になっているという…
本当に 今日のお山は
美しくも厳しい表情をしています
中岳への向かうチチ
中岳と天狗荘
いつの間にかチチに追いつかれ
再びチチの背を見ながら歩きます
赤い屋根の天狗荘は白く同化し
その先に見える中岳が近くに感じます
これなら行けそう…
失った気力がまだ残っていたようです
稜線の美しさにやはり欲は出てくるものでしょう…
何時しか 歩調もしっかりと
前を向いて歩いていました
中岳へ
南アルプスと富士山
度々足を止めて振り返ると
蒼い南アルプスが広がり その向こうには
富士山が覗くようにその姿を見せています
雪は然程深くは付いていませんが
やはり上の方はアイスバーンになっています
ゆっくりと 確実に歩を進め
諦めかけていた頂上を目指していきます
中岳への登り
頂上に近づくにつれ凍った斜面が牙をむき
そこにトラバース地点があります
ここが救助隊の言っていた所
上付近は凍っているので トラバースはなるべくせず
南面を巻いて歩くように…と
その言葉が耳に残っており 緊張しながら歩きます
しかし 中岳への道は 思いの外短く感じ
標識を見た時には 呆気にとられた私が居ました
中岳 2925m
この時期の中岳は 夏の時とは違う装いで
岩肌が硬い氷を纏い 拒むような冷たさを感じます
どうする?
チチがじっと私を見つめます
チチの目線が何を言わんとするのか…わかります
自然 木曽駒ヶ岳山頂の方に目を移し
静かに見つめる私…
…行く
この時 稜線が優しく誘う様に感じたのです
誘われるように足が出た…
中岳から望む御嶽山
凍てついた岩の向こうで御嶽山が
優麗な姿を見せてほほ笑む…
風は強く吹き付けているのに
この時の風の記憶はなく
素晴らしき眺望だけが今もありありと蘇ります
中岳からは 一旦 急坂を下り
登り返す事になります
白き駒ヶ岳頂上山荘
ここから一気に登坂
山頂直下の急登
風は自由気ままに吹き荒れて
雲は流れに身を任せ
時折舞う雪煙を纏い
ただ只管雪面と睨めっこ…
山頂への最後の急登を登り終えて振り返ると…
宝剣岳と空木岳の凛々しくも雄大な姿が飛び込む…
圧巻でした…
漏れた言葉が風に攫われ
眺望に心が奪われた時でした
山頂に近づくとまずは東側にある
伊那駒ヶ岳神社が先に出迎えてくれます
その前で風を避ける人々の姿が目に留まります
伊那駒ヶ岳神社の屋根
甲斐駒ヶ岳 仙丈岳 北岳
空には薄っすらと薄雲が広がりだし
南アルプスが蒼然とした姿の展望が広がる…
蒼ざめた世界の美しさに ふたたび心を奪われ…
呆然と立ち尽くしてしまうほど
あぁ…来てよかった
あぁ…諦めなくてよかった
厳しくも美しい淡粧濃抹の眺望に
風に揺さぶられながらも何度も足が止まります
見かねたチチが私を呼び
風を避ける場所を見つけて休む様に声を掛けます
それでも 徘徊して回る私…
北アルプス
乗鞍岳 穂高岳
360℃の展望は 北から南の主峰を見せてくれます
暫く眺めていても 然程寒さを感じないのは
クライマーズ・ハイのようになっていたのでしょうか…
木曽駒ヶ岳神社
山頂の西側いわゆる木曽側にある木曽駒ヶ岳神社
エビのしっぽをつけて 寒々しさが漂うものの
凛とした姿で 沈黙を守るように建っています
ただ…
山は眠り静かに無の世界を作り上げています…が
静寂さをかき乱す様に吹く風が
小さな人間なんぞ吹き飛ばしてしまうぞ~と
言わんばかりの勢いを見せています
山頂 2956.1m
少し休もう…
再度誘うチチの声に 記念写真を撮って
風を避ける場所を見つけて 体を休める事にしました
暫し冬山を堪能して後は下るだけ…でしたが
やはり山は 下山時が一番怖いのかもしれません…
つづく
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