山に癒されて…♪

ご訪問有難うございます 
自己世界の超ロ~ング日記です
気の長~い方 辛抱強~い方
笑って読んで頂けると嬉しいです

厳冬期の木曽駒ケ岳

2019年02月12日 | 山登り 中央アルプス
2019年2月10日(日)☀ 千畳敷駅より木曽駒ヶ岳往復


厳冬期のアルプスの稜線歩きをしてみたい…
そんな思いをチチに伝えて
漸く今日という日が実現しました

しかし 今回は何故か…
言い知れぬ不安がどうしても拭いきれないものがあり
それがなんであるかなど この時は分かりません

ただ…何かが起こったわけでも 
何かが起きると決まっているわけでもないのに
不思議なほど 臆病になる私が居ました



チチがいる…


そんな思いが支えとなって 
駒ケ根高原の菅の台バスターミナルにいます




しかしチチには 考える所があったようです 
バスターミナルから見える宝剣岳の姿を見つめる姿に
出発前夜 夜遅く仕事から帰ってきたチチが
アイゼンの刃を丁寧に研いでいた姿が思い返されます




ここからの記録は 自身の為に いつも以上に 
詳細に綴っていきたいと思います…



…本当は迷ったのですが…
あった事… 感じた事… 
そのまま残しておきたいと思います

不適切であったり… 
不快な感じを受ける部分もあるかと思いますが 
読み流していただければと思います






菅の台バスセンター大型駐車場

切符売り場



その日は 凛とした空気が漂う
冬ならでは 澄んだ朝でした

静かな時が流れ人の動きはあまり見られません
この時期の菅の台は 夏の時と違って
ゆっくりと時間が流れる感じでした…が

やはり 出足は遅いものの
三連休ともあって 登山客はどんどん集まってきて 
バス運行時間になると長い列ができていました

そして 
お天気にも恵まれ 次第に活気を帯び
人々の顔には笑顔にあふれていました

この時…その笑顔が消える程の緊張が襲うなど 
誰が予想していた事でしょう…



今日のお山では 私が確認した限りでも
死亡事故3件 滑落事故3件
小さな滑落事故を数えると5件増し…になるほど…

お山は優しい姿のままではありませんでした

今でもホバリングするヘリコプターの音が
耳に残って消えません…





 バスの停留所



この日はどうした事か
切符購入時でもトラブルが起こり 
最前列で並んでいたにも関わらず
結局最初の臨時便のバスには乗れませんでした

並んで待った人たちを見送り 次の定期便を待つことに…

しかし、その後に来た定時便の始発も満員で見送る事になり
結局 次の45分発の定期便に 乗車する事になりました

今思えば このずれたタイミングで 
直接の災難に巻き込まれる事は
無かったのかもしれません…

ただ この時は 出発が遅れたことに
やや不機嫌になっていた私がおりましたが…



 宝剣岳千畳敷カール

宝剣岳と乗越浄土とデブリの跡




ロープウェイ山頂駅の千畳敷につくと
澄み切った青空と 白く雪化粧した山々が迎えてくれます

一気に不安が消える…というものではありませんでしたが
気持ちが高揚してくるのがわかります

それとは裏腹に 今回は救助隊員の姿が多く
何度も何度も 装備のチェックと 
上部の凍結状況について説明をしています

しかし 準備をする人の様子では 今から向かう目の前の景色に
心奪われ 気分の高揚を隠せない様子で
早々に準備をして出発していきます





サギタルの頭


そんな人々の様子を窺うように 
山々は 雪を纏った白く煌々たる姿を聳え立たせ
無言の圧力を見せつけているよう…

チチが隊員と話をしている間
悠々と立つサギタルの頭に目を奪われて
呆然と見つめていた私


その背後から…

昨日 宝剣岳で滑落事故があったらしい…


どうも雪の状態が良くないらしく
この連休で事故が多発しているという…
その為 救助隊はピリピリしているようです

そう言えば なぜか視線を感じると思ったら
登る人の装備もチェックしていたのでしょうか

私の装備は…?
穴が開くほど見ていく隊員がいたのが気になります



 冬季専用の登山口
 千畳敷カール

乗越手前での長蛇の行列




最初の臨時便で向かったと思われる人たちの姿が見えます


どうも 千畳敷カールの上部の核心部で 
かなり手こずっているのでしょう
渋滞しています

それを見て チチがぽつり

やはりな…

その意味が後になってわかる事に…


そして列は下まで伸びていきます
その行列の後を追う様にカールへと向かうなか
言い知れぬ不安が 再び 付きまといだします…



 行列の後に続いて…



最初はモフモフの新雪の中を少し下って
千畳敷カールに向かっていきます

そして登り坂になり本格的に登り始めた頃
新雪のすぐ下がカッチカチっている事に気づきます
ピッケルを刺すと 堅い感触が伝わってきます

浄土乗越迄は急な登りが続きます 
次第に体が火照って汗を掻く…と思いきや
厳しいほどに冷たい突風が容赦なく体当たりしてくるため
暑いと感じる事は無かった様に思います


それよりも 突然体当たりする風との戦いに
緊張した事だけが残っており
違う意味で汗を掻いた記憶が蘇ります



突風と共に 雪煙が舞う

来た!

見えないはずの風の動きがわかる…

ピッケルを刺し
姿勢を低く 耐風姿勢をとる

風はせせら笑うかのように通り過ぎる




そして 通り過ぎたつかの間の静寂時に歩を進めます…


だが…息が上がる…

雪面が近くなり 
重力に引っ張られる体が重くなる…



斜度が 更にきつくなって来たのです…


歩くペースがダウンしてきます
移動して 後ろの人に道を譲ります
すると 通り越す際に 声をかけてきます


雪の下は凍っていて硬いね…


顔を見合わせて お互い苦笑い…


上の方は表面がカッチカチかも…
気を付けて


お互いに そんな会話をして通り過ぎていきます






 斜面は急になる


斜度がきつくなるにつれ 
皆のスピードもどんどん落ちてきます
上部の核心部ではどうしても
人の固まりが濃くなっていくよう


足が止まる人もいるようです

ただ 休憩とゆっくり歩くのは違います


休むんだったら横に避けてくれ!
上の方から怒鳴るような声がします


みんなの必死な様子が伝わってきます…
正念場となっているのでしょう…



 



高度が上がるにつれ 
突風は 容赦なく襲ってきます
油断すると体を持って行かれそうな勢いです

それでも 踏ん張って 耐えて
緩んだすきに 必死に斜面とにらめっこして登る…
それを繰り返しながら 乗越浄土まで頑張るだけ…

しかし…斜度は更にきつくなる一方…
そして…雪面は堅く輝きだし氷の鏡と化しています

美しさとは裏腹に 緊張が全身を包み始めます

ピッケルさらなくなり
ピックを打ち込んでの登り態勢に変えます


そんな時 チチの声がしてきます


もっとアイゼンを全面につけて…

どうも アイゼンワークがしっかりと出来ていない人に対して
声をかけているようでした


ここから先は危ない
下ったほうがいい…


???


見ると その人は普通のストックだけで 
ピッケルを持っていません
この先はアイスバーンで ピッケルなしでは怖い…


他にも 6本アイゼンであったり
ストックもなくだけで登って来られている人など
考えられない装備で登っている方を見かけます

怖くはないのだでしょうか…


チチの説明を聞いたその男性が 
そのまま下っていきます



こうして チチが
何人かの登山者に声をかけているのを見かける事に…




次第に雪面は氷面と化し 
斜度もきつく 氷の滑り台となっていくよう

この先はもっと厳しくなる…踏ん張り時だと感じて 
ふと見上げた時でした…



上の人の固まりが崩れた様に見えた… 

わぁ!ともあっともつかぬ声がして

一人が横によじれたと思った瞬間
2人の男性が絡む様に体勢を崩し落ちてくる…
 

そのままだと自分へ直撃!


そう思いながらも 
まだ映像はスローに見えました


どの方向に落ちて来るのか…
そんなこと考えながら 動きを見つめます…

一瞬 覚悟を決めて 
ピッケルを強く握り深く差し込む… 
…と言っても 
刺さるものではなく 堅い氷の抵抗を感じるだけ…


後続者にあたったかのように見えた瞬間
引っくり返った亀のようになり
頭を持ち上げた格好のまま 少し軌道がずれ
そのまま加速を付けてきます

そして…
凄い勢いで左横を滑っていった…



ラク~ ラ~ク!

この時 漸くチチの叫ぶ声が入ってきました
一瞬 時間が停まり 
叫ぶ父の声もどこかに飛んでいたのでしょう


チチの大声が響くなか
下に居る人の動きも止まっていました


滑落した人は 人を巻き込むことなく 
急斜面を150mほど滑っていき 
下の新雪のあたりで 自然停止します

一人はすぐに起きだし 
呆然とした様子で座り込み
もう一人は 更に数メートル下まで滑って止まり 
すぐには起き上がりはしないが
動いているのを上から確認します


岩も出ていない きれいな雪面だったので
助かったのだと思いました…


あの状態であれば 救助に行かずとも
自力で何とかできそうな感じです


よかった…


今度は自身の方へと意識を向けて 
ピックを打ち込み アイゼンを効かせて
登る事に集中します

しかし なぜか体がえます…

ふと気が付くと 
チチがすぐ後ろに立っています


足を開いて 体の柔らかいのを利用しろ!
アイゼンの先で立つのではなく
全体を付けて 足で立て!
疲れて登れなくなるぞ!
ピックを思いっきり差し込んで
ゆっくりと 確実に登れ!


もう少しだ 頑張れ!


もうすでに 腕の力を使い果たしかけていた時でした
ピッケルと持つ腕がだるくて仕方がなかったのを
チチは見抜いていたよう…

核心部の急斜面の所では
常に付き添ってしっかりとサポートしてくます

崩れかけた心にを入れなおし
もう少しだ!と言い聴かせ 三拍子
核心部を越えていきます







乗越浄土手前まで来ると ようやく
二足歩行が出来るようになります
しかし 風は今まで以上に強く体当たりしてきます

本当に 稜線の風は生半可なものではありません
しかし その分…






おぉ… 

青い空と共に 美しくも冷たい
青白磁の世界が迎えてくれた

やっと稜線に出てみる景色は別世界でした



 後続者が登ってくる
 必死に登ってくる

乗越浄土





必死の思いが伝わる感じで登ってくる後続者たち…
辿り着いた安堵の雰囲気が伝わる感じです


乗越浄土に辿り着いたときには 
私も 涙がでそうになりました…



3000m近い標高と突風
マイナス17℃ 
体感温度にしてマイナス20℃以上あろうかという山
そして滑落事故を目撃

以前では考えられないほどの疲労感を感じ
若い頃とは違い 弱くなった自分を自覚します


冷たくも美しき景色を見ながら
風を避けるため小屋の方へと移動します




 宝剣山荘の青い屋根目指して…



トボトボと歩く道は平坦で
天国に辿り着いたような錯覚に陥ります 

そして 不思議と 乗越浄土から小屋までの距離が
夏よりも短く感じるのは私だけでしょうか


取りあえず 休みたい…
風を避けるところを見つけて
ザックを下ろしたかったのです…



宝剣岳



状態を見て宝剣岳へと考えていたものの
もう その気力すら失われていました

それどころか 木曽駒ヶ岳の山頂へすら迷うほど
憔悴した自分を感じていました





美しくも厳しい雪面
厳冬期のアルプスの厳しさ…美しさ…


チチの入れてくれたッとミルクティーを飲みながら
ただ…呆然と雪面を見つめていました






つづく


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
木曽駒 (のんびり夫婦の山遊び)
2019-02-13 20:55:46
nanekobi5963さん、こんばんは!
大勢のアルピニストが入る厳冬期の木曽駒ヶ岳、
大人気のようですが、滑落者を目のあたりにする
とは~高度の高い冬山は魔物が潜んでいますの
で、気を付けなければなりませんね。
しかしながら頂上に立つと素晴らしい眺望が得ら
れますので、それはそれで堪りませんね。
お疲れ様でした。
次のレポも楽しませていただきます。
返信する
のんびり夫婦の山遊び様 (nanekobi5963)
2019-02-14 08:00:15
おはようございます♪

厳冬期のアルプスの魅力は言葉につきません
雪は少なくとも厳冬ならではの美しさが目を奪います

それとは裏腹に危険も潜み
滑落シーンは幾度か見たり体験しているものの
歳でしょうか…
段々それを受け止める力が弱くなっているような気がします
それでも 山に惹かれるのは何故か…不思議ですね

山に対して謙虚に…
リスペクトしながら登らせてもらわなければと…
つくづく感じました

コメントをありがとうございます
返信する
こんにちは (バボ)
2019-02-14 10:38:07
写真と記事を拝見しながら、頭の中で映画のようなワンシーンを想像しつつ読ませてもらいました。
臨場感ありますね~
目の前を滑落者が滑って行くとか…
天国と地獄、紙一重の世界ですね。
九州の山をのんびり歩いていると、そんなリスクは少ないですが、
油断は禁物だなと改めて感じます。
返信する
バボ様 (nanekobi5963)
2019-02-14 14:34:08
こんにちは
本当に不思議ですね

謙虚に登る事を心がければ
山は優しい顔を見せてくれるのに
一旦牙をむくと 人間なんぞ小さなものだと感じます

どんなお山でも油断は禁物だと
つくづく感じますね

お互い 怪我なく山を愉しめるといいですね♪


コメントをありがとうございます
返信する

コメントを投稿