甘酸っぱい日々

面白くても何ともならない世界で 何とかしようとする人達のために

しずるワンマンライブ 『SHIZZLE IN JAPAN FES.2018 〜2日目〜』(18/2/23)

2018-02-23 23:30:00 | 単独ライブ
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『SHIZZLE IN JAPAN FES.2018 〜2日目〜』
18/2/23 19:30~ @ルミネtheよしもと

・漫才①
・記憶ほとんど喪失
・一緒に踊ろう
・コインらんどりー
・漫才②
・踏み切りだけの距離
・ジャズライブ
・卒業式 ~屋上にて~


(ネタタイトルは、終演後にお客さん全員に配られたセットリストより)
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今年も、しずる単独ライブ『SHIZZLE IN JAPAN FES.2018 〜2日目〜』に行ってきました。
村上純が全編作・演出の冬単独。
去年よりもさらに、濃くて深い、生々しい人間ドラマ。
衝撃を受け続けながらも、最後はなぜか「人生って美しい」と思わされてしまうコントの数々。圧巻です。
暴走する偏見、過剰なデフォルメ、悪意ある切り口。
「シンプルに性格が悪い!」と言いたくなる場面もあったけれど(笑)、
それでも、溢れるほどに伝わってくる、村上さんの愛。
どうしようもないくらい、人間を愛しているんだなあって。
そんなこと感じられるライブって、なかなかない。
彼が書くコントの世界の登場人物は、みんななんだか上手くいかなくて、カッコ悪くて、滑稽で。
それでも、必死で生きている。
だから美しい、だから尊い。ありのままの姿が、宝物のようにキラキラしている。
そんなことを感じさせてくれる、コントの数々だった。

私がしずるを初めて知った時は、2008年ごろ。
その頃は、彼らのコントの「型」とか「パターン」とか、そういうものが新鮮で斬新で、それに惹かれたんだと思います。
当時の代表作のコントといえば、フォークダンスとか、再会とか、腹黒い男とか。
でも最近は、コントの型ではなく、人間ドラマそのものを描くようになってきてるなと感じるのです。
それはしずるだけじゃなくて、犬の心とか、ライスとかにも言えることなんだけれど。
そういう、いわゆるAGEAGE世代のコント師達が、「人」そのものを描くようになったなあと。
彼らも年齢を重ねて、色々と感じるところもあって、表現したいものも変わってきているのかもしれないなって。
ライスも数年前から、だいぶ「型」にとらわれず、人のキャラクターをぐっと前に出すようになってきたなと思ってるんですが、
それでも村上純のスピードに比べたら、彼らはまだまだ、現実感がないなと思いました。
ライスって意外と、結構ファンタジックなのかもしれない。あるいは、二次元っぽいというか。
どちらがいいとか悪いとかではなくて、2組を比べると、それぞれの特徴が際立って見えてくるような気がするのでした。

とにかくどのコントも本当に濃かったのですが、中でもコインらんどりーのコントはすごかったなあ。強烈だった。
感情の起伏も派手な展開もない、ただただひたすら二人の会話劇で持って行く。
なんか、文学の世界を見たようでした。村上春樹かな?あるいは坂元裕二かな?褒めすぎ?(笑)
このコントについて、エンディングで池田さんが、
「相方が言うのもなんだけど、こんなコント見たことない。自分でも思うでしょ?こんなもの見たことないって」という感じで言っていて、とてつもなくエモーショナルでした。
ずっと一緒にいて、それでもまだ、こんなに相方に驚かされることがあるなんて。
ずっと芸人やってきて、「こんなコント見たことない」って思わされるのが、相方の作ったコントなんて。本当に面白いコンビだなぁ。

そしてもう一つ、すごいなと思うのが、こんなに挑戦的なコントばかりなのに、この単独をルミネという場所で続けていこうとしているところです。
ルミネという、大きくて、有名で、気軽に行きやすい劇場でやっているところです。
本来、コインらんどりーなんて、どう考えてもこのキャパでやるコントじゃないよ(笑)。
もっと小さい劇場で見てみたい。どこがいいかなあ。下北の小劇場B1とかかなあ(笑)
それでも、ルミネで続けることに意義があると思います。
ライトな人も来ることができる場所で、ここまで濃い内容をやるからこそ、
彼らがコントの文化を、守り、受け継ぎ、底上げを続けていくんだなって、そう思うのです。

そういえば、エンディング。
すべてのコントが終わって、エンドロールが流れて、素の2人が登場した時に、
突然客席から男性が立ち上がり、舞台上の2人に花束を渡しに行く。
ちょっと本当にヤバい人なのかと思ったら、村上さんが「叔父です……」って(笑)。
何と本物の村上さんのおじさんが登場!!
面白がって舞台に上げる池田さん(笑)。
結果、しずると叔父さんの3人が舞台上にいるという意味不明な時間帯があったけれど(笑)、
叔父さんがすごい熱量で「良かったよ良かったよ!!」とか言うので、
なんだか、我々観客のこの感情を代弁して伝えてくれてるような気もして、妙に感傷的になったのでした。
ライブが終わった直後に、演者に客が「よかったよ」って言える機会なんてないので、
それを直接伝えてくれて、それを受けている2人の表情が見れたというのも、貴重な機会ですね。
しかし、ああやって、お客さんが突然舞台上に乱入してくるというのは、私にとっては、どうやったってライスシチサンを思い出してしまうのでした(笑)


最後のコントが高校生男女のコントだったんですが、
一筋縄ではいかない、人間の複雑な感情をありのままに表現、でも最後には笑いに変える。
オチの性格の悪さったらなかった(笑)
でもそれが、まあ綺麗なオチで、とにかく見事。
『甘酸っぱい青春コント』と言われていた彼らが、さらに一癖も二癖もある青春コントをやっている事実に胸がいっぱいだった。
年齢と経験を重ねたからこそ表現できるものがある。
それなのに、村上さんがこのライブのエンディングに選んだ曲には、強烈なフレーズがあった。



『永遠なんてどこにもないんだろ』
『夢の半分は夢で終わるのさ』

Hump Back-星丘公園 Music Video




その通りの歌詞だ、その通りなんだけれど、そんな現実を前にしてでも、
彼らがこれからもずっと、好きなことをできる環境にいられますようにって、
永遠を願わずにはいられない。

彼らだからこそできる、人間の愛しさを映し出したコントを、これからも見続けたいんだ。