
高校二年の夏に別所温泉の北向観音で
のど自慢大会がありました
友達二人と参加しましたが
二人はすぐに落ちてしまい
僕だけ自分で作った曲を譜面に書いて持って行き
微妙に鐘二つ、
「決勝は夜六時からです。」
まだ一時間もある
友達は「俺たち帰るけど
どうする..?}
結局 僕は甘い夢を見て残ることにしました
でもこれが大きな間違いでした

☆****☆
長い時間待たされてやっときた僕の番、
でも歌いだすとすぐに「カーン。」
粗末な記念品を渡されてなおさら
「あの時帰っていればよかった。」と後悔..
ふと芥川龍之介のトロッコを思い出しながら
駅へと薄暗い道を急ぎました
☆****☆
電車に乗ると中はガラガラ
誰一人乗っていない....と思ったら
居たんですね 一人、一番居て欲しくない人が
目つきのよくないオヤジ、
チラチラ僕を見ているよ
「嫌だな...。」
やがて電車が動き出すと
男は何やら取り出しました
注射器だ、腕に注射している
「うわっ、ヤバイ、」寝たふりをしていよう
僕は時々薄目を開けて
男の様子を伺いながら..
とても寝ていられる状況では無い中で
電車に揺られていたのでした
