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バンドへ僕とほぼ同じに入ったドラマー
彼はハーフで父が米兵でした、
でも生まれたときには母国へ帰ってしまい
一度も会ったことは無いと言っていました
ある日、モノクロの写真を持ってきて
「これしかないんで複写をしてくれないか」
「良いですよ。」
写真関係の仕事をしていた僕は
彼のセピア色の父の写真を
複写してプリントして渡すととても喜んでいました
☆****☆
たまに楽屋へつれてくる
可愛い彼の娘、ハーフってすごいなと思っていたら
そんな可愛い娘がいるのにフィリピンの
ダンサーと出来てしまい暮らし始めたのです
そんなことを知らない僕は
バレンタインデーでもらったチョコを
そのダンサーに下心もなくあげると
すぐに彼がやってきて
「お前、ずいぶん安く上げようとしているな。」
と、笑っていました
☆****☆
そんなある夜、不思議なことが起こったのです
僕はいつも3000円くらいしか持っていないのに
この日はなぜか二万円も持っていました
すると彼が彼女のビザの関係で
これから東京へ行かなければならないんだけど
金が無いんで
「二万円貸してくれないか」と
メンバーに頼みまくっていました
でも だれも貸してくれなくて困り果てて
ふと、静かに座っている僕を見たのでした
「うん、まさかお前が持っているわけ 無いよな。」
「・・・・。」
その時、持っているのに「貸してあげますよ...。」と
言ってあげられなかった自分がいました
「バンマスに頼んでみたらどうですか...」
「それしかないか・・・」
今でもあの時、貸してあげたらよかったなと
後悔をしています
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