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陛下ご退院

2011-11-24 22:08:32 | 皇室
天皇陛下には本日ご退院になりました。心よりお祝い申し上げます。

本年は東日本大震災が起きたこともあり、陛下には例年に増して多くのご公務を行われました。来月78歳を迎えられる陛下にとって、相当な重責であったと思われますが、お疲れの様子もお見せにならず、一生懸命果たされたと感じます。

ご不例の陛下にとって、今後も従前通りのご公務をされるのは難しい話です。宮内庁は、さらなる負担軽減策を検討する必要があるでしょう。

特に、「公的行為」とされるご活動については、もっと減らすことができないかと思われます。各種団体の式典等は、陛下がご出席になる意味をゼロベースで考え直すべきではないでしょうか。天皇にとって、憲法上は国事行為、伝統的には祭祀が最も重要なお役目です。そのことを踏まえた本質的な議論が求められます。


TPP~遅すぎた決断~

2011-11-13 23:41:13 | インポート
11日、野田首相はTPP交渉への参加に向けて関係国と協議を開始することを表明した。これは玉虫色の表現とされ、現に鹿野農相や山田前農相らTPP慎重・反対派の民主党議員は「参加とは言っていない」と主張している。

しかし、この「協議」は参加のための手続きであって、参加しない方向に向かうとは考えられない。反対派の農協も事実上の参加表明と解して批判しているが、その解釈自体は正しい。

さて、ホノルルAPECでのTPP首脳会談に日本が招かれなかった上、「大枠で合意」と報じられるなど、日本の決断が遅すぎたのは否めない。

民主党はマニフェストに「日米FTA」を掲げていたにもかかわらず、政権交代後交渉が行われたという報は寡聞にして知らない。昨年の秋頃から菅内閣が「平成の開国」を掲げ、このTPP交渉に前向きな姿勢を見せたが、菅首相の問題は、交渉への参加の是非を争点にしてしまったことだ。TPPの内容はまだ交渉中なのだから、交渉と並行して国内で侃々諤々の議論を行うこともできたはずだ。東日本大震災の発生もあって、当初6月になされるはずの決断が、さらに5ヶ月も遅れたのは残念な話だ。

菅氏には、小泉元首相の郵政民営化の様に抵抗勢力と戦う姿勢をアピールして、支持率を回復しようとする狙いがあったのかもしれないが、それによって「交渉への参加」にすら反対する者を増やし、時間を無駄にしてしまった責任は大きい。

とはいえ、重大な交渉はまだまだこれからであろうし、「もう決まってしまったから参加できない」という反対派のマッチポンプにのせられてはならない。

ネット上の反対派の議論は読む価値のないものが殆どだが、その様な非論理的な主張を鵜呑みにする人が増えていくのは心配だ。賛否いずれの立場にしても、せめて経済学の教科書の「自由貿易は社会的総余剰を最大化する」「関税よりも生産者への補助金の方が厚生の損失は小さい」「比較優位」等の入門レベルの知識くらいは共有されていないと酷く低レベルな議論しか行われない。


TPP

2011-11-10 21:33:59 | インポート
野田首相は本日行われるとされていたTPP交渉への参加表明の記者会見を、明日に延期したという。昨日の民主党の「慎重」を求める提言に配慮してのことだろうが、意志の弱さにも思えた。

最近何かと話題のTPP(Trans-Pacific Partnership、「環太平洋経済連携協定」などと訳される)は、菅前首相が「平成の開国」として前向きな姿勢を表明し、野田首相も肯定的な発言を続けてきた。一方、農業団体等を中心に反対運動が日に日に活発化し、与野党共に賛否が入り乱れる複雑な状況になっている。

しかし、TPP反対派の農協等の各団体は明らかに既得権益を守るためだけに活動しており、決して国益のためではないのは明白だ。

そもそも、経済学を学んだ方なら、関税を撤廃するとモノの値段が下がり、消費者余剰(要するに、消費者の利益)が拡大し、生産者余剰は減少するものの、社会的総余剰を大きくするから好ましいというのは常識であろう。しかし、政治学を学んだ方ならご承知のとおり、例え社会的総余剰が大きくなるとはいえ、一人一人の消費者の利得よりも、生産者の損失は遥かに大きく、政治的に声をあげる人も多くなる。少々モノが安くなるからといって仕事や学校を休んでまで「関税撤廃」デモをする消費者は皆無に近いだろうが、自分の仕事を失うことを恐れて反対運動を行う生産者は必然的に多くなる。選挙に影響を与えるのは明らかに後者であるから、政治家もそちら側の顔を見た政策を行わざるを得なくなるわけだ。

「農業が壊滅する」「医療が壊滅する」というが、日本は自由主義国家である。国民一人一人の選択の自由を、一部の生産者の既得権を守るために、国家が奪ってはならない。消費者がよりよいものを選択できる社会にするのが、自由を守ることにつながる。いくら安くても、質の悪い食品やサービスが入ってきても、市場で淘汰されるであろう。もちろん、情報の非対称性という市場の失敗には対応する必要があるが、市場そのものに政府が介入するのは資本主義国として認められない。

「輸出はそんなに伸びない」という意見もあるが、そうであるかどうかに大きな意味はない。重商主義の誤りはアダム・スミスが指摘して久しい話である。

「デフレが悪化する」ともいわれるが、価格の低下自体は悪ではない。

「米韓FTAも韓国での批准を前に反対が増えている」という論調もあり、mixiニュースなどでも反対派の方が多いという記事があったが根拠は不明である。韓国紙東亜日報によれば、野党民主党(FTA批准反対派!!)が行った世論調査で、賛成は58%、反対は33%であるという。http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=080000&biid=2011103142128 そもそも現在反対している野党民主党は、米韓FTAに署名した盧武鉉政権の与党であった。現在反対しているのも政局的な動きであろうし、あまりTPP交渉の参考にはならない。

以上のような反対論は無視してもいいが、2つほど検討すべき懸念はある。

1つは、TPPがブロック経済にならないかどうかだ。現在交渉中の国々は環太平洋の一部であるし、アジアからはそんなに多くはない。TPPがより広い自由貿易圏の拡大につながるかどうかは不透明な部分が多い。とはいえ、TPPに参加しないことが自由貿易の拡大につながるということはありえないだろう。

もう1つは、一時的に雇用が悪化することだ。海外への移転が増えたり、破綻する業者が出たりすることで一時的に雇用が悪化する可能性がある。これを機に、労働がより流動的な社会になればよいのだが、逆に「雇用を守る」という名目で正社員への既得権が拡大し、雇用がさらに悪化するという危険性も孕んでいる。現に、リーマン・ショック後の派遣村騒動後、「派遣労働を禁止せよ」という本末転倒な議論が大きくなるという不可解なことがあった。私もこの部分では既得権者なのであまり大きな声ではいいたくないが(笑)、戦後の日本は「終身雇用」、「年功序列型賃金」、「企業別労働組合」といったあまりにも正社員を重視しすぎる仕組みがとられてきた。これは、逆に一度その道を外れたり、最初にその道に進めなかったりする人を差別するという意味であり、バブル崩壊後の長期的不況の時代には適合しているとはいいがたい。そのことが社会的に共有されなければ、この懸念が現実になることは考えられる。

以上の2つの問題を十分に考慮しつつ、交渉参加すべきというのが結論である。万が一、米国があからさまに日本にだけ不利益な内容をおしつけてくるようなことになれば、署名しなければいい。交渉参加前からそのような杞憂ばかりを述べても仕方ない。途中で抜けたら、「普天間問題の二の舞になる」という考えがあるが、普天間基地のキャンプ・シュワブへの移転は、国際法上の条約でこそないものの、日米の外務・防衛相が合意したことであり、それを民主党政権が破ろうとしたから起こった問題である。合意前に抜ける話と同列に扱ってはならない。

明日、野田首相は本当に記者会見するのか。もしかしたら、小泉政権の郵政民営化以上に重大な決断になるかもしれないが、覚悟を持って堂々と参加表明してほしい。