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鳩山外交

2009-09-23 01:18:02 | 鳩山内閣
鳩山首相は現在訪米中である。首相は国連気候変動首脳会合や国連総会、それにG20金融サミットに参加する。また、米中韓露豪の各国首脳や潘基文国連事務総長との会談も行う。

今回は、地球温暖化問題とアジア外交について述べたい。

まず、地球温暖化問題について検討したい。民主党のマニフェストは、温室効果ガス削減の2020年までの中期目標を、90年比25%(05年比30%)減としていた。これは鳩山首相就任後も不変である。一方、麻生内閣でのそれは90年比8%(05年比15%)であり、政府の方針が大きく変化したことが分かる。

しかしながら、この目標には不安や疑問がある。財界や労組からは麻生内閣の目標ですら反発が多かった。もちろん、環境分野に関する投資や技術開発が促進されるのは、経済上需給双方の面でプラスである。現在の日本経済の「底打ち」も、エコポイントや環境関連製品の減税・補助金という麻生内閣の経済対策の寄与が大きいと見られる。しかし、仮に目標を絶対に達成させるために生産制限などが行われたりすれば、不況がさらに加速されかねない。97年の京都議定書の際は、既に温室効果ガスを削減してきた日本が90年比6%減という厳しい目標を課され、「乾いたぞうきん」を絞るようだという批判も少なくなかった。国際社会に対して大風呂敷を広げ、賞賛を浴びることだけが目的化しては、全く無意味である。

ただし、鳩山内閣のいう「削減」には排出権取引や炭素クレジットの活用も含まれているという。「友愛」の理念が行き過ぎて日本だけが損をしたり、経済に大きな悪影響を与えたりすることがないよう祈りたい。

次に、アジア外交についてである。鳩山首相は「友愛外交」の理念の下、「東アジア共同体」の創設についても述べている。しかしながら、中国等は人権問題や政治体制の面で、日本等と価値観が大きく異なっている。また、アジア諸国は発展途上国を多く抱えていて、国家間の経済格差が大きい。それに加え、日中韓には歴史認識や領土を巡る問題も存在する。従って、欧州の状況とは政治的・経済的に全く異なるわけである。EUのような「共同体」の創設は、極めて長期的な話であり、現在議論のテーマとすべきなのかどうか疑問だ。

北朝鮮を巡る情勢は、本年大きく動いている。テポドン2号と見られる飛翔体発射や核実験を行うなど、強硬姿勢を当初は見せていた。ところが、その後はやや「融和」の姿勢を見せだした。クリントン元米大統領や韓国の現代グループの会長が訪朝し、それぞれの国の「人質」が解放されたり、北朝鮮から故金大中元大統領の弔問団が派遣されたりした。また金正日総書記は最近、六者協議再開を示唆したともとれる発言をしたという。

では拉致問題はどうなるか。昨年福田内閣の下で先方と合意した「再調査」の動きは、今のところ全く見られない。その一方で、鳩山内閣成立後、北は「柔軟」ともとれる姿勢も見せている。

鳩山内閣は「政治主導」を掲げる政権である。鳩山首相、岡田外相、それに中井拉致問題担当相を中心に、「解決」のための戦略を打ちたててほしい。先方が「融和」の姿勢を見せているからといって、単に制裁を弱めればいいわけではない。ましてや、拉致問題に関する日本の主張を弱めたりすることは絶対に許されない。鳩山内閣も、「拉致問題解決無くして国交正常化なし」の方針を踏襲しているので、その心配はないと信じたい。一方、単なる「見返り」ではなく、拉致問題解決後の大きな「ゴール」として何があるかは、先方にある程度明確にする必要があるだろう。

日中関係については、友好関係の促進は期待したい。ただし、日中間や中国国内にある様々な問題に対して、「主張する外交」を忘れてはならない。とりわけチベットや東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)等の人権問題を無視したりすれば、民主党は人権についてダブルスタンダードなのかと疑わざるを得なくなる。「人間の安全保障」を、中国に対して強く求めるべきなのだ。鳩山首相はチベット亡命政府のダライ・ラマ14世とも会談したことがある。よって、この問題は注視しておきたい。

日韓関係については、鳩山首相と李明博大統領の間で対立が起こる可能性は極めて低い。一方、懸念される問題が2つある。1つは、李大統領が日韓併合100周年にあたる明年に天皇陛下のご訪韓を要請したことだ。戦後天皇のご訪韓は一度もなされておらず、陛下が訪韓されること自体は決して反対ではない。しかしながら、明年のご訪韓となれば、政治的意味合いを持つ危険性が高い。天皇の政治利用を許さないのは、左右問わず「国民の総意」なのは確実だろう。もう1つは、在日外国人参政権について改めて先方から要請があったことだ。小沢幹事長は「目鼻をつける」と述べたそうだが、この問題は「目鼻がつく」状態からは程遠い。まだまだ慎重に議論すべき段階であって、韓国に要請されて決めるような問題であってはならない。これらの問題で、鳩山内閣が誤った判断をせぬことを希望する。

鳩山内閣への期待は大きいが、外交については行きすぎた「友愛」に陥ることの懸念を抱かざるを得ない。国民は注意深く監視し続ける必要がある。

鳩山内閣

2009-09-17 23:27:56 | 鳩山内閣
昨日民主党の鳩山由紀夫代表が第93代(60人目)内閣総理大臣に就任し、鳩山内閣が発足した。

本題からずれるかもしれないが、多くのテレビは衆参両院で首相に指名された段階で「鳩山首相誕生」と報じた。麻生太郎氏は早くも「前首相」と呼称されていた。しかし、これは明らかに間違いだ。憲法を完全に無視している。憲法71条には、総辞職後の内閣について「内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ」と明記されてある。即ち、天皇陛下が憲法6条に基づき鳩山氏を首相に任命されるまでは、総辞職した麻生内閣は存続していたのである。またこれまでの政権と同様、「次期首相」の鳩山氏は陛下の親任を受けるよりも前に「内閣総理大臣」としての記者会見を行ってしまった。http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200909/16kaiken.html政権交代しても、この不可解な手順が行われてしまったのは残念である。ただし、閣僚の場合は認証官任命式(首相が閣僚を任命し、天皇陛下がそれを認証される)の後に記者会見を行うようになっていたので、その点は評価したい。

閑話休題。閣僚の顔ぶれを見た第一印象としては、なかなか手堅い人事であると感じられた。民主党は脱官僚・政治主導を目指して、国家戦略局や行政刷新会議の創設を掲げてきた。どちらかというと野党色が強いベテランの菅直人氏、仙谷由人氏をそれぞれの担当相に充てたことは、官僚と正面から向き合おうという姿勢の表れだろう。ただし彼らの役目は単に官僚と喧嘩するだけではない。国益を見据えた経済成長戦略や外交安保政策を打ち出す中核となれるかどうかは、まだ不透明だ。また年金問題を追及してきた長妻昭氏が、厚生労働相・年金改革担当相になったことからも同様の趣旨が伺える。とはいえ、厚生労働省は幅広い業務を有する官庁だ。不況下における雇用対策や世界中で猛威をふるう新型インフルエンザ対策も、長妻大臣が所掌するわけであり、どこまで手腕をふるえるかは未知数だ。

岡田克也外相と藤井裕久財務相についても、両者とも優秀な政治家だし、期待している。ただ前者については、外交については一定の継続性が求められるなか、理想と現実をどの程度うまく調整できるのかは未知数だ。日米関係において、いずれ難しい決断に迫られるであろう。後者についても、民主党のマニフェストにある無駄な歳出の16.8兆円削減の実現可能性が不明確であるとともに、その担当について菅大臣や仙谷大臣との調整ができているのか微妙なところだ。それに加え、民主党のマニフェストは歳出削減額と新規歳出額が同額であるにもかかわらず、増税も行わぬとあっては、財政再建をいかに行うか全く分からない。その点の方針も早急に打ち出すべきだ。

個性的な知事の出現等によって地方分権への関心が高まるなか、原口一博氏を総務相兼地域主権推進担当相に任じたのは興味深い。原口大臣は「次の内閣」でも総務相とされていたし、テレビの討論番組でも幅広いテーマで発言できる有力な論客だ。その知識とパワーで地方分権がどう前進されるのかが注目される。前原誠司国交相兼沖縄・北方相も、公共事業の見直しや北方領土問題において期待したい。拉致問題については、民主党のなかで熱心にこの問題に取り組んできた中井洽氏に担当相のポストを与えた。特に注目したいのは、拉致問題担当相が国家公安委員長の兼任となったことだ。今までこのポストは官房長官と兼任されることが多く、必ずしも大きな役割を果たせなかった経緯がある。警察庁を管轄する国家公安委員会のトップが拉致を担当することで、新政権ではどのような変化が見られるのか、期待を持って見守りたい。

国民新党の亀井静香代表が金融担当相及び郵政改革担当相に任じられたことには、不安がある。元々議席が少なく、総選挙では代表や幹事長が落選した党が、自らの主張を押し通そうとするのは疑問だ。消費者等の担当大臣となった社民党の福島瑞穂党首の影響力についても、注視したい。

以上の様に、期待と不安が渦巻く内閣である。内政・外交共に課題は枚挙に暇が無い。鳩山首相の手腕に日々注目したい。



【参照】鳩山内閣閣僚名簿http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/meibo/daijin/index.html

民主党政権

2009-09-07 00:31:50 | 鳩山内閣
ご無沙汰しています。更新が遅れ、誠に申し訳ございません。
私事ですが、不況の中苦難の多かった就職活動も無事終わり、一(いち)段落、一(ひと)安心といったところでしょうか。

秋篠宮家の悠仁親王殿下には、3歳の御誕生日をお迎えになりました。これからも親王殿下が健やかに成長されるよう、国民の1人としてお見守りしたいと存じます。

さて、丁度1週間前に衆議院議員選挙が行われました。
先々月の21日に天皇陛下には衆議院を解散され、先月の18日に陛下による公示が行われましたが、長期戦のなか麻生太郎内閣への逆風は火を見るよりも明らかでした。結果、大方の予想通り鳩山由紀夫代表率いる民主党が308議席を獲得し、次期政権を担うことが確定しました。一方、麻生内閣の連立与党である自由民主党及び公明党はそれぞれ119議席、21議席しか得られず、また大物候補が多数落選するなど、大敗を喫することになりました。自民党にとっては、93年の宮沢内閣以来の下野となります。それでも自公の獲得議席は、開票速報番組の各社の予想よりはマシだったというところでしょうか。
(参考)http://sankei.jp.msn.com/election2009/board/000.htm

自民党の敗因を1つに縛るのは困難です。小泉元首相退陣以降、安倍、福田、そして麻生の各元首相と1年毎に首相が交代するなどの政治不信増幅や、小泉改革による郵政、農業、医療、それに建設といった分野での支持基盤の揺らぎ等々、枚挙に暇がありません。

しかしやはり一番の問題は、麻生首相が、「郵政民営化に反対だった」発言の様に、与党の安定議席が4年前のいわゆる郵政選挙の結果であることを無視しているととれる動きをしたことではないでしょうか。首相は構造改革の一定の成果を認めつつも、「行き過ぎた市場原理主義と決別する」などと発言しました。http://www.mmz.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2009/0806at/0806.htmlにもかかわらず、そもそも「市場原理主義」とは何なのかや、具体的にどこが「行き過ぎ」でどういう因果関係で弊害が出ているのか、そしてそのことへの対処はいかなるものかといった点について、首相から明確な説明を聞くことはできませんでした。これでは有権者の理解は得られません。

よって、今回の選挙の結果は必然だったといえます。

一方、同じことは鳩山代表にもいえます。鳩山氏はかつて「経済構造の改革をこれ以上先送りしては日本の未来が危ないと考えています」、「自民党は、規制改革に逆行する動きを見せています。これを許してはなりません」と述べたことがあります。http://www.hatoyama.gr.jp/speech/000909.htmlまた、小泉改革については当初「あたかもその主張を横取りしたかのように、私たちには思えた」と発言しています。http://www.hatoyama.gr.jp/speech/010712.html
しかし、最近では「アメリカが推し進めてきた市場原理主義、金融資本主義」は「経済社会の構造をグローバルスタンダード(実はアメリカンスタンダード)に合わせて改革していくべきだという思潮」であったとし、それは破綻したと述べています。小泉改革については「改革の名に値しないニセモノ改革」と断じました。http://www.hatoyama.gr.jp/speech/090223.html

勿論、時代の流れに合わせて発言内容が変更されるのはあり得ることです。しかし、米国で金融危機が起きたことによって、構造改革そのものを全否定するのは単純すぎるでしょう。また、曲がりなりにも多くの国民の支持を集めた小泉改革についても、その功罪を明らかにせねば国民の納得を得られません。

民主党のマニフェストにある「子ども手当て」や「高速道路無料化」等の政策についても、国民の支持や経済成長への寄与につながるものだとは思えません。新政権においては、本当に成長につながる案になるよう、再考していただきたいと思います。

新政権の枠組みへの不安もあります。民主党は参議院での勢力のことも考えてか、社民党や国民新党と連立を組む予定です。ですが、外交安保問題では社民党、歳出の見直しや削減では国民新党との意見が対立することも予期されます。とりわけ「護憲絶対政党」の社民党との連立に関しては、鳩山氏が天皇の「元首」明文化や9条改正も含めた真っ当な改憲案を発表していることに鑑みて、疑問を抱かざるを得ません。
それに加え、小沢代表代行の幹事長就任についても、しばしば報道されるような「二重権力構造」への不安があります。

鳩山新内閣の誕生はまもなくです。民社国連立与党の新内閣及び野党自民党の動きに対しては、いずれも是々非々で見守る必要があります。