宵待草(ヨイマチグサ)
❝待てど暮らせど来ぬ人の
宵待草のやるせなさ
今宵は月も出ぬそうな❞
この歌の歌詞は
竹久夢二の作品として知られており
大正2年に発表した詩集「どんたく」に
掲載されたものである、
夢二は49年の生涯で多くの恋愛遍歴を重ねた
詩人であり美人画の画家でもあった、
この詩は
夢二が千葉県銚子に滞在していた折
滞在先の隣の屋敷に住む長谷川タカと恋に落ち
秋風の吹く松林を二人で散歩中にふと目にしたのが
砂浜に咲く待宵草(マツヨイグサ)であった、
この時の思い出を後に抒情的な3行詩に
纏めて詩集に含めた、
それを見て感動したのが当時東京音楽学校に学ぶ
多忠亮(おおのただすけ)、
彼は夢二にこの詩に曲をつけることを願い出て
了承を得るばかりか夢二は涙を流して
喜んだと言う、
多忠亮の家系は代々宮内庁の雅楽演奏に従事する
一族であり
古事記を編纂した太安万侶(おおのやすまろ)の
子孫とも言われている、
「宵待草」の詩は三行三十六文字だけであったが
当時売れっ子の詩人で作詞家でもあった
西條八十(さいじょうやそ)が
結核療養中の夢二を訪ねて
❝もう一連書き足されては、、、❞と進言したが
❝貴方にでも書いていただくか、、、❞と寂しそうに
答えたと言う、
そこで夢二の死後4年たった昭和13年に
「宵待草」が映画化されヒロインの高峰三枝子が
歌う運びになって第二連目の詩が
西條八十によって書き加えられた、
❝暮れて河原に星ひとつ
宵待草の花のつゆ
更けては風も泣くそうな❞
尚
宵待草は植物学的には「マツヨイグサ(待宵草)」と
言うのが正しく月見草とは近似種でどちらも群生して
可憐な花をつける、
マツヨイグサは黄色、
月見草は白~ピンクである。
昼咲き月見草