露花便り

福山市の庭師のブログです。庭師の仕事や日々の生活の中からやさしさに包まれる出来事や気付きを綴っていきます。

レトロな空間と芽吹きの庭

2014-06-16 22:40:30 | お庭の施工例
ここに来るといつも幸せな気分になります



「レトロな空間と芽吹きの庭」



施工してから2年が経ちイロハモミジも家の守り神の風格になってきました。

葉っぱがツヤツヤ・・もりもり茂って樹が喜んでいるのが伝わってきます。



枕木のテラスデッキ。
元気に成長したモミジやガマズミの木陰がデッキを包み込んでいます。




今年はブラックベリーも大豊作



全部収穫してから漬け込むため、熟したものから順番に収穫して保存されています。





玄関の扉を開けたら外の緑が目に飛び込んでくる。







お庭のあちこちに植物に対する愛情が溢れています



ふふ・・・可愛い



癒される・・・






咲き広がるヒメイワダレソウと風に吹かれて迎えてくれるガウラ。


一番の幸せは彼女に会えたこと



Lovely angle

会うたび思うけどねぇ、もぉ~・・なんでそんなに可愛いん?

忙しさも怒りもイライラも全て吹っ飛ぶ愛らしさにメロメロです

超~~可愛いエンジェル





御夫妻のやさしさが庭にそのまま現れてる。





外構のアクセサリーとして植えられた幼い樹ではこうはなりません。

生活に溶け込んだ良い庭になってきました






Kさま、いつも突然お邪魔してすみません

成長の記録、ときどき送ってくださいね

ありがとうございました




「レトロな空間と芽吹きの庭」完成時のブログはコチラ




駐車場のリフォーム完成しました!

2014-06-01 21:46:18 | お庭の施工例
植栽周りに縁取りされていた石を撤去し、スッキリとリフォームした駐車場。

17年の間、防風林として植えられていた樹はどれもこせていて瀕死の状態でした。

原因は土壌改良せずに路盤に直接植えられていたことと、根鉢から30センチ以上も土をかぶせ、深植えにしていたことでした。

わりと状態の良かったマキとアラカシは庭に移植し、元気になってもらいたい。

長いあいだ一緒に暮らしてきた家族なので、なるべくなら生かしたいのですが、

クロガネモチ、ヒイラギなどは幹が空洞になり、ほとんどが枯れていたため、塩と酒をまいて拝んでから伐採しました。





Before



  ↓
After

新たに連れてきたモッコクの大木

幹の太さが歴史を物語っています。



移植の様子。

路盤を壊して元の地盤が出てくると、水はけがとても悪い粘土質の土壌だったため、

予定より深く掘り取り、大量の炭とパーライトなどをスキ込んで植え付けました。


家と家族を守る守り神さま。





玄関前はお客様を迎える大切なスペースです。

地元岡山県産御影石を加工して縁石に使用します。


巨大な割石。


天端をノミで平にしていきます。






何日もひたすらノミギリ・・・。




電気道具なしでここまで加工します。

手で彫ったものは年数が経つと美しい。

正直アスファルトに埋まるのはもったいない貴重なものですが、車が踏んだり、年数が経っても下がることのないよう縁に使いました。


縁石を据えたあと、板石を据えていきます。



京都の資材やさんで仕入れた御影石の板石。
ホームセンターなどに置いてある板石とは手のかけようが全く違います。







透水管を入れ、整地。










駐車場は広いので透水アスファルトを施工。





完成!





完成といいつつも、まだ目地が終わっていません。

モッコクの足元の植栽も半分残っています。

中途半端な状態でご迷惑をおかけしました




ばら祭とリフォーム工事のため、一ヶ月抜けさせて頂きましたが、一週間後に再びこちらの現場に戻ります。

やさしいバラの庭

2014-06-01 02:19:10 | お庭の施工例
やさしいバラの庭



いよいよ本日6月1日(日)はオープンガーデン最終日となります♪

まだ行かれていない方は是非この機会に訪ねてみてくださいね。

年数をかけて成長していくツルバラたちがたくさん・・バラの季節が毎年楽しみになるお庭です。

素敵なロザリアンの施主さまと直接お話できるのもオープンガーデンならではです。


拝観料は500円で、手作りのローズスイーツやプチドリンク、ガーデンマップ等ご用意されています。

バラ好きな方、お庭好きな方、バラの写真を撮りたい方はもちろん、

団地の中の限られた敷地で庭生活を楽しむ方法など参考になることがたくさんあるお庭です。







(注)2014年オープンガーデン終了に伴い、住所、地図等の個人情報を削除させて頂きました。
   たくさんの方に足をお運び頂き、ありがとうございました!
   来年を楽しみにしたいと思います。
 







北側外観

Before




   ↓


After









パーゴラの柱とハシゴ部分はアコヤ、腰板張りはサーモウッドを使用。

外部で経年耐える最高の木材です。

特にアコヤは数々の実績を持っています。
地上では50年、水中での耐久性は25年を超えるといわれ、湿度の高い日本には最適の材です。




塗料のブルーはピカルディ地方に伝わるピカールブルーをイメージ。
本来は植物の汁から抽出される天然の塗料です。
日本でいえばアイタデから藍染が生まれる感じですね。
柿渋や藍染と同じで、防虫・防腐効果があります。

バラが成長してくると、とても映える色です。
経年で塗装が剥げたりしてきたら味が出てきますね。







フランソワ・ジュランビルが覗いてる








アンティークレンガのテラスと小道



南側中庭

Before




    ↓


After








9ヶ月前のピエールドロンサール

    
     ↓ 



よみがえったピエール




私がバラの庭で最も大切だと思うことは

「バラ以外の植木や下草をどれだけ大切に育てているか」です。

バラに夢中になると、バラにしか目が行かなくなりがちですが、庭の中にバラしかないなんて不自然極まりないです。

バラ花壇を否定するわけではありませんが、個人的にバラだけの世界は造花みたいで落ち着かない。
主演女優ばっかりの映画なんてつまんないです。

樹木を美しく剪定し、日本の植生にあった植物をバラと混植させてこそ風景になるのです。


逆に言えば樹木をめちゃくちゃに剪定して、イングリッシュガーデン風に宿根草を根限り植えたのに収拾がつかず、
足の踏み場もないぐらいに足元を散らかしている人がいたとします。

それなのにバラだけをどう?綺麗に咲いたでしょ?というぐらいに咲かせていたら違和感を覚えます。

雰囲気や雑誌に載っているからとか、なんとなく綺麗なのではなくて、理由があって綺麗なのです。




ここはイギリスでもフランスでもなく、日本です。

日本の風景にしっとりと溶け込む空間は素敵ですよ


庭でホッとする時間をできるだけたくさん作りましょう。

そのためには、日本にもともとあるものや、馴染深い下草を取り入れてみてください。

珍しい植物のオンパレードや図鑑の庭はやめましょう。





バラだけが美しく咲くために他の何かが犠牲になり、悲しい思いをして生きているのも辛いですね。

縁があってお庭に連れてこられた植物たち、一株ずつに愛情を注いでください。


こちらのお庭の施主様は全ての植物に愛情を注いで育てておられます。







東側玄関前


Before





After










Before



     ↓


After







たった9ヶ月でバラたちがこんなに美しく咲いたのは、施主さまの熱意と愛情です。

真夏の煮えたぎるような気温の中、たった一人で庭全ての土をふるいにかけ、根っこやガラを取り除かれました。

休日はもちろん、お仕事の日は朝4時から土の改良をし、その後出勤されるというハードな日々を送ってこられました。


引き取ったガラの総重量は4トンを超えました。







工事が終了した日には、「明日からもう来られないなんてさみしい、三人でずっと頑張ってきたのに」
と言ってくださった施主様・・・。わたしも思わずうるっとしました



その後も綺麗になった土を腐葉土や肥料などで改良し、真冬の休眠期、雪が舞う中苗を一本ずつ植えられました。






咲く期間は一瞬ですが、このやさしさ、愛らしさを見るために施主様のどんな頑張りがあったのかに
思いを巡らせ、可愛いバラたちを見に来てあげてくださいね






「やさしいバラの庭」来年、再来年もお楽しみに!

オープンガーデンが終了しましたら、追加工事に入ります



「やさしいバラの庭」ほか記事はコチラ







ひとときの庭

2013-07-15 14:33:51 | お庭の施工例
ひとときの庭




福山市川口町に移転オープンされた味処ひとときさんのお庭が完成しました!









お店の「ひととき」を感じながら、モミジやシラカシ、ミツバツツジなどやわらかい樹木で構成。



今は西日がきついのでモミジがみんなの西日避けになってます。
将来的にはシラカシが中心でボフンと成長します。


対になるのは大将が希望されたシダレモミジ。





親方の構成によく使われる古い御影石と枕木。




施工中作業風景






足元は露花らしく、しっとり育てた里山育ちの植物たちを連れてきました。




ヤマアジサイ伊予獅子手毬






コスミレサクラ
種をはじかせて飛ばします。
コケの間に顔を覗かせて欲しい♪





個人的に大好きなタデ。「タデ食う虫も好き好き」のあのタデです。

個人庭に植え込むと雑草扱いでたまに引き抜かれます
夏の間に切り込んでおくと、秋に低い草丈で咲きます。

鮎を食べるときに付けるタデ酢にも使われると大将から教わりました。
藍染めに使われるアイタデ同様、防虫、殺菌効果があるみたいですね。







ヤマアジサイ藍姫
濃い藍色からこんな情緒ある色に変化します。







風に葉をなびかせているのは大好きなスゲ。

今一番夢中な植物は日本のスゲ属です。







ティアレラ







ハコネギク







ワイルドオーツ
夏は風に揺れる空間が欲しい・・・そんなときにぴったりの子です。
一輪挿しにも重宝します。







白花アキチョウジ








白花シモツケ







フジバカマ





アマドコロ







そして苔たち。





その他、ミズヒキやエゾノコンギクなど。

夏は雑草が好き勝手に茂ってるように見えていたのに、

秋になってはじめて今までどこにいたの?っていうぐらい繊細で可愛い表情が生まれるよう構成しました。





秋の夜、暖簾の両サイドから虫たちのお出迎えの声が響き、

枕木ベンチに腰掛けるとリーコロコロ~♪と虫の声に包まれる・・・そんな空間になると最高だなぁ






味処ひととき 素敵なお店です





庭の大改装終了しました。「歩みの庭」

2013-05-29 02:12:18 | お庭の施工例
亡きご主人が大切にされていた植木と石を残し、庭を作り直した「歩みの庭」

今日完成しました!






アプローチの縁石は全て既存石。











新しい樹は一本も入っていません。
全てここで何十年もかけて育てられた樹です。

植えられてから一度も根回しのかかっていない樹と剪定の荒れた状態の
樹木に悪戦苦闘の日々でした。


正直、自分で選んだ樹を思い通りの場所に植え付けるのはいとも簡単です。

日照条件や地域の環境に合わせて樹を選べるからです。


今回の改装で南側の敷地を手放すことを決意されたため、
いずれは南側に建物の影が出来ることになります。

今まで360度からぐるり太陽を浴びていた樹木たちでしたが、
これからは日照時間が少なくなります。

風通しも変わるでしょう。



このことを踏まえ、南側に家が建った状態を作り出し
夏と冬の一日の日照をシュミレーションしました。

「真夏の西日はどの角度で何時まで当たるのか。」
「冬の太陽の高さと日照時間は。」



可愛がっていた樹たちをなるべくたくさん残したいという
奥様のご要望を重要視しましたが

「この樹はこの場所でこれから何十年と生き残っていけるのか」が最優先課題となりました。




そして東西に長い敷地の水勾配を取るため、飛び石やあられこぼしで
園路をたくさんつけ、高低差で水を逃がす勾配の工夫をしました。







「今まで歩んできた道、これから歩んでいく道。」

一歩一歩踏みしめ、掃き清め、疲れたら石に腰掛け・・・

「想い出は大切に抱きながらも、過去にとらわれず未来へ前進していく」

そんな想いを込めて名づけさせて頂きました。













M様、途中あれこれと抜けさせて頂き、完成が遅くなり申し訳ありませんでした。

いつも優しいカズさん、ありがとうございました





そしてラブ。



明日からは君と毎日会えないのが辛い

















お世話になった皆様、ありがとうございました!!




さあ、そして明日からはお待たせしている仕事にかかります









寝転びの庭へ。

2013-01-23 01:24:20 | お庭の施工例
寝転びの庭





「不来方のお城の草に寝転びて 空に吸はれし十五の心」

「・・・緑に吸はれしあまたの心」

大好きな石川啄木の短歌からイメージを膨らませた寝転びの庭。


縁あって広島安佐北からお声をかけて下さったKさま。
上品で気遣いのやさしいお人柄がそのまま現れたお庭になるよう心を込めて作りました。

座観式のお庭ですが、「いつまで見ていても見飽きない、ご家族や訪れた人が
つい寝転んで眺めたくなるような寛げる空間に」という想いをこめて名づけさせていただきました。


既存の樹木やプラ垣などの構造物を生かしつつ、調和のとれた新しいお庭に生まれ変わったリフォームガーデンです。
生活スペースを確保し、草取りなどの手入れの大変さや水はけの悪さも同時に解決しました。


施工前



入口にヒイラギとサツキの刈り込みがあり導線を遮っていました。




施工後




施工前


夏は草取りの手間が大変。
水はけが悪く、雨のあとは所々に水たまりができていました。



施工後


足元は歩きやすさを重視して板石貼りに。
勾配を取って水はけの問題を解決。




施工前


犬走りは経年で土が削れてデコボコでした。




施工後


一番頻繁に歩くところなので、洗い出しでスッキリと仕上げます。
軒が広いのでゆったりとした空間に生まれ変わり、歩きやすくなりました。




施工前

ヤマモモなどの大木が塀沿いに植えてあり、根が塀を壊さないかと心配しておられました。


施工後


塀沿いに植えられていた樹は撤去し、広がりのある空間に。








広大な敷地の庭以外は、一番奥のスペースを築山にして盛り上げると後で困ります。
水が家の方に返ってくるだけでなく、奥の草取りが大変になります。
将来的に考えるとよじ登ってしゃがんで草を取らないといけない生活は避けた方が良いですね



植え升の周りを通れるので管理が楽です。
春になると樹木が一斉に芽吹き、緑のトンネルになります。
木々の木漏れ日で夏の強光から杉苔や下草を守ります。







今回一番大変だったのは、団地の高い敷地の中への搬入と搬出でした。
植木の撤去や残土撤去もですが、砂利や砂、真砂土など全ての資材が1トンバックでは吊れない距離でしたので、
500キロ袋に詰め替える作業手間がかかりました。




ユンボが仕事を終えて搬出されるところ。
無事に出たのでホッ。





解体中。




春布造園の佐々木親方が台杉の植え付けと剪定をされました。
病気や剪定など樹木についていろいろ教えていただきました。
もっとお話聞きたかった~
お忙しいところありがとうございました!






雨落ちの位置調整。



洗い出し施工中。



備中砂利の洗い出し。



石貼り中。





おやつの時間になるとトコトコやってくるお隣のラッキーくん


じっと見てる→・・・からついあげる。
あげないと「ワン!」って呼ぶ→「今日はリンゴだからね、あげれんの。」って言うとさっさと行ってしまう。





雨の日は里山工房で作業




あまりの寒さに親方が薪を燃やしてくれます。


石の加工中。
防塵マスクと作業ゴーグル装備。






工事の間一ヶ月程、安佐北まで高速で通わせて頂きました。
沼隈と比べると広島は山が高く、気温が低くて雪が多いです。

地形から考えられる生活様式や文化の違いなど親方と毎日話しながら通いました。
その地域に根差す植物、動物、人の生活、考え方、建築様式、剪定方法、次々と終わりなく頭に浮かぶ。

いろんなこと感じながら道路を走っていると、民家の庭続きの山に鹿が二匹
木をハムハムしてました。










後半は雪が吹雪く中での作業が続きました。



ひどく低温になった朝、高速に乗ると、走るほどに雪は激しくなりPAには雪が積もって一面真っ白でした。



なんとか無事に現場に着くと、完成間近の庭は雪景色でした。



ハッとするほど美しい世界。


四つ目垣の柱の上にも綿帽子。











モミジの枝ってなんて繊細なんだろ



滅多に雪の降らない福山ではなかなか見ることが出来ません。

昨日までの景色が全く別の世界に変わっていたことに感動!!





雪の庭っていいなぁ。



太陽が出て雪を溶かしては、雪が突然吹雪き、の繰り返し。






寒すぎて顔がこわばる

寒いけど心はクリアです。


四つ目垣完成!




やっぱり四つ目垣はいい!!
上品です
間口をゆったりさせるためリャンコにしています。


手前の空間はできるだけ優しくお客様を迎えたい。
低木と宿根草、球根などを仕込む。

春が楽しみ




散水栓の移設に伴って立水栓を新たに設置。
見知らぬ土地でも温かい出会いが
ヒロキタの皆さまありがとうございました!





コバノズイナ





部屋から見た「寝転びの庭」






座椅子はO様よりお祝いの贈り物です。




Kさまはお料理がお上手です。
母親の帰りが遅い私の子供たちを心配して、ほぼ毎日帰り際に手料理を持たせてくださいました。
どれも手の込んだ野菜たっぷりのお惣菜で子供たちは大喜びでした。
帰った途端に倒れこむほど疲れていた私には言い尽くせないほど有難く、頂きながら涙がこぼれることもありました。

お弁当をもって来れなかったときは、お昼ご飯を用意して下さったり、風邪をひいたときは生姜の甘酢漬け、
レモンのはちみつ漬け、体力が落ちないよう、にんにくのミルク煮、らっきょう、梅干、ゴボウ茶などなど・・・
何から何まで温かく包んでくださるような方でした。


Kさまとの出会いを通じて新たな目標も見つかりました。
私の今年の目標である料理の腕を磨くこと!
健康でプラスのエネルギーで溢れる生活にはどんな食事を摂るかが一番大切だな。

料理以外でも新しく何かを始めるのではなくて、今あるものを見直す。
今でもできているけど、ちゃんと磨きをかけていない部分を磨いていく。

親方のような天才的な閃はありませんが、庭師としての腕を磨いてスキルを上げていこうと思っています。




そんな思いで今立っていられるのもKさまとの出会いがあったからです。


ありがとうございました!!






春のうららかな昼下がり、寝転ぶと「緑に吸はれし・・・」の空間が広がっていることと思います。



お会いできる日を楽しみにしています





「レトロな空間と芽吹きの庭」 

2013-01-05 16:55:32 | お庭の施工例
レトロな空間と芽吹きの庭









2012年に完成しましたK様邸「レトロな空間と芽吹きの庭」をご紹介します



レトロな空間って、どんな空間を想像されますか?

「レトロ」を改めて調べると、辞書に「復古調、懐古的であること」とあります。

「昔の体制・状態に戻すこと、昔のことをしのび、懐かしく思うこと」

私は古き良き時代の日本が大好きです。

石や木材などの使い込まれた美しさは、お金では買うことが出来ないその家の歴史です。

今では当時のような素材は簡単には手に入らなくなりましたが、10年、20年、30年と
年数をかけて家族の歴史を刻む庭に天然素材を使った空間があればと思います。

今回使用したトロッコに使われていた枕木やオーストラリア産の枕木は全て中古です。
既にトロッコ線路だった時の記憶を持つ美しい材ですが、枕木塀に姿を変えて生まれ変わりました。

出来た時が「レトロ」の完成ではなく、これから何十年も時を刻んでいき、本物の「レトロ」になれるのです。
最近は何十年かかってもレトロになれない素材が氾濫しています。
全て天然素材にする必要はありませんが、要所要所に取り入れるとやさしい空間になりますよ

時が経っても家族から愛され続ける庭になるよう想いを込めて名前を付けさせて頂きました。






K様ご夫妻にお会いして打ち合わせを重ねるうちに、共感できることが多く、
特に古いもの、歴史を感じるもの、長く大切に使える物が美しいと感じる
価値観がとても近いと感じました。






南に面した建物は軒がなく、夏の照り返しや吹き降りなど問題点が多いと感じ、
それらを解消するためのデザインと素材にこだわりました。


リビングの前にはオーストラリア産の中古枕木のテラス。



クレオソート等不使用の枕木なので変な匂いもありません
傷み防止のため、天然オイル塗料を5~6回塗り重ねます。
枕木は土に当たるところから腐食するため、石積みで高さを出します。



  施工中





  施工後


  






ご主人が購入されていた水栓柱に合わせる水受けはアイアン作家フジオさんに依頼して製作して頂きました。
水と鉄という相反するとされるものが、お互いの力を借りて風化していくさまはなんとも美しいです。


世界にひとつの作品。



ト、トンボがとまってる!!





フジオさんってねぇ、すんごい方なんです
毎回工場に長時間おじゃまして図面を書いたりしながらこんな感じとお願いするんですが、
フジオさんから出てくるアイデアも出来上がったものも
想像以上に感動的で愛おしいものばかり・・・


枠は鉄ですが、底面と排水部分はステンレス。
美と用を兼ねてます。





フジオさんの他記事はコチラ
  ↓
やさしいと感じる鉄。「藤尾工作所」



現場に向かう途中、橋で脱輪した車に遭遇。



親方はどんな時でも道路で困ってる人を助けます。
みんな横を通り過ぎて行く中、釣り上げたり引っ張ったりして無事救出
なかなか真似できませんが、見習いたいです。







お嫁に来たイロハモミジ、ガマズミ、ミツバツツジ、ナツハゼたち。
モミジは株立ちでまんべんなく葉を揃えたものを植え付けます。
偏った曲線美のものや繊細な樹形のモミジは、木漏れ日や限られた一方からの太陽を浴びて日陰で育ったものです。

こうした樹形の樹は真夏に一日中強光が当たる所には適しません。
無理やり植えると一斉に幹吹きを出して生き残ろうとするので、将来的には樹形が乱れます。



土壌はバーク堆肥やパーライトに加えて、露花で落ち葉から作った腐葉土で改良します。
夏の日照りが厳しい環境では、真砂土だけで植え付けると、樹が焼けてしまいます。

良質な有機物には微生物がたくさんいます。
腐葉土をたっぷりすき込むと水持ちも違いますよ。


三年ものの腐葉土はカブトムシの赤ちゃんがいっぱい



赤ちゃんはまた連れて帰ります



駐車場はアンティーク耐火レンガ貼り。




ひとつずつ色も風合いも違います。





来客時には4台駐車可能です。

南に面した庭の一番の問題点は真夏の照り返しです。
草が生えないように駐車場をコンクリートで覆ってしまっているのをよく見かけますが、
夏は激アツです
照り返しが眩しく、室内まで熱気が入ります。

エコ住宅にしたつもりでも、夏はガンガンに冷房を効かせる状態になってしまうのです。


煉瓦や植物でできるだけ地温をさげることをおすすめします








春には一斉に草花が芽吹く。










秋にはモミジやコバノズイナ、ドウダンツツジなどの紅葉したオレンジに包まれる空間。















奥さんが植えたプリンセスミチコも頑張って咲いています







そして私の一番好きなカット。












K様とご縁があって本当に良かったです!!

人混みが苦手なお二人ですが、ばら祭りや緑化祭などのイベントには
わざわざ足を運んで下さり、差し入れを頂きました。
イベントって思いのほかハードで、夜は救急病院に運ばれるほど余裕のない状態でしたが、
私も親方もお二人のニコニコ笑顔にどんなに励まされたことでしょう!!

ここに全てを書ききれませんが、やさしいお心遣いに感謝します




そして先日伺ったときのこと、冬枯れの光景もまた美しいのですが、
その中に揺れるオレンジ色のビオラを発見!

か、可愛い~







お会いした頃には植物にはあまり関心がないと言われていた奥様でしたが、可愛い寄せ植えがあちこちに

ご主人は夏の間、毎日モミジやヒメイワダレソウたちに散水しておられました。
お二人で草も丁寧に取られ、草花たちは生き生きしていました。


私たちが庭に求めるものはまさにこのことです

生活感のあるもの、愛情を注いでもらっているものが尊く美しいと感じます。




庭は完成した瞬間からスタートです。

植物が家族にいかに長く愛されるか、そのための庭師です。





完成の報告が遅くなってすみません

K様、やっとブログでご紹介できました!!
これからも見守っていきます


何か困ったことがあればいつでもご連絡くださいね。
末永くお力になりたいです




ありがとうございました!!










コブシに決定!

2012-12-02 22:26:57 | お庭の施工例
今年もついに一ヶ月をきりました

12月に入った途端に真冬の寒さがやってきましたが、
みなさま風邪などひかれてないですか?

今日は緑化祭でのご縁からお庭のシンボルツリーを植えさせて頂きました!

施主様のご要望により、よくある株立ちの木ではなく、一本立ちで大きくなる樹種の中から
環境と好みにあうものを検討した結果、コブシに決定しました


コブシは根の性質から移植を嫌います。
水決めでの植え付けを特に嫌うため、鉢下以外は土決めです。
頭のわりに鉢が小さいので必ず支柱が必要です。




竹で八掛け支柱を施工中。
京都時代によく怒られてやり直しさせられた八掛けの思い出を語る親方




風格あるコブシ。建築の和の要素が引き立ちます。
春の芽吹きが楽しみです




素早い走りで写真に収まらないりくくん肩だけちょこっと写すことに成功







緑化祭でお買い上げ頂いたオリーブ「ネバディロ・ブランコ」も元気に頑張っています





E様、早くからご依頼下さっていたのにお待たせしてすみませんでした
植え付け後、新しい家族を迎え入れるようにコブシと記念撮影しておられたのを見て感動しました!
良いところにお嫁にもらわれたなぁ・・・と



コブシが家にパワーを与え続けてくれるよう願います

ご家族と一緒に10年後20年後と元気に成長するよう見守っていきますね!


ありがとうございました





見晴らしの庭 完成!!!

2012-01-05 05:00:05 | お庭の施工例
か、完成しました、「見晴らしの庭」!!
完成したと同時に剪定に突入したため、11月12月は休みなし。
疲れのあまり帰ったら寝てしまうため、ブログも更新できず・・・言い訳はよそう
ご報告が遅くなりました


ご先祖から受け継いだ石や樹木を生かしつつ新しく生まれ変わりましたO邸。
古い土塀を取り、高台から周囲を見晴らせるロケーションは、なんともゆったりとして美しいです。


施工前
 
大きな車は入りにくい。生垣が両サイドから迫っていました。


施工後

広い敷地をゆったり開放したアプローチ。施主様のご要望でバリアフリーに生まれ変わりました。





施工前

庭の中は長年の間に植物が混在してひしめき合っていました。



施工後

残す樹といらないものを整理し、モミジ、シデコブシ、ドウダンツツジなど新しく植え付けしました。





ウメ、日向ミズキ、紫式部、ウメモドキ・・・早春を告げる花木や実のなる樹は大好きです
石積みの裏は勾配を利用して自然豊かな山道をイメージ。
小道の脇には季節の草花。スミレ、ヤマアジサイ、タデ、ミズヒキ草・・・
散策したり、石に腰掛けたりのんびり過ごせる空間にという思いで植えつけました。
春から芽を出すものも自由に広がって欲しい。











リビングから見た景色。
板石の露壇からあられこぼしへ、その先には飛び石階段が続きます。




駐車や洗濯物を干したりできるフリースペースはレトロな雰囲気の焼杉煉瓦貼り。




硬くて風化しにくく、苔むさないので滑りにくい。





玄関ポーチから見た風景。

親方こだわりの備中砂利のアプローチ。縁石は壊した土塀の土台部分の石を加工して利用。

ご主人の発案のLEDライトは、人感センサーでほんのりと灯ります。











苦悩した石積みも完成しました!
下段2、3段は埋まりました。







あられこぼしの小道は苔目地でしっとり。
奥に青々と茂る芝生スペースは奥様のご要望で広々と。




施主のO様ご夫妻、本当にありがとうございました!
途中で剪定などで抜けて工期がのびてしまい、ご迷惑をおかけしました。
Mハウジングのみなさま、T建設さん、M設備さん、中電さん、
なんども様子を見に来て下さった左官職人Mさん、
忙しい中駆けつけて下さった職人Kさん、庭譚のタツキくん、ユウスケくん。
たくさんの方からいろんなことを教わりました。

そして親方。

やっぱすごい。
親方の頭の中はどうなってるんだろう。
余計なことは誰にも話さないスタンスなので、普段気付きにくいんですが、
過去未来や存在そのものを大きな世界観で見られてる。
素材がどこでどうやって生まれたものなのか、
庭が10年後20年後にどうなっていくのか、100年後の光景は・・・。


「100年前はここから見える景色は違っていた。
牛が田を牽き、人々は着物を着て畑を耕していた。
家や交通手段など生活様式は変わっても今と同じ感情をもった人間が暮らしていたことに変わりはない。」


自然の中の植物と深いつながりを持って生きていたご先祖たちに比べて、
植物との関わりが希薄な今の生活、庭に求められるもの、何代も続いていく記憶・・・
文明文化の生まれる瞬間、続いていく理由、何が美しくて何が尊いものなのか、いろんなことを考えさせられました。

思いは多けれど、簡単に語らない親方は、初対面の方に受け入れて頂くまでに時間を要します。
地形の勾配がきついことやバリアフリーのデメリット、植物の生育条件など、
いろんな角度から考慮して庭を構成していますが、その大きな繋がりは素人にはわかりません。
利便性を重視するあまり、情緒も趣きもない空間になってしまっては、「庭」とは呼べない。
かといって、「美」を追求していくと、そこで生活していく人にとっては
おざなりな形式美でしかないうすっぺらな空間になってしまう。
親方の「庭」に対する思いが深く掘り下げられるほど、無口になるので、よけいわかりづらいのだと思います。




実は今回施主様に提案した図面も最初はことごとく受け入れて頂けませんでした。
打ち合わせまでに何度も図面を描き直し、施主様のご要望を取り入れられるよう再考しましたが、
結局一番最初から親方が良しとしてきた部分は変わらず、完成まで貫き通しました。
施主様は日々の親方の姿勢と出来上がっていく様を見て、納得して下さったのだと思います。
完成後、奥様が

「最初図面を見たときにはこの光景が想像できなかったけど、改めて今見ると図面通りだね!
最初からこの空間が頭の中で出来てたんだね!」と言われました。

多くを語らずとも思いを行動で伝えることができる親方はすごい。

そして図面をもっとわかりやすく描かねば!
平面図よりも手書きのパースの方がわかりやすいんだろな。
私は言葉でなるべく早く伝えたいという思いから、語りだすと止まらなくなります。
相手に理解してもらいたいと懸命になるあまり、目先のことばかりに囚われていたとつくづく反省しました。

「見晴らしの庭」の完成とともに、今までばらばらに浮かんでいたパズルの1ピースずつが、
ばちばちとはまっていき、クリアなひとつの固まりになった感覚です。
まだまだわからないことやぼんやりとしたものが漂っていますが、
これから出会う課題としてその都度思いを綴っていきたいです。






 
ご先祖により庭の角々に立てられた厄切りの石たち。










O様、年内に剪定に伺えず申し訳ありませんでした。
改めて剪定に伺います。


ありがとうございました!!



緑のカーテン成功のコツ

2011-08-15 22:20:30 | お庭の施工例
先日ご紹介した保育園の緑のカーテンのその後をご報告します 

少し遅い植え付けでしたが、一ヶ月でこんなに成長しました~

施工後一ヶ月で↓







一ヵ月後↓






植え付け直後


一ヵ月後↓ 株元まで枯れずに葉がびっしりそだってます♪





大きなゴーヤの実がざらんざらんぶら下がってる~


午後から撮影もかねて伺いましたが、緑のカーテンの室内は本当に涼しい!!
3~5℃ぐらいは違うんじゃないかな?
西日がきついこともあり、施工前は午後から部屋に熱風がたまってる感じでしたが、
一ヵ月後には廊下の辺りまで涼やかな風が吹いていました。


いろんな園に出入りされてる業者さんが、
「緑のカーテンをされてるのはよく目にするけど、本当にカーテンになってるのははじめて見た!」
と、言われたそうですよ。
緑のカーテン成功!




節電や情操教育のため、植えた苗を可愛がって大きくしていたのに、なぜか枯れちゃった
・・という方も多くおられるのではと思います。
失敗して悩んでる方のために、ここで少し成功のコツをお教えします。


つる植物を大きく成長させるため、底の深い鉢(大根用プランターなど)を使用すること。

真夏の水切れを避けるため、赤玉土を混ぜるなど、水持ちの良い用土に改良すること。

リン酸の割合が高い緩効性化成肥料を植え込みの際にたっぷり混ぜ込むこと(プランターの場合は遅効性有機肥料では植物の成長に対して、肥料成分の分解、効き目が間に合わない)。

ウリ科の植物は雨や泥はねで発病する病気が多いため、株元をマルチングして葉裏に水がかからないようにすること(株元以外に水をかけない)。

二年目以降は連作障害がでるので、使用したプランターは丁寧に水洗いして消毒、用土は新しいものを使用すること。



・・・などなど
意外に気にしてなかったことが見つかりましたか?
病気や害虫に侵されるのは仕方ないことかもしれませんが、植物自身が丈夫で健康に育っていれば、病気にもかかりにくく、害虫にも強い体になります。
そのためには、水をやりすぎたり、窒素を効かせすぎたりして大きく(徒長)しないこと。
つまり、しょっちゅう水をやらないと水切れする用土で植えない、プランターでは微生物が少ないので、油粕などで葉肥えを効かせすぎないことが大切です。


一日何回とか決めて水やりするのもよくないです。
植物が本当に欲しがっていないのに水やりを続けていると、根が張らず、甘えただらしない姿になり、水切れに極端に弱い子になりますよ。
雨や気温の変化に合わせて「やらない」ことに意識をもって、水やりしてみてくださいね。
特に夜温に敏感な方は、水やり上手なかただと思います。

成功した方も失敗した方も植物のちからで気温を下げたいという気持ちは同じ。
いつか町中緑でいっぱいになるといいなと思います