ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

ほやの燻製と三島と志ん朝

2006年12月25日 | 
 突然嵐のように襲来した仕事に追われて本を読む気力も失くしていた。ブログさえ開けなかった。早くこんな生活にはおさらばしなくてはいけない。こんなことで寿命は縮めたくない。

 出張帰りの東北新幹線、ワゴンに揺られてやってきたのは、「都こんぶ」くらいのオレンジのパッケージに浮かぶ「ほや」の文字。これは、もしかしてあの「ホヤ?」と売り子にたずねれば、「はい、ほやの燻製です」。ならば、買わねばならぬ!「三つください。それと缶ビール」。プシュッ!一口飲んで、逸る手で封を開け、赤茶色の燻製をつまみ出して放り込む。ちょっとニチャニチャした口当たりだが、噛むほどにほや独特の渋みと苦味と甘味が渾然一体となって口に広がる。紛れもないほやの味である。車内のビールの友には最高の一品ではないか。東北新幹線に乗ったらぜひお試しあれ、といいたいところだが、できれば私が買い占めたい。

 読書力(どくしょりき)が下降線をたどっている中で読んだのが「三島由紀夫―剣と寒紅「(福島次郎著・文芸春秋社)。著者は小説といっているが、三島との同性愛的な関係を赤裸々に綴った告白の書。ぐったりしている中で読むには、生々しくかなり内容の重たい本だが、覗き見的な興味で一気に読んでしまった。

「落語で江戸のうらおもて」(京須偕充著・ちくま文庫)、志ん朝さんの高座CDのプロデューサーであり四代続く江戸っ子である著者が、「三軒長屋」に出てくる自分のことを「あたし」ではなく「おれ」という鳶の姉さんとか、落語の中の一言を例に、江戸っ子気質とは何かを名調子で説いていて面白い。こういう本もずるずる読んでいては著者に失礼、これも一気に読んでしまった。志ん朝さんのCDが聞きたくなります。

 そんなわけで、とにもかくにも、年忘れの一気飲みと、やぶれかぶれの一気読みで、なんとか心の均衡を保っている年の瀬なのだった。
コメント (1)
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