フェラーリ社が倒産の危機にあった1957年、起死回生の大博打としてイタリア縦断レースミッレミリアに参戦し、見事に優勝した時の実話を元に、フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)の経営者、技術者、夫、愛人を持つ男としての多面性を、マイケル・マン監督「フェラーリ」は、マン監督お得意の複数ドラマの同時進行という手法で描く。とりわけ愛人の存在が発覚し、妻ラウラ(ペネロぺ・クルス)に詰問されるシーンは、手前にエンツォ、奥にラウラの2人の顔をとらえ、それぞれ話をする方へピントを合わせることで、2人の断絶の深さを表現し、その後ミッレミリア参戦を決め経営の挽回を図ることに共同経営者の妻が同意したときは、2人が向かい合って話すショットで表すなど粋な演出をする。フェラーリやマセラティ、フォード、ベンツなど当時のレース車を再現し、実際にイタリアの街中を走らせるレースシーンは圧巻で、スピード感とホンモノ感がすごい。さすがマン監督である。車好きは必見。間違いなく今年の洋画ベスト5に入ると断言しておこう。
それにしてもアダム・ドライバーは、ジム・ジャームシュ、デビッド・ロウリーといったインデペンデント系からもマイケル・マンやコッポラといった巨匠にまで寵愛されるのがすごい。グッチもフェラーリも演じているし変幻自在な俳優である。
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