ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

シャフラノフでミーン・ホワッチュー・セイ

2007年02月23日 | 音楽
 澤野工房強力プッシュのウラジミール・シャフラノフを聴いてみた。

 いまごろ? そう、いまごろ。「ポートレイト・イン・ミュージック」。

 サド・ジョーンズの「Mean What You Say」が聴きたくて買った。いい曲です。同じサドの「Child Is Born」も入っている。「Mean What You Say」はサド・メルオーケストラ初のスタジオ録音版「PRESENTING」に入っていて、ビッグバンドファンには、多分おなじみの曲だと思う。
 ハンク・ジョーンズ(まだ、ローランド・ハナではない)のピアノソロから静かに始まり、ブラスのイントロがブレイクしたところで、サドのフリューゲルホーンとペッパー・アダムスのバリトンサックスでテーマが始まる、この展開がたまらない。このCDがいまだ出ないのはなぜなのか? それはさておき、この曲をピアノトリオで演奏するというのは、あまり知らない。トミー・フラナガンのアルバムあったくらいじゃないか。

 そんなわけで、「ミーン・ホワッチュー・セイ」聴きたさに買ったこのアルバム、いいじゃないかい。

 アドリブのアイデアがとてもよくて、あージャズだなーという臭いを発散している。グルーヴ感がとてもいい。後半に行くほど盛り上がるサド・メルバンドの雰囲気も、フレーズも一部残しているあたり、先達へのオマージュが感じられる。サド・ジョーンズを選ぶセンスがいいと思う。なんでも、シャフラノフがまだソ連にいた頃、サド・メルオーケストラがやってきて、TVにカルテットで出演したのを聴き、いたく感銘を受けたらしい。
 
 そんなわけで、「Mean What You Say」以外の演奏も、すべてよい、買って損しないアルバムでありました。ジャケットの写真は、以前のものです。いまは、違う絵柄になっています。
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エリック・リード聴いた。ロン&アルが支えて目立っていた。

2007年02月17日 | 音楽
 最近なぜかピアノ・トリオのジャズばかり聴いている。いまの精神状態にフィットするのだ。といっても、昔買ったレコードに比べりゃCDはそんなにあるわけではない。なんせ一時期ピアノ・トリオに飽きていたのだと思う。

 聴いていないから偉そうなことはいえないが、一発聴いてあの人とわかるのも少ないし、最近やたら多い女性ピアニスト、ヨーロッパ系ピアニストも試聴してみると、イントロが長くてメロディが出てくるまでに時間がかかるとか、スタンダードだけれど何の曲だか分からないとか、きれいすぎてジャズっぽくないとか、あまりひきつけられるものがなかったのだ。

 それなら、ビル・エヴァンスの晩年ものとか、ウィントン・ケリー「Full View」、このあたりがちょうどよかった。「フル・ヴュー」は、昔のレコード評では酷評されていたけど、「縁は異なもの」1曲ですばらしい。なかなか心にしみる演奏だ。ヘルゲ・リエントリオはいかにもヨーロッパ系のクリスタル感だが、「アマポーラ」がお気に入り。

 でも、ほかになんかないか、というわけで寺島靖国(すごい名前だよね)著「JAZZピアノ・トリオ名盤500」なんて本まで買ってみたが、知らない人が多い。で、ご推薦のエリック・リードを買ってみた。

「クレオパトラの夢」、ベースはロン・カーター、ドラムはアル・フォスターという強力布陣。これは3人が対等にインプロヴィゼーションで会話するというトリオではない。ロン&アルの二人が若い親分をしっかりサポートしながら、それでいて目立っている、うたっているという不思議な一体感のあるアルバムなのだ。

 タイトル曲もそうだけれど、「ジャンゴ」「ワルツ・フォー・デビー」「ラウンド・ミッドナイト」などかつてのピアニストの名曲を取り上げているところに、並々ならぬ意欲を感じるが、まだ、エリック・リードその人の個性がよく分からない。小粋なジャズワルツ「テディズ・チューン」、ラテン調の「アイ・ラヴ・ユー・ポギー」、終わりのテーマ演奏でエヴァンス風の和音を使う「ワルツ・フォー・デビー」もみんな悪くない。でも、やっぱりロン&アルが前でバックアップしている感じがするのだった。
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アルトマン監督「ロンググッドバイ」を観ながら春を待つ

2007年02月12日 | 映画
 ロバート・アルトマン監督「ロンググッドバイ」をDVDで観る。最も好きな映画のうちの1本。役者(猫も含め)、カメラ、音楽、舞台装置すべてがジャズ的な魅力にあふれているからだ。ちなみにこのDVDは900円だったはず。

 音楽は、「スターウォーズ」などで有名な巨匠ジョン・ウィリアムズ、ほぼ全シーンにわたってテーマ曲が、ジャズっぽいさまざまなアレンジで流される。ピアノトリオ・ヴァージョンはデイヴ・グルーシンが演奏している。鼻歌やバーのピアニストの練習曲、作家のロジャー・ウエイド邸のチャイム音までテーマが使われる懲りようだ。撮影はヴィルモス・ジグモンド で、常に流れるように移動しているカメラが気持ちいい。ウエイド邸での海のシーンが秀逸。窓ガラスごしのウエイド夫妻と波うち際で戯れるマーロウを窓ガラスに反射する映像で同時にとらえたシーンは美しい。

 マーロウが住むアパートの建物もコンクリートのツリーハウスみたいで不思議。エレヴェータで上昇と下降を繰り返しながら物語が展開していく。エリオット・グールドのフィリップ・マーロウ。いつも紺のスーツ。暑いメキシコの田舎町でもだ。そして全編でタバコを吸っている。主題曲の変奏。すべてが反復され、変奏されるのが、この映画のリズムをつくり出している。ニコチン中毒のような主人公もいまなら禁煙団体からクレームがつきそうだが、理不尽で暴力的な警察、マーロウの隣人で、裸で集団生活する女ダンサーたち、変態的なやくざの振る舞いなどに70年代の匂いが漂う。

 映画における「お別れ」の引用もいろいろあるようだ。警察に共犯容疑で拘留されたマーロウが指紋採取の後、手についた墨を顔に塗りたくるシーンはゴダールの「ピエロ」が自爆する前のしぐさ、メキシコの田舎町の並木道でマーロウとアイリーンがすれちがうラストシーンは「第三の男」のラスト、アリダ・ヴァリとジョセフ・コットンだ。きっとほかにもあるはず。逆にベンツのオープンカーで走り去る謎めいた作家の妻アイリーンをひたすら走って追いかけるシーンは、確か村川透と松田優作の遊戯シリーズで引用していたっけ。

 来週になるとまた、ひとつ歳を重ねてしまう。春も近い。
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ハードボイルドな哀愁をウォッカと味わうヘルゲ・リエントリオ

2007年02月02日 | 音楽
 ノルウエーのピアニスト、ヘルゲ・リエントリオの「to the little radio」がいい。タイトル曲は亡命ドイツ人作曲家で、ハリウッドで映画音楽など手がけながら赤狩りで追放され、東ドイツに帰還して作曲活動を続けたハンス・アイスラーの曲。ウェイン・ショーター、トニー・ウィリアムス、フレディ・ハバート ? なんだかかつてのVSOPかな、カーラ・ブレイといったコンテンポラリーな面々の曲と、「amapola」とかコール・ポーターの「so in love」、ハンプトン・ホーズの「sonor」といった佳曲ぞろいなアルバムで、1曲目「grandfathers waltz 」でいきなりしびれてしまう。このエヴァンス好みなジャズワルツのほかは、ほとんどがスローで演奏され、冬の午後にじっくり聴くと、so in love になってしまうのだが、決してセンチメンタルではなく、ずるずるひきずらないハード・ボイルドな哀愁が心地いい。やはりショットグラスでウォッカをキュッとひっかけたくなるのだった。アルバムジャケットも素敵です。
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