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バーバラ・ローデン監督「WANDA」は傑作

2022年08月03日 | 映画

バーバラ・ローデン監督「ワンダ」(1970年作品)を、渋谷のシアター・イメージフォーラムで鑑賞。ローデン監督はあのエリア・カザンの23歳年下の妻で、本作は、主演と監督をバーバラが務め、処女作にして遺作という伝説的な映画。というのも38歳でこの映画を作りその10年後、癌で48歳にして亡くなってしまったからだ。
16ミリで撮影し35ミリスタンダードサイズでの上映。ざらついた画面とドキュメンタリー風の手持ちカメラの生々しさ、それでいて映画の骨法をわきまえた無駄のないショットと話法は、音楽を一切使わないだけに観るものに緊張感をもたらす。70年代といえばアメリカン・ニューシネマがもてはやされたが、この傑作の前では、お遊びに過ぎないと言わざるを得ない。
酒を飲む他、子育てや家庭生活になじめないペンシルベニアの炭鉱の主婦ワンダが離婚を機に、偶然飛び込んだ酒場にいた小悪党のデニスと行動を共にし、犯罪に手を染めていくというロードムービー。運転はできるかと聞かれて、なんとかなる的な答えをしたワンダのドライビングシーンはドキドキだ。助手席のデニスに向かって話しかけるワンダを助手席からとらえてショットに、お願いだからワンダ前を向いてくれと呟いてしまうのだった。ちなみにこの運転のシーンは「勝手にしやがれ」のミシェルの運転シーンを思い浮かべてしまう。

それにしても泥沼のベトナム戦争の最中、厭戦気分が高まってきた時代のはずだが、「ワンダ」では不気味なほどその気分が感じられないのだった。傑作です。

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