のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『プライス・コレクション展』2

2006-10-16 | 展覧会
10/15の続きでございます。

さて、さて!
イトーさん でございますよ!
四郎ではございませんよ!
若冲でございますよ!

本展はこのひとが主役と申してもさしつかえありますまい。
イトーさんと言えば誰もが思い浮かべるであろう、
あの画面から飛び出して来そうな鶏たちをはじめ
一筆入魂の感のある、シャープな水墨の鶴や
なんともとぼけた雰囲気で居並ぶ、布袋さんの伏見人形などなど
イトーさんの、並び無きセンスと技量が冴え渡る作品の数々とまみえることができます。

「日本画には興味が無いので、プライス・コレクションには行かなくてもいいや」と思っておいでの貴方、
貴方は間違っている。
イトーさんに、1300円お払いなさい。
決して損はございませんから。
それどころか、せっかく日本に暮らしているのに、イトーさんを見逃すようなことがあるならば
それは、貴方の人生における大きな損失でございます。
イトーさんの作品は、貴方の思っているような「日本画」ではございません。
例えば、ごらんなさいまし、この意匠化されたライチョウを。


Copyright:Etsuko&Joe Price Collection

アール・デコもウィーン分離派もかかってきなさい。

しかし、大胆にして奇抜な手法や、モチーフの料理法にのみ目を奪われてはなりません。
モチーフのひとつひとつ、鳥や植物や風景や架空の動物までも、
何と愛情のこもった筆で描かれていることか。
丹念に重ねられた、執拗な ひと筆 ひと筆 にせよ
息を溜めて一気呵成にひかれたであろう、大胆な ひと筆 の見事さは
単に忍耐や技術といったものだけではなく、
対象の生命をいつくしむ、イトーさんの愛情深いまなざしと
紙の上に下ろす ひと筆 ひと筆によって、その生命を紙上に再現しようという気概に支えられております。
それがあるからこそ、彼の絵は
あんなにも生き生きとした輝きを放っているのでございましょう。