”スローライフ滋賀” 

<ふるさとのたからもの> 受け継がれ500年超、原種「日野菜」(滋賀県日野町)

 滋賀県日野町には、地元農家が500年以上にわたって原種を守ってきた伝統野菜がある。
カブの仲間で、細長い根の赤紫と白のコントラストが鮮やかで、漬物は室町時代の天皇を喜ばせた「日野菜」だ。
 その名が示すとおり日野町が発祥で、室町時代に領主の蒲生貞秀が同町鎌掛(かいがけ)で野生菜を発見して持ち帰り、漬物にしたのが始まりとされる。漬物は天皇に献上され、称賛する和歌が贈られている。


↑写真:中日新聞より

 栽培は、日野菜に適した砂質土壌の鎌掛から日野商人らを通して滋賀県外にも広まり、品種改良されて現在の細長くまっすぐな形になった。大正時代以降、原種の種を採るため、「原種ほ場」が日野町内に設置され厳密な選抜審査をして、他産地と差別化を図ってきた。

 作業は、9月に種を撒き11月に生育したものから良いものを選び、根と葉の一部を切り捨てて別の苗床に移植する。
花が咲く頃は、日野菜と同じアブラナ科の仲間と交配を起こさないよう目を光らせ、見つけたらすべて引き抜く。種は6月に採り、JAグリーン近江日野菜生産部会員や町民限定で販売される。

 原種は、存続が危ぶまれた時期があった。高齢化や採算が合わないからと、種生産農家は次々とやめ、2004年までに日野町深山口(みやまぐち)の一軒だけに。その農家も病気から続けるのは困難だと知った地元の有志は、その年に「深山口日野菜原種組合」を設立。現在は50代から70代の10人が25アールの畑で原種を守る。


↑写真:中日より

 11月21日。組合員とその妻の16人が、2400本の苗の植え替え作業をした。前組合長の曽羽貢さんは「組合員は、原種を守るその一念で取り組み、絆も生まれた。原種は、独特の苦味がいい」と誇らしげに話した。

 種を採る農家同様、生産部会員も一時、8人に減ったが、滋賀県や日野町の支援により現在、65人まで増えた。8ヘクタールの畑で年間32トンを収穫し、日野町鎌掛にあるJAの農産物加工場で漬物にされ、JAの直売所やスーパー平和堂の一部店舗などで販売している。

↑写真:中日新聞より

 日野町内の桜谷小学校は、3年生が10年ほど前から学校農園で原種の日野菜を栽培。今年も11人が地元の生産農家の指導で9月下旬に種を撒き、苗の間引き作業や水やり、草取りなどをして11月に収穫した。直径2.5cm、長さ25cmほどの細長く伸びた日野菜を引き抜いた男子児童は、1本ずつ水洗いして根の赤紫と白色が際立つと、「日野菜のためならなんでもする。日野菜大好き」と声を上げた。
 収穫した日野菜の総重量は53kgと過去最高を記録。歓声を上げる児童を見つめながら、指導をした加納敬一郎さんは「児童は熱心に取り組み、最高の日野菜ができた。育てることを体験し、食べ物の大切さを学んだと思う」と目を細めた。
 
<中日新聞より>
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