最近、高齢者の運転による「事故が多発している」と報じられることが多い。そして、「ブレーキが効かなかつた」との主張がされることがあるとも報じられている。しかし、その言い分が通ったことは聞かない。鑑定の結果、「ブレーキに異常はなかった」と結論され、特に、高齢者であれば、勘違いによる「ペダルの踏み間違い」とされてしまう。
そして、高齢者はボケているのでという前提であろう。運転免許の返納を推奨されている。
統計によれば「~29歳までの若年層の事故率の方が大きい」のにである。高齢者の事故が多いのは、免許人口に占める高齢者の人数が多いために、事故も多いのである。事故率は、若年層の方が多いことは報道されない。報道は感覚的なことを報じていて、インチキである。
しかし、車のブレーキは完璧なのであろうか?
実は、数か月前、筆者の運転する車のブレーキが突然に効かなくなった。これは、同乗者も確認している。ブレーキペダルを踏むと、ペダルが「ストン」と下がってしまったのである。何回踏んでも「ストン」であった。しかし、それ以上に、何回も踏むと、僅かだけブレーキが効くことがあり、さらに、幸運なことに、
・速度が出ていなかったこと
・前車との間隔が広かったこと
・高速道路ではなく、一般道であったこと
で、一瞬は焦ったが、幸いにパニックにもならず、ギアをドライブから、一速に落とすことができ、同時にサイドブレーキを踏むことができた。(筆者の自動車は、骨董品ではあるが、オートマ車であり、また、サイドブレーキは足踏み式である。そして、走行距離は、たったの7.5万キロである)
そして、無事に停車させることができ、「冷汗はかいたが」事故にはならなかった。
加えて幸運なことに、故障したのが自宅の近くであった。
そして、後日、販売店に連絡して、自動車を持ちこんだところ、販売店の技術者もブレーキが効かないことを確認している。
後日、「修理が終わった」とのことで、受け取りに行ったのである。ここで、肝心なのは、と、言うか、恐ろしいのは、そのときの話である。
販売店の技術者が言うには、「いや~あれから、移動しようとしたら、確かにブレーキが効かなかった。これは、こちらでも確認しています。しかしその後、「自然に直っちゃったんですよ」とのこと。勿論、危ないので、当然に該当する部品は交換しておいた」とのこと。
自然に直ったのである。事故でもしていれば、筆者のペダルの踏み間違えとされたであろう。
ところで、筆者の乗っている自動車は相当な骨董品である。それを承知しているから、ちょっとした不具合でもすぐに修理を依頼している。そのため、骨董品の自動車の維持には随分な費用が掛かるのである。ところが、口の悪い人は「買えないのか?」などという人もいる。その一方、「いや~この車はイイですね~」などと褒めてくれる人もいる。そんな骨董品の自動車である。
しかし、ブレーキについては、自動車を買ったときの記憶によれば、「ブレーキは2重構造で、ブレーキが全く効かなくなることはない」と説明が書いてあったような記憶がある。「まさか」「まさか」である。
しかし、その二重構造は、ブレーキの油圧配管とブレーキシューの部分であり、大元の油圧を発生させる部分は二重ではないようである。いわば、ペダルを踏むと、水鉄砲のピストンのような部分を押して油圧を発生させている、その油圧発生の部分が、そのときだけ何かの拍子に異常になったのであろう。
もし、古いからこのような現象が生じるのであれば、車検などの時に、この部品の交換が決められている筈である。勿論、交換されているか否かは、筆者はその販売店に任せているので判らないが・・・。
そして、販売店の人が言うには、「ブレーキが効かなくなる故障が出た」ということは、「危ないですから買い替えた方が良いですよ」と、新車に買い替えることを勧められた。
勿論、費用ばかりがかかる骨董品から、新車にしたいのは勿論である。しかし、最近の自動車は、その形が、昔のものとは大きく異なっていて、長年、乗り慣れた自動車の形と余りに異なるため、運転感覚が掴めないのである。「同じ形のものがあれば、すぐにでも買い替えたい」ところである。しかし、無いのである。今、骨董品となっている自動車を買ったときは、その前に乗っていたものと、ほぼ同じ形のものがあったので、簡単に買い替えることができたのであるが・・・困った。
これから、なるべく同じ運転感覚を持てそうなものを真剣に探す積りではあるが・・・。
さて、冒頭に書いたように、ブレーキが効かなくなったとき、もし、大事故にでもなっていれば、「また、高齢者の事故」、「ブレーキが効かなかったと言い訳」として、報道されていたであろう。ましてや、後に「自然に直っている」のである。恐らく、鑑定結果は、「ブレーキは正常であった」とされてしまうであろう。そう考えると、今回のことは、「単純に運が良かった」だけで、「ゾッ!」とする出来事であった。
多くの事故があるなか、自動車の部品が全て常に正常に動作しているとは思えない。その結果の事故もある筈である。しかし、原因は「高齢者のボケ」がペダルを踏み間違えたとされてしまうのであろう。恐ろしいことである。
機械は故障する。どんなに正しく作られていても、偶然の故障は生じるものである。ましてや、自動車の部品は、温度や湿度、振動といった、劣悪な環境で動作させているものでもあり、加えて、徹底したコストダウンを求められているものである。数多くの中には、故障するものもある筈である。そのような偶然はあって当然であり、皆無と考えてしまうことが、間違いなのである。
そのようなことで、「高齢者の運転だから」と安易に運転のミスとして片付けるのは不当である。中には、自動車の故障に起因する事故もある筈である。
「ブレーキが突然に効かなくなり」、「自然に直ってしまった」ということは、どんな安全装置・・・例えば、自動ブレーキのシステムを搭載していても止まれないであろう。
このような出来事を経験した後、高速道路で速度を上げるのが怖くなった。尤も、筆者は、元々、高速道路では「最低制限速度違反」にならない程度の速度でしか走らないが・・・。しかし、骨董品の自動車のお蔭か? 「あおり」をされたことは殆どない。後続車には、さっさと先を譲っている。
なお、筆者は、新しいか古いかではなく、機械は当然にこのような故障も発生するものであると考えている。多発していれば話は別であるが、この記事を書いたのは、「そのようなこともある」とのことを知ってもらいたいのである。「機械は故障する」との前提で、そのときでも対処が可能なように、速度は抑え目の運転が安全のためには必要であろう。
なお、最近は、センサを多用した安全装置が流行っているが、センサが劣化したときの安全策は取られているのか、例えば、故障によって、意図しない急ブレーキなどが無いのかが少し心配である。
それと、燃費にばかり目がいって、デザインがされたものが多いように感じる。また、運転のしやすさについて、運転支援システムが複雑化すれば、却って危険なようにも感じるところである。いかがであろうか?
了