5月23日 亀の日・ラブレターの日…ナナオ サカキ (2015)
懇意の吟遊詩人 故 ナナオ サカキ さんから「亀の島」の話を折々に聞いていた。タスマニアやイタリアの火山や国内の辺境を経て金沢のグリーンノートに滞在する度、友人達と囲炉裏を囲み、ランプの下でナナオ(以下親愛を込めナナオと書く)のポエトリーリーディングを行った。
「亀の日」と知って、詩と説話集「亀の島(Turtle Island)」、星と心の宇宙詩「ラブレター」が脳裏をよぎる♪
亀のようにゆっくりじっくり私達の惑星を歩き産まれた詩だ。
ラブ レター(ナナオ サカキ)
半径 1mの円があれば
人は 座り 祈り 歌うよ
半径 10mの小屋があれば
雨のどか 夢まどか
半径 100mの平地があれば
人は 稲を植え 山羊を飼うよ
半径 1kmの谷があれば
薪と 水と 山菜と 紅天狗茸
半径 10kmの森があれば
狸 鷹 蝮 ルリタテハが来て遊ぶ
半径 100km
みすず刈る 信濃の国に 人住むとかや
半径 1000km
夏には歩く サンゴの海
冬は 流氷のオホーツク
半径 1万km
地球のどこかを 歩いているよ
半径 10万km
流星の海を 歩いているよ
半径 100万km
菜の花や 月は東に 日は西に
半径 100億km
太陽系マンダラを 昨日のように通りすぎ
半径 1万光年
銀河系宇宙は 春の花 いまさかりなり
半径 100万光年
アンドロメダ星雲は 桜吹雪に溶けてゆく
半径 100億光年
時間と 空間と すべての思い 燃えつきるところ
そこで また
人は 座り 祈り 歌うよ
人は 座り 祈り 歌うよ
1976 春
(ナナオ サカキ詩集『犬も歩けば』野草社)
●ナナオサカキ ポエトリーリーディング記事:http://www14.plala.or.jp/greennote/2006claytone.htm
★“ラブレター”朗読 YouTube:https://youtu.be/zjnB5f9-lNE
●この惑星(ほし)・世紀を越える旅人“ななお さかき” 記事:http://konohoshi.jp/special/nanao/interview01.html
ナナオ サカキ(ななお さかき・榊 七夫)とは、1992年12月23日(水・祝) 高岡市の雑草庵で開かれた 詩の朗読会で出会った。
会の後に懇談し、帆掛け船で太平洋に出たときの赤道無風帯で見た平均水深4.000mの海面を滑る体長6ミリほどの アメンボウ に感動した話にはことさら興味を持たれた。
たちまち気脈が通じ、翌年(1993)元旦の早朝 能登の七尾湾を共に「ほうき星」(自作7m帆走ヨット)で走り、初日の出を拝しつつ船上で 70才のバースデーを祝った。
以来 石川県に来ると先ず グリーンノート に滞在した。
ナナオの横で何度も聞いた彼の朗読の太く胸に響くいのちの声は今も腹の底に響きわたる。まさに「声の詩人」とも云える♪
ナナオが世界各地を歩いた足跡は様々に残っているだろう。それと別に「土の音工房」の土には、ナナオが実際に足跡をつけてくれ、随一の足跡の陶板として保存。大きなリュックを背負って軽々と歩くナナオの足音が聴こえるようだ♪
ことほどさように、ナナオの「声の詩」は、今も脳裏を古来する。
◆詩と説話集「亀の島(Turtle Island)」対訳(ゲーリー・スナイダー著、ナナオ サカキ訳 山口書店)
…「亀の島」とは北米大陸のことであり、多くのインディアン部族はこの大陸を亀の背に乗っている島だと考えていた。この「亀の島」に関する神話・伝説は数多く存在しているが、本書のゲーリー・スナイダーはこのインディアン並びに禅に共通して横たわっている視点を取り戻すことこそ未来を創造できるかどうかの試金石だと語る。
日本で禅の修業をし、環境問題と先住民問題に密接に関わってきた著者が世に問うた本書には、詩と説話が収められているが、その中の多くは実に美しい響きを奏でており、インディアンなど先住民に共通する魂が著者にも宿っていると感じられてならない。1975年 ピューリッツア賞(詩部門)受賞作品。