遅れましたが、明けましておめでとうございます。というわけで、今回はひばり書房のヒットコミックス
「わたしの赤ちゃん」に収録された「元日の朝」と「まりつき少女」の紹介です。以前にも書いたようにこの本は私が初めて購入した日野日出志作品なのですが、ちょうど年末年始の時期だったので上記画像の「元日の朝」が異様なリアリティを放っておりました。
この「元日の朝」はなぜかナレーションベースで展開しており、ほとんど小説を読んでいるようなのが特徴です。主人公の少年(ケン一)は元日の朝に目を覚ましたけれど、家族がどこにもいません。たった今、皆がここにいたような雰囲気はあるのですが、なぜか見当たらないのです。とりあえず少年は凧上げをするために河原に向かったのですが、町には誰もいません。河原に近づくと凧が上がっているのでほっとしていると、なんと河原にも誰もおらず、凧だけが上がっているのです。
家に逃げ帰ろうとした少年は死神のような一団に「お前の命は今日で終りだよ………!!」と宣言されてしまいます。そして家の前で少年はカラスに出くわすのですが、カラスが鳴き声を発した瞬間に…。
空間に入った亀裂が少年に襲いかかるのでした。この作品はホラー描写も少なく、ストーリー的にも意味不明な点が多く、絵柄もどこかすさんでおり、日野日出志作品の中では重要なものではないのかもしれません。けれども、それだけにどうにも不安定な雰囲気が印象的で、妙に記憶に残る作品です。私が読んだ時期の影響なのかもしれませんが…。
「まりつき少女」は数十年前の山奥の村が舞台の怪奇檀。始めはほのぼのした展開ですが、中盤の昔話でまりつき童女が処刑されるあたりから人の首がたくさん飛ぶようになります。そしてインパクト絶大なのが下のコマ。
この後、まりつき少女の首も飛び、次の代のまりつき少女が生まれるというスパイラルに。まりつき童女の怨念がまりに取り憑き(まり憑き?)、まりつき少女をあやつっていることがわかる終盤のシーンは恐ろしくもあり、おかしくもあり、悲しくもあります。
以上2作品が掲載されている本には最恐の
「赤い花」もあって、余計にこれら2作品の存在感が小さく感じられますが、どの作品もちょっと異なる恐怖ポイントを持っているのでなかなかバラエティに富んだ作品群と言えるでしょう(あと2作収録)。
日野日出志作品紹介のインデックス