1988年に発売されたアーケード版の『グラディウスII -GOFERの野望-』は、派手だけどシャープな映像と音楽で注目され、絶妙なゲームバランスで多くのプレイヤーを唸らせた名作中の名作です。1978年のスペースインベーダー以来のアーケードシューティングブームの頂点と言えるかもしれません。そんなアーケード版をそれなりにやりこんだ私ですが、同年に発売されたファミコン版につていはリアルタイムでプレイしておりません。確か90年代前半に友人の家でプレイしたのではないかと思われます。
当時の私にとってはとにかくゲームをクリアすることが重要であり、ゲーム自体をゆっくり味わうことをあまりしていなかったような気がします(まあ友人の持ち物だったし)。で、割とすんなりクリアすることができたので、その時はそれだけで満足してしまい印象に残っていませんでした。
その後、友人が7周だか8周だかクリアしたと言いまして、「よーやるわ」と思いつつも「友人がそこまでやり込むほどのゲームをもう少し味わっておけば良かった」とも感じておりました。
そして先日、1000円台で売っていたのを見て即購入。プレイしてみるとオプションは4つ装備できるし、画面の動きも冒頭からしてファミコンとは思えないほど豪快なものでした。
ところが豪快すぎて、なぜか1面がクリアできませんでした。グラIIの1面前半はアーケード版と同様に人工太陽からドラゴンが現れるという仕掛けですが、後半は沙羅曼蛇のようにプロミネンスが画面狭しと渦巻くエリアで、そこでやられてばかりおりました。
そんなこともあってちょっと寝かせていましたが、3連休に嫁が女子会で旅行に行ったのをきっかけにシューティングエナジーを練り上げて腰を落ち着けて挑戦してみました。装備はアーケード版で使い慣れた4番装備、2WAYミサイルとリップルレーザーの死角のない組み合わせで再チャレンジ。
プロミネンス地帯で何度かやられましたが、パターンをきっちり覚えたら見違えるように安定。巨大なフェニックスもさくっとクリア。ここでようやく勢いに乗ることができました。
2面もアーケード版と同じくエイリアンステージ。触手を破壊できるのはナイスアレンジ! また、1面前半同様に画面上下に広がりがあり、自機の移動に合わせて縦スクロールします。そういえば画面左端でBGを書き換えているのが見られます。つまり、本作はプログラム的には縦スクロールとして作成されている、ということです。同様の技法は
『スターフォース』でもありましたが、自機の移動に合わせた臨機応変な縦スクロールをハードウェアに処理させる、というものだと考えられます。
そしてボスのビッグアイを倒した、と思いきやオリジナルボス「ギーガ」が登場。ファミコン版沙羅曼蛇にも出てきたボスですが、友人との間で「ガイコツのボス」としてネタにしていたことを思い出しました。そんな見た目のインパクトとごんぶとレーザーに感心しながらクリア。
3面は火山地帯で、アーケード版の4面に相当するステージ。この火山の表現や動作も並のファミコンソフト離れしていますが、さすがにアーケード版3面のクリスタルは再現無理だろうな、と思っていると・・・。
3面後半にしっかり再現されていました! この展開は、アーケード版の凄さとファミコンの限界(とされるもの)の両者を知っている人向けのマニアックな演出だったのかもしれません。
このクリスタル地帯はアーケード版では復活が難しい場面であったのですが、ファミコン版では頑張れば誰にでも復活できるような難易度です。ここに限らず、全体的に難易度は抑えてあり、どこでミスしても復活できるように念入りに調整されていると感じます。したがってミスしてもやる気がなくなるようなことはなかったのでした。
4面は順番通りモアイステージで、音楽もアーケード版と同じ。ゲーム全体では音楽の半数以上はファミコン版オリジナル。ノリのいいアーケード版とは異なり、やや哀愁を帯びた曲が多いのがコナミの家庭用ゲーム音楽の特徴でしょう。
5面はボスラッシュ。ビッグコアも名前通りビッグになっております。写真のテトランの腕の動きもファミコンとは思えない出来。とにかく多関節キャラの動きに執念を感じます。
6面は要塞内部。中盤でアーケード版6面の高速ステージが挿入されていることに唸らされます。最後に待つのはおなじみ6本足のクラブですが、これまでは足の間でイライラ棒のように避けることしかできませんでしたが、ついに破壊できるようになりました! しかも破壊した時になぜか100万点以上入ることもあって謎でしたが、ネットで調べてみると破壊時に残骸に打ち込んだ分だけスコアが入って残機も増える、ということのようです。これはバグである可能性が濃厚ではありますが、うまくやれば30機ほど一気に増えるので、高次周でミスしてもなんとか復活してやろうという意欲が湧いてくるのです。実際に何周しても復活できるように調整されており、その度に本作の懐の深さを感じることができました。だからこれはバグではなくて、サプライズ的な仕様であると私は信じております。
7面はオリジナルの細胞ステージ。沙羅曼蛇の1面のように地形が盛り上がったりします。ボスはもちろんGOFERですが、弱点が血管から目に変更されており、さらに口から攻撃するようになっています。それにしても見事な書き込みです。
GOFERを倒して無事脱出。エンディングの曲はアーケード版のロングバージョン。アーケード版を越えようという意気込みすら感じます。そして次の周へ。
そうやって延々とチャレンジしているうちに、10周目のクラブを破壊した時点で1000万点を達成しました。上の写真ではスコアが0121010となっていますが、実際は10121010点であり、ハイスコアの表示はカウンターストップしています。まあ今回のプレイはレトロフリークでのものであり、連射は完備しているしプレイ中断もできるので、実機で1000万点出すよりははるかにハードルが下がっていることでしょう。もちろん、ミスしたからって途中経過をロードしてやり直しなんてことはしてませんけど。
1000万点出したしこれで満足、というわけにはいきません。上記のプレイはアーケード版では最強の4番装備だったので、他の装備でも1周ずつクリア。
1番と3番の装備はダブルを使えばほぼ同様の感覚でプレイ可能で、4番装備との差もそれほどありませんでした。ところが2番装備はレーザー+スプレッドボムという高威力の組み合わせで、これが新鮮な感覚で爽快でした。ただし上に攻撃することができないので地形にぶつからないように注意する必要があります。また、オプション4つ装備した後にさらにオプションのパワーアップをすると、数十秒ほど自機の周りをオプションが回転します(ローリングオプション)。他の装備では全く使いませんでしたが、2番装備では上への攻撃がしやすくなるのでうまく使うとさらに面白くなります。
ここまで丸一日プレイしてみて、とにかく映像も音楽もファミコンの常識を超越していることをようやく実感することができました。画面はチラツキが多く、それで何度かミスすることもありました。それでもそんなチラツキは些細なことであると思わせるほどの迫力があり、丁寧に調整されたゲームバランスがありました。それだけに、どれだけミスしても楽しくプレイし続けることができたのです(残機の増加もあったし)。
さらに言えば、本作ではプログラムテクニックによって「ちらついていいものは、あえてちらつかせてスプライト表示数をやりくりしよう」という方針がとられているようです。例えば自機のミサイル、レーザー、フォースフィールドなどは常に点滅していて、同一のスプライトの表示を瞬間ごとに切り替えていると推定されます。こうやって表示数を稼ぐと同時に、「レーザーの表現として点滅していても違和感がない」という計算もなされており、そのセンスの良さを感じずにはいられません。
というわけでファミコン版グラディウスII、あまりにも凄い作品でありました。何周もクリアするほどやり込んだ友人の気持ちをようやく理解することができたのでした。当時、通り一遍クリアしただけで満足した自分にアホウと言ってやりたい!