ゲーム音楽の中で最も偉大なものは? という問いがあったならば、私は
「ダライアスのメインテーマ『Chaos』である」と答えるでしょう。
そこにはノリの良いリズムも、キャッチーなメロディも、耳に心地よいコード進行もありません。轟音と静寂の交錯、不安定な変拍子、楽曲というよりは音響という趣で、聴き手に媚びずに圧倒してきます。そして、吹き荒れるエネルギー、虚無の空間、そこに潜む巨大な生命体の影、などを聴き取ることができるでしょう。これがまさにダライアスのイメージであり、ダライアスという存在自体であると言っても言い過ぎではありません。
ダライアスが発売された1987年当時はPCM音源の普及によってゲーム音楽が大きく進化し始める時期です。その時にすでに、というよりはその時だからこそ、究極とも言える作品が生まれたに違いありません。
前置きが長くなりましたが、ゲームボーイで発売された本作『サーガイア』はダライアスのアレンジ移植です。サーガイアというのはダライアスIIの海外版の名前です。本作の最大の特徴は、ダライアスの音楽が驚異のレベルで再現されていることです。サウンドディレクターとしてダライアスのOGR氏こと小倉久佳氏みずから参加しており、少ない発声数ではありますが、それゆえに曲の骨格がよく見えるという価値もあるでしょう。上記のメインテーマ『Chaos』を再現するのは困難であったでしょうが、矩形波のピコピコサウンドが逆に宇宙との交信を思わせ、これはこれで面白い作品になっています。もちろん緻密な音作りを可能にした高性能なサウンドドライバーの功績も大きいでしょう。
さてゲームとしては純粋に初代ダライアスの延長にあります。初代において、敵の攻撃はある決まったパターンが繰り返されるという大雑把なものでした。初代は横3画面を持つ巨大なスクリーンが特徴でしたから、あまりに作り込まれた攻撃パターンだとこじんまりとした印象となるかもしれず、大雑把であることに不満を感じることはありませんでした。本作ではもちろん横1画面ですが、大雑把さがダライアスらしさと手頃な難易度に結びついており、ついつい何度もクリアしたくなります。
ちなみに画面の上下は1画面以上あって、自機の動きに合わせて上下に若干スクロールします。ひょっとしたら本作は
シリーズで最も画面が縦に長いダライアスかもしれません。画面はモノクロ4階調ですが、背景が細かくアニメーションしている部分もあって、世界の奥行きを感じさせます。
主に初代から参戦しているボスたちも見事な描き込みです。攻撃はコンパクトになっていますが、巨大な雰囲気は残っています。さらに、ボス戦では本作ならではの特徴を強く味わえます。初代においてパワーアップしてレーザーやウェーブ装備になるとボスを貫通してしまうため、それらが画面外に消えるまで次を発射することができませんでした。本作ではレーザーもウェーブも耐久力のある敵を貫通しないため、ボスに接近したら超連射でガリガリとダメージを与えることができてなかなか爽快。ウェーブは地形も貫通しなくなりましたが、発射後に上下に当たり判定が若干拡大するため、地形の陰に隠れた砲台を狙えるようになり、テクニカルなプレイができるようになりました。一方、ボムは4方向のマルチボムは弾切れが激しくなり、2方向のツインボムの方が使い勝手はいいかもしれません。とはいってもマルチボムに助けられる場面も多く、一概にどちらが強いかは言えません。
難易度の低さに関しては上記の大雑把さの他に、その場復活であること、残機が結構増えやすいことなどが挙げられます。残機の増加については、1UPアイテムがいくつも仕込まれていて、ノーミスだとクリア時には10機以上残っていることでしょう。
オリジナルボスは2体。上の写真はそのうち1体のマンボウ。なかなかのでかさとデザインです。また、シリーズには珍しくボスラッシュステージがあります。全8面で、そのうち4面と8面はボスラッシュ。4面では1〜3面のボスがパワーアップして登場した後に4面のボス戦、8面は5〜7面のパワーアップボスの後に最終ボス戦となります。
最終ボスはもちろんクジラですが、本作ではある程度ダメージを与えると攻撃パターンが変わるという2段がまえになっているのが新鮮。ボスの攻撃パターンの変化はダライアスIIから広く実装されるようになったもので、初代では3面ボスのザリガニに片鱗が見られるのみでした。
クジラを倒すとエンディングで、難易度によって一枚絵が変化します。難易度EASYだと女性パイロット(ティアット?)。
難易度NORMALだと男性パイロット(プロコ?)。
難易度HARDでシルバーホークです。スタッフロールには小倉久佳氏がクレジットされています。
私の初プレイは難易度NORMALでいきなりノーコンティニュークリアでした。その後EASYでもクリア。HARDでは何回かやり直したけどすぐにノーコンティニュークリアできました。特にシリーズに慣れている必要もないと思われまして、誰でもちょっと練習すればクリアは簡単でしょう。1プレイは意外と長いですが、何度でも通しプレイしたくなるような「撃つ手応え」のある作品でありました。