古代エジプトの研究で有名な
早稲田大学の吉村作治教授が企画・原作・製作総指揮を務めたのがプレイステーションの「ツタンカーメンの謎 アンク」です。PCソフト「アンク2」の移植とのことで、それなりに人気があったようです。私は本作を中古ソフト屋で購入したのですが、ケース内に入っていたオビを当ててみると…。
デザインがずれています。「ANKH」の「A」の半分がオビにも印刷されちゃっています。これはどうもCDケースの蝶つがい部分を考慮していなかったためのようです。クソゲー・バカゲー好きの私が当時これの新品を店頭で見ていたとしたら、このオビを見ただけで買っていたかもしれません。
さて本作はいたって普通のPC的アドベンチャーゲームです。移動し、画像の中の物品をクリックし、アイテムを使っていくタイプのものです。目的は自分とツタンカーメンとの繋がりを明らかにすること。なぜか吉村教授も全面的にバックアップしてくれます。
ホルス神やアヌビス神やらが出てくるオープニングを釈然としないまま見終わると、ホテルの一室からゲームはスタートします。アイテムを取得してチェックしたり音が鳴ったらそちらを対応したりしているうちにとりあえずの目的がわかって、カイロの街に出ることになります。ちなみにこのゲームには
「禁断の書」(という二つ折りの紙ペラ一枚)が入っていて、どんな謎の核心が書いてあるかと思ったら、このホテルでの進め方のヒントが書いてあるだけでした。
カイロの街に出ると、周囲360度をぐるりと見渡せるGoogleストリートビューのような移動画面になります。なかなか臨場感があるのですが、地図と照合して自分がどちらを向いているかよくわかりません。コンパスもあるにはありますが、どうも自分がやって来た方向からの相対的な方向が表示されているようです。カーソルが矢印型に変化すると、そちらの方向に移動することができます。移動するとカイロの街並を移動するムービーが流れます。それも行きと帰りで当然違う映像でかなり雰囲気があります。旅行気分に浸ることができ、
本作の最大のウリはこの移動ムービーでしょう。
カイロ市内をウロウロしていると、観光ガイドをしてやろうという人が何人も現れます。その割にはみんな「また後で返事くれ」のようなことを言っており、いかにもフラグゲー的なスメルがプンプン…。占い師に会ってみると、誰かを共にしろとのお言葉。観光ガイド立候補者の一人である古物商のオヤジはバックレてしまいましたが、カイロタワーのお姉さんにガイドを頼むことにしました。
吉村教授のお使いのためにカイロ博物館に行ってみると、受け取るはずの重要書類が誰か他の人物の手に渡ってしまったことが明らかに。そういえば、私を妨害する勢力があると誰かが言っていました。とにかくそいつを追って博物館二階に上がってみると、ツタンカーメンの黄金のマスクが展示されています! ところが連れのお姉さんは…。
やけに低いテンション。普通のガイドなら一番張り切って展示物を説明する場面でしょうに。まさかこのお姉さんも私を妨害する一味なのか? そして書類は諦めて博物館を出ると…。
やっぱりお前も敵だろ! かといってシステム上はお姉さんと別れることはできず、二人で「王家の谷」のあるルクソールに向かうことになります。ルクソールへの移動は電車でも船でも好みの乗り物でどうぞ。ここでディスク2へチェンジですが、手順を知っている場合はここまでで15分くらい、知らなくても1時間程度でしょう。早っ!!
どうでもいいですが、本作ではディスク2をプレイする時間が長くなると思われますが、ディスク1から起動しなければならないのが煩わしいのです。うっかりディスク2をいれたまま起動すると…。
デフォルメ化したツタンカーメンがペコペコとお辞儀をする画像が出て腰砕けになります。ディスク2からも起動できるようにして欲しかったですが、容量がギリギリだったのでしょうか…。
ルクソールにやって来ると、お姉さんは「吉村教授に果物でも買っていこう」と提案してきます。ミニゲームをこなしながらお土産やアイテムを集め、カルナック神殿でキーアイテムを入手します。カルナック神殿と言えば、私は「
西暦1999 ファラオの復活」でも来たことがありました。
古代エジプトとバカゲーは親和性があるのでしょうか?
その後、船に乗ってナイル川西岸にやってきます。ルクソールでは交差点での移動可能方向が近接しているところが何カ所もあって、注意深くカーソルを見る必要があるでしょう。西岸ではまず発掘現場にいる吉村教授を訪ねることになります。吉村教授を見つけ、お土産のぶどうを渡すと、嬉々として古代エジプトにおけるぶどうの意味を延々と語ってくださいます。うっかりお土産にタバコでも渡そうものなら、あからさまに不機嫌になって説教されることになりますが…。会話の中では、
「スポンサーに頭下げなきゃならないし…」などと教授が愚痴っているのがリアルです。
教授から最新鋭の通信ガイド装置を渡されると、その後は遺跡めぐりをすることになります。各所の遺跡に近づくと、渡された通信ガイド装置がピーピーと耳障りな音を発し、さあ聞け早く聞け今すぐ聞けとばかりに急かしてきます。ガイドを聞いてみると、吉村教授がそれぞれの遺跡について語り始めますが、人名やら何やらをたんと並べて何を言っているのかよくわかりません。それと、
教授がいちいち「ツタンカーメン」と言ってから「トゥートゥ・アンク・アメン」と言い直すのにちょっとばかりイラっとします。
遺跡を巡っていると、同行していたお姉さんがいきなり襲ってきました。敵だというのはわかりきってはいましたけどね。超常的な力が働いてお姉さんがシビレている間に逃げてしまいます。その後、カイロの街でバックレた古物商のオヤジが某所に現れます。ここまでくるとゲームは終盤です。とにかくセーブしておきましょう。この先はセーブできませんので。
オヤジを連れて行くと、今まで通れなかったところが通行可能になっています。先に進んだところでアイテムを使うと、再び超常現象が起こりますが、それを待っていたかのようにお姉さんと別のガイド立候補者が武器を持って襲ってきました!
ところがその超常アイテムの力でお二人さんは勝手に自滅してしまいます。お姉さん……。
画面右下のオヤジが古物商で、その正体はヒミツ。さらに進んでアイテムを使うと、いきなり発掘人の頭だという人物が現れます。聞いてないし、頼んでないし、それでいて金は取るしでかなり強引です。
このシーンは(唯一の?)ゲームオーバーがある部分なので、アイテムに込められた手がかりから正しい場所を発掘しなければなりません。3回間違うとゲームオーバーですが、謎が解けなくても何回かトライしたらすぐに当たるでしょう。その後のヒエログリフ合わせもいきなりで途方に暮れるかもしれませんが、手持ちのコンピュータの中に答えが書いてあるので大丈夫。そして最後のアイテム群を順番に置いていくとクリアです!
エンディングではプレイヤーの正体が明かされます。吉村教授から受け取った時計がちょっとシャレた演出になっていました。全体として短かったけど、エジプトの街の雰囲気を想像以上に味わうことができました。謎解きもそれほど難しい場所はありませんでしたが、必要な手持ちの資料を書き写しておくとさらに楽になるでしょう。あとナイル川の水も忘れずに汲んでおきましょう。
別の大作ゲームの合間にプレイすると、さらっとクリアできて後味も悪くなく、いい気分転換になるかもしれません。極めて真面目に作られていますが、結果的にバカゲーになっており、そんなギャップも魅力かもしれません。
このゲームの売り上げは古代エジプトの遺跡発掘に貢献したのでしょうか。そうだとしたら、それもちょっとしたロマンです。
私は中古で買ったから、全く足しになっていないでしょうけど。