シャルル=ヴァランタン・アルカン:
・すべての長調と短調による25の前奏曲 作品31より 第1, 13, 17, 25番
・即興曲集 作品32より 第1, 3番
・鉄道 作品27
・すべての長調による12の練習曲 作品35より 第6, 8, 12番
・葬送行進曲 作品39 第5番
・48のエスキース 作品63より 第1~5, 8, 10, 13, 16, 18, 21, 32, 38, 43, 48番
・悪魔的スケルツォ 作品39 第3番
ピアノ:ローラン・マルタン、ベルナール・リンガイセン
NAXOS: 8.553434
ポーランドのショパンと同年代で親友同士でもあったのがフランスのアルカン。作品はほぼピアノ曲であったのもショパンと共通しています。私はアルカンの作品をこのディスクでしか知りませんが、聴いてみた感じでは、その作風は技巧的でありながら機知に富み、ショパンよりも外向きで、いくらか日常的・家庭的と言う印象。
代表作は『鉄道』で、下の動画を見ればわかる通りに極めて技巧的ですが、その技巧無くしては醸成されなかったポエジーを感じます。
いきなり鉄道が全力疾走です。左手の低音部がガタンゴトンという機械音をあらわし、めまぐるしく動く右手の旋律からは流れる風景が見えるようです。時には田園地帯などを通りながら終着駅で停車するまでの気分の変化も聴いて取れます。それにしてもこの演奏者もすごいですね。
このディスクではいくつかの曲集からの抜粋で構成されていますが、技巧的な一面からさらに一歩踏み込んで、当時としては斬新な響きであったろうと思われます。そしてそれが何らかの気分や感覚を伴っているのが凄いところ。
こちらの動画は『エスキース(草案)』の第10番。音源はこのディスクのものと同じと思われます。この曲では冒頭などでトーンクラスターのような効果も編み出されています(トーンクラスターについては
こちら)。他の曲でも5拍子(5連符かな?)の奇妙なものが複数あって、全体として知性によるヒネった音楽ではありますが、その影には健康的な歌心があるために聴きやすいでしょう。
このアルカンの死因として、本棚の上のユダヤ教典を取ろうとしたところ倒れてきた本棚の下敷きになった、という話が伝わっています。この真偽はともかく、変人であったのは間違いないようですね。
そういえば、鉄道をモチーフにした音楽には
オネゲルの『パシフィック231』がありました。こちらもフランスで活躍した人で(オネゲル自身はスイス人)、このあたりは内向的なドイツ音楽とは違うお国柄です。
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