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大学生だった息子の16年前の不可解な死の謎を追う母、息子の親友だった夫婦、不倫の恋に溺れる20歳の女性、そして、謎の朝鮮白磁を発見した若き大学講師と陶芸界の黒幕の老人。古都金沢を舞台に、大学生の謎の死と白磁の正体をめぐって驚くべき物語が展開する。恋愛小説とミステリが融合する、傑作エンタテインメント長篇。(Amazon内容紹介より)
=例会レポ=
今回の例会で、推薦者はいい教訓を得ました。
「本編を読まずに、キャッチコピーや宣伝文だけで推薦するのは失敗のもと」
まあ、推薦にあたっては、当たり前といえば当たり前のことですけど……。
おもしろ本棚史上最低の評価を得た本作。記憶にある限りでは、シベリア抑留をテーマにした江戸川乱歩賞受賞作以来のものでした。
「構成が破綻している」
「恋愛小説、ミステリ、いずれも中途半端」
「人物描写が不十分」
「遺書=独白ですべてをすませるラストはいかがなものか」
「朝鮮白磁についての薀蓄でも披露されていたら救われたかもしれない」
などなど。
極めつきは、講師から……。
「作品として成り立っていない。最大の欠点は、雅代と圭介母子のエピソードが描かれていないことと、圭介・柿沼・涼子三人の青春時代のエピソードが描かれていないこと」
「準備不足で、掲載誌に書き流している。作者は晩節を汚した」
推薦者も何か褒めるところはないかと、それを探すことに腐心しましたが、どうもうまく行きませんでした(苦肉の策で作者の美貌を褒めてお茶を濁しました)。そうした努力のなかで思い出したのが、映画評論家の淀川長治さんのエピソード。
淀川さんは常々、「どの映画にも見どころはある」と言い続け、どんなクソのような映画、フィルムの無駄使いのような映画でも酷評するだけでなく、いいところを伝えようとしてくれました(その映画と直接関係ない話題も含めて)。まさに、映画に愛され、映画を愛し続けた淀川さんだからこそのエピソードでしょう。「映画」を「小説」に代えてみたとしても、やはり凡人にはなかなかできることではないと思った次第です。
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