和歌山市で3日、水道用の橋が崩落し市内の4割近くにあたるおよそ6万戸で今も断水が続いています。和歌山市は6日午前10時から近くの橋に水道管をう回させる応急的な復旧工事を始めることにしています。
3日、和歌山市の「紀の川」にかかる「水管橋」と呼ばれる送水用の橋の一部が崩落しました。
この橋は紀の川の南側にある浄水場から北側に水道水を送る唯一の供給路で、和歌山市の北部では市内の4割近くにあたるおよそ6万戸で今も断水が続いています。
断水した地域には近隣の自治体や自衛隊などから給水車が派遣され、5日も人工透析の患者を受け入れている病院や小学校で給水が行われています。
和歌山市は近くの県道の橋に仮の水道管を設置してう回させる方法で応急的に復旧させることにしていて、6日午前10時から県道の橋を通行止めにして工事を始める予定です。
工事が順調に進めば10月8日の深夜から順次、断水している住宅などへの送水を再開し、10月9日早朝には全域での断水解消を目指すことにしています。
専門家「つり部材劣化が崩落の引き金か」
和歌山市で起きた水道用の橋の崩落について、市は現時点で原因は分からないとしていますが、崩落の瞬間の映像を見た専門家は水道管をつっている部材が劣化し崩落の引き金になった可能性を指摘しています。
地震工学が専門で、ライフラインの被害などに詳しい神戸大学大学院工学研究科の鍬田泰子准教授は「橋のアーチ部分の水道管をつっている部材が風などの影響で劣化して破断したことが、崩落の引き金になっていると思う。1つの部材の破断によって構造物全体の荷重のバランスが崩れ全体の崩落に至ったのではないか」と指摘しています。
そのうえで「一般的に水管橋は人があがって点検するのが難しく、水道管そのものの漏水チェックにとどまりやすい。ほかの水管橋でも起こりうることで今回の崩落をきっかけに水道管だけではなく橋全体の構造が機能しているか点検を行い、耐震と劣化の双方に対する補強を行っていくことが重要だ」と話しています。
崩落した「六十谷水管橋」とは
和歌山市によりますと今回、一部が崩落した「六十谷水管橋」は昭和50年3月に設置された全長546メートルの水管橋です。
和歌山市の「紀の川」より北側の地域のおよそ6万戸、13万8000人ほどへの水道水の供給はほぼすべてこの水管橋を通じて行われます。
水管橋には直径およそ90センチの水道管2本が通っていましたが、いずれも橋の中央付近で59メートルにわたって崩落したということです。
市によりますと、水管橋は再来年に法律で定められた耐用年数の48年を迎えるということです。
平成27年から翌年にかけて落下を防止する耐震補強の工事が行われたほか、9月までの月1度の目視点検では異常は確認されていなかったということです。