くもり のち あめ

うしろ向き、うしろ向き、たまに、まえ向き。

本番

2009-05-26 15:41:35 | アコースティックギター


友人の結婚式が終わった。

披露宴での演奏、やばかった。

一番最初とは聞いていたが、
披露宴開始から30分後とは。

乾杯 → 談笑 → ケーキ入刀 → 余興
というタイムスケジュールだったので、
オードブルに手を付ける余裕もなく、
勢いをつけるべくビールをガブガブ飲み、
乾杯の後すぐにロビーに出て、ギターのチューニングをした。

披露宴会場にはちょっとしたステージがあって、
そこで演奏するのだと知った時には、
また緊張度が高まった。

そして出番。

ステージに上がるとみんなの顔が見渡せる。
あたり前だが、全ての人が私たちを見ている。
緊張度が一気に高まる。

一言あいさつをするところまでは、
なんとかこなすことができたが、

実際にイントロに入った瞬間、
頭の中が真っ白に飛んだ。

「こんなに大勢の人の前でギターを弾いている、
 自分は一体何をやっているんだろう」

手が自分の手じゃないみたいだった。

おまけに、カポの締めが甘かったらしく、
強くピッキングすると、6弦のビビり音がかなり耳についた時点で、
あぁ、なんてこった、もう取り返しがつかない、あぁ~
と私は幽体離脱したのだった。

事前の打ち合わせで、Aメロの入りは私のペースでいいという話だったのに、
なぜか私が歌が始まるのを待ってしまって、
いきなりつまづいた。

でも、「やばい、へまこいた!」という感情もなく、幽体離脱している私は、
「あぁ、なんかおかしなことになってるなぁ」ぐらいにしか感じなかった。
ステージの前で写真を撮るために、会社の上司がしゃがんでいたのだが、
「あぁ!!」みたいな顔をしていたような気がする。
いまでもそのときの記憶がはっきりしない。

完全に心ここにあらず。

本当に私は私の体を離れてどこかへ行ってしまっていた。

頭で次のコード進行を追うということが全くできず、
練習で染み付いた体の動きというか、
次は確かこの音だったような気がするという感覚だけで弾いていた。

途中もおそらく間違えていたに違いない。
これもあまり記憶がない。

後から聞いた話だと、私の目は完全にイッちゃてたらしい。

1番が終わって、2番に入る頃になって少しだけ生き返ってきた。
目の前の席に座っていたおばあさんの横顔が目に入る。
眼はステージに向いていないけれど、
すごく真剣に聞いてくれているような表情だった。

目の前の上司は応援してくれているような表情をしていた。

新郎新婦に目をやると、微笑んでいた。
いや、苦笑だったのかもしれないが。

2番が終わって、ギターソロに入った時にはかなり回復していたのだが、
6弦のビビりが気になってしまって、余り気持ち良く弾けず、
むしろ申し訳ないなという気持ちになってしまった。

なんとか演奏が止まることもなく、
最後まで弾き終えることができただけでも本当によかった。

おまけに多くの課題がはっきりして、
なんだかこれで大きく成長したような気がする。

特に思ったのは、人前で演奏しなければ、上達しないなということ。
家にこもって100回練習するよりも、人前での1回の演奏のほうが得るものが多い。

演奏直後はかなりへこんで、
もっと上手くなりたいという気持ちと、
もう俺はギターはダメだという気持ちが葛藤した。

でも、やはりもっと人前で気持ち良く演奏できるようになりたい。
いまはその気持ちの方が強いかもしれない。

どこかで、「初めての本番は練習の半分の力も出せないよ」と聞いて、
そんなことあるかい、たくさん練習すればできるにきまってる、と思っていたのだが、
半分どころか、10分の1くらいしか出せなかった。
家で一人で弾く分なら、逆立ちしたってあのときよりうまく弾けるだろう。

大勢の人の前で、注目される中での初めての演奏というのは、
それほど魔物だったのだ。

いつしかそれが、快感になる日がやって来る気がするので、
(気がするというより確信に近い)
友達を誘って路上にデビューしてやろうかと思っている。

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