席入り後は
一瞬一瞬が宝物のような
素晴らしい時間でした
使われたお道具のことは
ここで述べるわけには参りませんことを
何卒お許しください
ただ一言
お伝えできるとしたら
濃茶を練って下さった黒樂を
茶筅とおしの前に小すすぎされ
使うことを辞退させていただこうとした
出服紗を
「意味があるからお使い下さい」
と強く仰ったことには
ちゃんとした理由があってのことと
腑に落ちたということ
そして
古くは利休様が彼の上様をもてなしたと
伝わるそのやり方を
師匠が再現してくださったことに
言葉にできないほどの感銘を受けましたこと
燈芯と和蝋燭の揺らめく幽玄な世界で
ひたすら濃茶を練ってくださる師匠の姿が
まるで夢を見させていただいているかのように
幻想的だったこと
以上のことだけを
ここにお伝えさせていただきます
また
「掛物ほど第一の道具は無し」という
あの利休の言葉が
これまでに無いほど
真に迫って感じられたことは
私のこれからの茶道人生にとって
何物にも代えがたい大きな学びでありました
灯芯の光ゆらめく吉備の里
五臓にしみいる
我が師の恩
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