表千家一期一会

「唐物と日本のわび」



「唐物と日本のわび」
彭 丹 (ほう たん)著  淡交新書



「日本には茶の湯というものがあり、独特の日本文化であることは
中国の大学で教わった。
来日してまもなく、東京の住まい近くにたまたま『茶道教室』の
看板があるのを見て、茶の湯とはどんなものなのかを知るために
入門することにした。

そこは、私にとって驚きの連続であった。
独特の日本文化と言われる茶の湯に
中国の姿がなんと多いことか!」

このような書き出しで始まる
中国人の比較文学研究者による
唐物と日本のわびに関する
エッセーです


アマゾンなどで
「試論的エッセー」と紹介されているように
内容は研究書的なのですが

筆者自身の体験を通して
とてもわかりやすく書かれています


茶の湯の「わび」について
私達日本人が
感覚的には何となくわかるものの

日本人であるがゆえに
見えにくくなっている点を
鋭く的確に言い当てていて

読みながら何度も
「なるほど そうだったのか!」とうなずき

これまでの疑問がすっきりと解けていくような
解放感がありました


具体的には
「九十九茄子」「珠光青磁」など
二十二の唐物をあげて
それぞれについて言及しています


筆者は
一つ一つの唐物と出会う中で
まず
素直な驚きや素朴な疑問からスタートします


そこのところが
妙に共感できるのです


例えば
「九十九茄子」


「茶席に列する人々は両手でものものしくそれを捧げ
その姿を前後左右からじっくりと眺めながら
形や由緒などのついて問答をする。
私も真似をしてしばらく眺めてみるが
何の変哲もない、というより、粗末な雑器のようにしか見えない。
(中略)
四川の実家近くで似たような雑器を焼く窯がある。
光沢のよい滑らかな黒釉や飴釉の壷が
道端に転がり誰も見向きもしない。・・・」


しかし
読み進めていくうちに
いつしか
「茶の湯のわび」へといざなわれ

最後には
なるほど・・・と
腑に落ちるのです


また
文章の運びや描写が
格調高く美しく

まるで上質な推理小説か短編小説を
読んでいる時のような
愉しみをおぼえました

そして
最後のあとがきまで読んで
表紙を閉じた時には

茶の湯の「わび」が
これまで以上に
わかりやすく感じられた満足感と共に

一冊の文学作品を読み終えたあとのような
心地よい余韻に浸ることができました


また涼しくなったら
美術館に出かけ
「唐物」を見てみたくなりました

コメント一覧

tomoko
是非とも!
痛快かつ脱帽の一冊でした。
雲や
この本にとても興味がわきました。
さっそく買って読んでみたくなりました。
教えて頂いて感謝します。
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