「心理学者の茶道発見」岡本浩一 淡交社
第一線の心理学者であり
茶人でもある著者が
茶の湯を「癒し」「情動」「自他」「普遍」
「練達」「成熟」の6つの視点から解析
(本の帯より)
読み終えて表紙を閉じた瞬間
思わず
「あ~面白かった!」という言葉が
口をついて出てきました
茶道にどっぷりとつかりながら
心理学の専門家の目で
茶道を見つめる視点に
素直に共感できる点や
あらためて気づかされる点が多々ありました
特に個人的に印象に残った箇所を
抜粋しまとめておこうと思います
ご興味を持たれた方は
是非本を買って読んでみてください
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p13点前と癒し
点前は他の右脳の活動と競合する。
つまり、点前によって右脳を使い出すと
右脳は対人関係の不快感などの処理を打ち切って、
その処理容量を
点前の活動に明け渡さなければならなくなる。
これが、点前によって清涼的な心理効果が得られる
ひとつの理由だと考えられる。
p33侘びと主観的自由度
「花をのみ待つらむ人に山里の雪間の草の春を見せばや」
という利休の愛誦が
さりげない言葉でドキリとするほどの主体性を
謳っているのに気づきたい。
現代心理学者が発見した「主観的自由度」を
名付けることなく体現している。
p33癒しを生む佗び茶の概念性
侘びという思想は、
現実に囚われすぎる心を一度概念の世界に遊ばせ、
現実と概念の差異を
むしろ知的に楽しもうとする姿勢であったように思われる。
p59キーワードは「88センチ」
小間の茶は、
膝と膝が50センチほども離れていない近さのために
主客とも緊張の極みで行われる茶なのである。
p59不完全の受容
不首尾があったときに、それを正視し、自己受容をするのも
茶の湯が与えてくれる貴重な訓練ではないだろうか。
p112惜別のさまざま
茶事の最後のこの黙礼は、ささやかな追礼でありながら、
意味の重い出来事に思われてならない。
茶事だけでなく、
人生全般の出会いと別離というものを知り尽くした知恵だと
深く感じるのである。
p121日本文化と型
型があるからこそ、演出の工夫が活き、
参会者の印象にも長く残る。
型が個性の発揮を促進している。
p146茶道と権威主義
権威の受容と権威主義の克服の両立した人格が
茶道の目指す人間像である。
p165茶道具と自己概念
たとえば、まだ茶室のない人が銅鑼を求めたとする。・・・(中略)
その銅鑼は
この購買者の茶の湯への意気込みを蔭で支え続けることだろう。
(実は私も広間をつくる前に炉縁を買い、
小間を建てる前に銅鑼を買いました!)
p201兄事の陰徳
兄事の間柄こそ、真の淡交、君子の交わりの典型である。
兄事の間柄には独特の快適さがある。
それは、陰徳の間柄ゆえの純粋さと気楽さである。