【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第15回
「利他のこころ(送りバントの話)」
(白駒妃登美著 「子どもの心に光を灯す 日本の偉人の物語」より)
日本の文化や 歴史の素晴らしさを 国内外に発信されている白駒さんの本は、
様々な気づきを沢山いただけます。ぜひ、ご一読をオススメします。
沢山のエピソードがある中で、日本人の美意識や感性を
わかりやすく現しているエピソードがあるので、ご紹介致します。
これは、プロ野球・阪神タイガースの往年の名選手であり、
監督としても日本一を経験した吉田義男さんが
フランスのナショナルチームの監督を務めたとき(1990~1995)のこと。
あるテレビ番組で、帰国した吉田さんがインタビューを受けていました。
「フランス人に野球を教えるのに、一番苦労したことは何ですか?」
このときの吉田さんの答えが、あまりにも意外だったそうで、
吉田さんの答えは、このようだったそうです。
「それは、送りバントです。フランス人に送りバントを教えるのに、3年かかりました。
フランス人は、『自分がアウトになることがわかっていて、なぜバントするんですか?』
と聞いてくるんです」
つまり、バントを教えるのに3年かかったというのは、技術の問題ではなく、
送りバントの概念を伝えるのに、それだけの時間と情熱が必要だったということなのでしょう。
野球とベースボールの違いがあるのかもしれませんが、
日本の野球における「送りバント」は、「自分がアウトになって他者を生かす」という意味ですが、
このような自己犠牲の精神を美しいもの、尊いものとする日本の精神や感性は、
昔も今も変わらないのではないでしょうか。
これは、仏教的には「利他のこころ」とも呼ばれているものです。
その本質は、誰かの幸せが私の幸せ。誰かのお役に立てることが私の幸せ、
というような感覚だと思います。
私自身もしっかりと理解し、受けとめて、自ら実践できる一人として
これからも生きたいと思っています。
そして、微力ながらも その精神性を伝えられる日本人の一人として、
これからも様々なことを学びながら、生きていければ本望です。
参考文献 『子どもの心に光を灯す 日本の偉人の物語』(白駒妃登美著 致知出版社)