松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆愛知県知事リコール事件・批判しかできない人が「作る仕事」をするとこういうことになる

2021-02-06 | 地方自治法と地方自治のはざまで
 批判しかできない人が「作る仕事」をするとこういうことになるのだろう。

 愛知県知事の無効・不正率は、83%とのことである。有効要件が厳しすぎるという意見もあるが、横浜市で「カジノの是非を問う住民投票条例の制定をめざす直接請求署名」の署名簿の無効率は、7.44%である。一桁以上違う。いかにずさんなのかがよく分かる。

 受任者が愛知県在住でないという例もたくさんあるようで、そもそも主催者が、リコールの意義を理解せず、イベントの署名程度にしか思っていなかったのではないか。

 リコールは、正当に選挙で選ばれた人を辞めさせる行為で、選挙と同じ意味がある。選挙に行って、他人の分まで投票をすると言ったら、その場で厳重注意だし、下手をしたら警察に連絡される。選挙で、人の名前をかたって投票したら、新聞に載る犯罪である。

 結局、自分を大きく見せるために、法定数を超えなければ、どうせ調べないのだろうという安易な気持ちで、水増ししたのだろうが、情けない。あまりの程度の悪さに、暗澹たる気分になる。

 今回の件については、いろいろな論評があるが、私は、批判しかできない人たちが、作る仕事=実現(創造)をやるとこういうことになるという真理が証明されたと考えている。

 批判は、簡単である。どんなものにも、欠点はある。それを突けば、いっぱしのことを言っているように見える。しかし、何かを作り上げるほうは大変である。

 何かを実現(創造)するには、緻密な準備と粘り強い合意形成力が必要である。とりわけ、地方自治は、人々の暮らしがテーマなので、人それぞれの正義がある。それぞれの正義を受け止め、それを一つの政策にまとめ上がるには、更に倍加した緻密な準備と粘り強い合意形成力が必要である。批判ばかりの人は、これができないというのが、これまでの私の体験である。

 なぜ、批判ばかりの人たちが、緻密な準備と粘り強い合意形成という作業ができないかについては、まとまった論文はないだろう。私の体験からくる仮説は、その人の職業体験が貧弱だったというものである。

 地方自治の仕事で、最も難しいのは、理論や法的問題ではなく、調整である。人それぞれの正義をまとめ上げて、一つの結論に導くには、基本理論の勉強、周到な準備、様々な相手との調整・合意形成が必要になる。いくらあるべき論(スジ)を言っても世の中通らない。つまり、スジだけでは硬すぎて、飲み込めないのである。だからコンニャクも混ぜながら、柔らかくまとめていくのが仕事である。

 また、いいところにまとまっても、うかうかできない。うかうかしていると、実施の段階で、足をすくわれる。換骨奪胎になってしまう。そうしたことがないように、目配せし、口や手を出さなければいけない。

 実現(創造)には、こうしたひとつひとつ地道な作業の積み上げが必要である。こうした力は、畳の上の水練では、体得できない。職業生活の中で、身につけて行くのが王道だろう。しかし、その職業が、言われただけをやっている仕事だったり、機械相手の仕事のような場合、自然には身につかないので、実現力(創造力)を獲得するために、さらに、もう一段、別の努力、さらなる奮闘が必要になると思う。

 もちろん、それだけでなく、本人の資質や親の躾、経済的事情、社会的な環境も大きな要素であることは承知しているが、それでも、実現力(創造力)には、職業体験も大きいというのが私の仮説である。

 やや話がそれたが、このリコールでは、「受任してくれる人を信頼して、住所要件を確認しなかった」ということであるが、これなど、まさに仕事をしたことがないということを白状しているようなものだと思う。

 コロナで、日本は、韓国や台湾より患者数がずっと多く、ワクチン開発では、ベトナムやインドよりも、ずっと遅れている。元気を出さないといけないときに、自分たちより遅れていると思っていた国から、さらに馬鹿にされるような、トンチンカンなことだけはしないでほしい。

 

 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆自治基本条例の転機(焼津市) | トップ | ☆高校生の地域づくり参加・ど... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

地方自治法と地方自治のはざまで」カテゴリの最新記事