松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆高校生の地域づくり参加・どのように進めたらよいか(多摩市)

2021-02-09 | 子ども・若者総合支援条例
 多摩市若者会議のメンバーから相談があり、進め方を考えた。

 背景は、彼らが、地元の高校との交流を通じて、高校(生)側のニーズを感じたこと、新城市の若者議会の高校生メンバーたちとオンライン会議をやった際に、若者会議のメンバーの思いや質の高さに驚いたといったことがある(なお、現在、別の雑誌で、新城市の若者議会をテーマに論文を書いているが、改めて、定量的にも、顕著な政策効果を上げていることがわかった)。

 多摩市若者会議の人たちと話した、政策化の展開筋道は、またの機会としたいが、まず、高校側の状況を整理しておこう。

 高等学校の新学習指導要領「公民科」が、令和4年4月1日以降に高等学校の第1学年に入学した生徒から年次進行により段階的に適用することとのことである。

1.大きな変更点は、必履修科目として「公共」が新設され、それに,選択科目として「倫理」,「政治・経済」を設定、連動する。

2. 「公共」は,自立した主体として社会に参画するために必要な資質・能力を育成が目的である。自治基本条例や市民参加条例で目指していることが、学習指導要領、教育現場で実践される。

3.「倫理」,「政治・経済」は,「公共」で育成した資質・能力を生かして,より専門的な視野から考察を深め,現代の諸課題を広く深く探究するという内容である。 公共の応用、展開の役割である。

参考『高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説公民編』において改善・充実の要点として次のようにまとめられている。
〔公共〕
ア 「人間と社会の在り方についての見方・考え方」を働かせ,考察,構想する学習の重視
イ 現実社会の諸課題から「主題」や「問い」を設定し,追究したり探究したりする学習の展開
ウ 社会に参画する際に選択・判断するための手掛かりとなる概念や理論及び公共的な空間における基本的原理の習得
エ 自立した主体として社会に参画するために必要な資質・能力を育成する内容構成


4.公共は、3つのパートに分かれている。
(1)A 公共の扉
 社会参画の選択・判断の手掛かりとなる概念や理論,公共的な空間における基本的原理の理解。
 ①公共的な空間を作る私たち
  公共的な空間を作る主体となるための適切な問いを設け,課題追究や解決への活動を通して,「公共」の学習で扱う公共的な空間における人間としての在り方について関心を高め,課題を意欲的に追究する態度を養うことを主なねらいとしている。
 市民も公共の担い手であり、それを具体的に考えるということである。
 ②公共的な空間における人間としての在り方生き方
  主体的に社会に参画し,他者と協働することに向けて,知識及び技能と思考力,判断力,表現力等を養うこと。
 ③公共的な空間における基本的原理
 公共空間における自立した主体として行動できるように、知識及び技能と思考力,判断力,表現力等を習得することが狙いとなる。

(2)B 自立した主体としてよりよい社会の形成に参画する私たち
 自立した主体としてよりよい社会の形成に参画するために,具体的な主題を設定し,Aの公共の扉で身に付けたことを活用して,活動できる必要な知識及び技能,思考力,判断力,表現力等を身に付ける。
 具体的には、若者議会の政策提案などは、最も適切な例であろう。そうした場や機会を作っていくことが、行政側の役割でもあろう。

(3)C 持続可能な社会づくりの主体となる私たち
 共に生きる社会を築くという観点から,社会的な見方・考え方を総合的に働かせ,課題の 解決に向けて考察し,論拠を基に自分の考えを説明,論述できるようにする。
 そのプロセスも示されている。
 ①課題の設定:共に生きる社会を築くという観点から,生徒自らが設定する。
 ②情報の収集と読み取り・分析:複数の資料から適切に選択し,社会的な見方・考え方を総合的に働かせて読み取り・分析する。
 ③課題の探究:②の情報の読み取り・分析をおこない、多面的・多角的に考察, 構想する。
 ④自分の考えの説明,論述:論拠を基に自分の考えを説明,論述するために,探究の過程や成果がわかるようにレポートにまとめたり,プレ ゼンテーションなどを行ったりする。

5.「「公共」の指導に当たっては,社会に参画する自立した主体とは何かを問い,よりよい公共的な空間を作り出していく自立した主体になることが,各人のキャリア形成と自己実現に結び付くことを理解できるようにすることや,社会に参画する自立した主体とは,孤立して生きるのではなく,地域社会などの様々な集団の一員として生き,他者との協働により当事者として国家・社会などの公共的な空間を作る存在であることについて多面的・多角的に考察し,表現できるようにすることなどにより,特別活動などと連携してキャリア教育の充実を図ることが必要となります」(平成 30 年改訂の高等学校学習指導要領に関する Q&A) とされている。まさにまちづくりである。

 若者の地域参画を進め、政策提案や事業提案の機会と場所を作っていくことは、この学習指導要領の方向性と合致している。それに加えて、多摩市らしい、チャレンジできる若者、多様な力を発揮できる若者のまちを提案していくのが方向性だろう。


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