松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆外国人消防団員(8)・横浜市の取り組み(原稿)

2021-03-14 | 外国人消防団
 次の全国初の自治体政策の連載は、外国人消防団員を取り上げる。

 横浜市は、基本団員として、外国人の消防団員を認めている(機能別団員の例は多い)。基本団員として加入を認めているのは、横浜市が全国初ではないが(四日市市は平成22年から)、真正面から、制度的整備を行ってはじめたので、今回、取り上げることにした。

 この連載は、3ヶ月に1回なので、事前の調査が十分できる。月刊誌だと1ヶ月位の期間しかないので、どうしても、時間が来て、ここまでと諦めて原稿を書くことになる。

 1万字の原稿であるが、その7,8倍は調べていて、それをギュッと凝縮することになる。

 多くの自治体で、外国人は公権力行使関連の仕事は、できないという前提で、外国人消防団員を受けて入れているが、不思議なことに、これらの仕事を外国人が行うと、何がまずのか、それについて、記述した論文も、答弁も、また説明もない。

 自治体の場合は、国が、公権力の行使はまずいと言っていることを理由としているが、では、そもそも、なぜ公権力を行使する仕事は、どこが、まずいのだろう。

 具体的に考えてみよう。明らかに肌の色が違う外国人の消防団員がいたとしよう。公権力行使とされるのは6つのケースであるが、彼がこれを行う場合である。

(1)火災警戒区域の設定(消防法第23条の2) これは現場での最高責任者(消防吏員)の指示で設定するので、平隊員である外国人消防団員は、やらない。

(2)消防車の優先通行(消防法第26条) 緊急自動車の運転
 サイレンを鳴らしながら、消防自動車が走るが、それを肌の色が違う外国人消防団員が運転している場合である。国家の意思が歪められたとか、外国の脅威だとか、感じることもない。

(3)消防隊の緊急通行権(消防法第27条) 民地等を通行・進入
 肌の色が違う外国人消防団員が、消火のために、他人の庭先を通り抜けるのである。日本人ならば通って問題ないが、外国人だとまずいという理由が思い当たらない。

(4)消防警戒区域の設定(消防法第28条) 
 実際には、現場での最高責任者(消防吏員)の指示で設定するので、平隊員である外国人消防団員はやらない。

(5)消火活動中の緊急措置(消防法第29条第1項)  破壊消防等
 家の中に取り残された人を救助するために、家のドアを打ち破る行為である。日本人ならいいが、外国人だとまずいという理由貼るだろうか。まさか、外国からの侵略をイメージしないだろう。消防団マニュアルに書いてある危険な行為である。バックドラフトであるが、こうした危険な行為をよくやってくれたと感謝こそそれ、非難する理由はない。

(6)火災現場における消防作業従事命令(消防法第29条第5項)
 バケツリレーなどの命令。肌の色が違う外国人消防団員が、バケツリレーをお願いしますという行為である。日本人なら良いが、外国人だとまずいという理由は見つからない。バケツリレーで、国家意思への干渉や歪みは生じないだろう。

 具体的にみてみると、日本人なら問題ないが、外国人の場合は、問題であるという行為は見つからない。

 この間、いくつかの自治体にヒアリングしているが、誰かが言っていた。「使えない日本人より、使える外国人のほうがずっといい」。たしかにそのとおりで、欲しいのは、まちのために活動する、腕利きの(使える)消防団員ではないか。
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