松下啓一 自治・政策・まちづくり

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政策論の視座

2005-09-17 | 4.政策現場の舞台裏
 これまでの政策論をみると、理念に過ぎて現実を十分踏まえていない政策論が散見される。
 例えば,市民・NPO像であるが,自由と責任をわきまえ,自立し、合理的判断に基づいて行動する市民・NPOであるが,現実の市民・NPOの多くは,ともすると公共に依存しがちな市民・NPOである。もちろん、こうした例外も多く、また、自立のための努力している市民・NPOが数多くあるのを知っているし、本来の、あるべき論からいえば好ましいことではないが、現実でもある。要するに、想定(あるいは期待)されている市民・NPO像と現実の市民・NPOとの間に,大きなギャップがある。
 こうしたギャップが、理論の世界にとどまっているならば問題は少ないが、これが政策として実現されると、影響は大きいものとなる。最近のNPOをめぐる議論は,このあるべき市民・NPO像を前提に行われていることから,それが結果として,市民責任の過度の強調や,他方,行政責任や企業責任を曖昧にする方向に働いてしまう。
 NPO自体からも、しばしば「市民自身が主体的に生活を変えなければ,解決しない問題が増えている。環境やリサイクル,福祉の問題は一例で,市民自身がそのライフスタイルを変え,ごみを分別し,環境を害しない製品を使い,障害者や高齢者を助け合うといった,市民自身による自主的な行動がないと真の解決を図ることができません。」という説明がなされ、それはそれで正しいが、NPOの自助を強調するあまり,本来,企業の社会的責任に属する事柄を市民やNPOの責任で論じたり,あるいは企業市民としての責任分野を市民やNPOの責任に委ねる議論が出始めていることに注意をする必要がある。
 要するに、政策論では、理想・理念も重要であるが、理に走りすぎると、当初考えた理念と正反対の結果となる場合もある。
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