松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆サイン入り本

2022-03-02 | はじめての条例づくり
 気分転換がてらに、条例づくりの本を書き始めた。このテーマなら、特に文献を調べることなく、気ままに書ける。

 そのなかで、体験コーナーというのをつくってみた。そこにサイン入り本のことを書いてみた。

 私の研修では、研修の終わりに最優秀の人を選び、私のサイン入り本を贈呈し、表彰するというのをやっている。20年近くやっているから、全国に私のサイン入り本があることになる。

 サイン入り本と聞いて、ずいぶんと自己顕示欲が強いと思ったことだろう。

 しかし、これには訳がある。

 横浜市を辞めて大阪国際大学に移り、そこで、地方自治を教えた。現役の自治体職員でもそうだと思うが、学生時代に地方自治に興味を持ち、きちんと勉強したことがある人は、極めて少ないのではないだろうか。私は大阪国際大学の学生たちもそうだと考えた。

 そこで、地方自治を面白く勉強できる本をテキストにすればよいと考えて、私の『自治体政策づくりの道具箱』(学陽書房)をテキストにした。この本は、私の最高傑作で、地方自治にまつわる面白い話が満載である。現場にいたから書けた本で、今、とても書くことはできない。

 これをテキストに指定して、地方自治を教え始めたが、私には悪いクセがあって、テキストに沿って授業をするということができないのである。なぜなら、テキストに書いてあることは、テキストを読むのが一番で、それを私が説明する気にならないからである。したがって、私の講義は、テキストに書いてないことが中心となる。

 それで試験が終わり、手元をふと見ると、学生たちはほとんど使っていないテキストがあることに気がつく。学生たち(特に男子学生)は、それを古本屋に売るのである。あるとき、アマゾンを見てあっと驚いた。私のあの最高傑作が、1円になっているのである。しかも、1円、1円、1円と何冊も1円になっている。

 慌てた私は、ともかく、それを買い占めることにした。1円なので大したことはない。郵送代のほうがずっと高かった。しかし、買い占めても、また1円で出品されるのである。根負けして、買い占めは諦めることにした。

 それから、私は自衛手段を講じることにした。自衛手段の第1は、自分の本はテキストにしないことである。また、どうしても、テキストにしなければいけない時は、学生に次のような指示を出すことにした。「はい、何ページを開いて。ここは大事なところなので、アンバーラインを引くように」。落書きがあると、本は売れない。

 さて、最優秀賞のサイン入り本である。私が、研修優秀者に本を差し上げるが、そのままなら、もらった人が、ざっと読んで、アマゾンに売るということが起こる。これは悪夢の再来である。そこで、サイン入りである。サインは、アマゾンにとっては、落書きである。これで、1円化を防ぐことができる。

 自衛手段は、それだけではない。サインの際には、優秀者の名前も入れるから、、自分の名前の入った本をアマゾンに売るのは、さすがに躊躇するのではないか。

 自衛手段は、さらにある。私がその本を買い占める。そして私は、その自治体の人事課に、そっとメールをするのである。〇〇君は、優秀賞を取ったが、その本をアマゾンに売りました。あくまでも事実を淡々と伝えるだけである。

 だから、しっかり、勉強するように。

 いつも、こんな話をしながら、笑い声一杯の私の研修は、終わることになる。
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