空き家予備軍・どれくらいの空き家が発生するのだろう。ここでは建築基準法との関連で、空き家の予備軍を見てみよう。
都市計画区域(準都市計画区域も)内の土地は、建築基準法による道路に2メートル以上が接していなければ建築確認を受けることができない。接道要件であるが、これを満たさない土地は、再建築が不可となる。
不適合接道となる主なケースとしては
①道路にまったく接していない土地。母屋と離れがあり、離れを他人に売ったが、奥の母屋敷地のための専用通路を設けなかったケース。ちょっと通らしてもらうよ。遠慮なくどうぞといった関係で、特に支障がなく、始まった場合だろう。
②敷地は道路に接しているが、その道路が建築基準法の道路でない場合(このような道路は一般的に「通路」と呼ばれる)。道路ではないので、接道義務を満たしていないことになる。
③法による道路幅の基準は4メートル必要であるが、それ未満でも、セットバックによって道路を広げることで、建築が認められる。建築基準法42条2項に基づくもので、2項道路といわれるものである。2項道路もいくつかの条件があり、認定を受けることも難しいものもある。
④前面道路は建築基準法で認められた基準に当てはまっているが、接道部分の幅が2メートルないもの。旗竿地と言われる。建物が建ってる土地が旗の部分で、そこまでの通路が竿のほうである。旗竿地とは、言いえて妙な表現である。車が通らない静かな環境がほしくて、こうした土地を買った人も多いだろう。
問題は、こうした土地がどれだけあるかである。正確には、今後、きちんと調べたいが、当面、不動産コンサルタント会社「リックスブレイン」代表の平野雅之さんの記事を載せておこう。
それによると、
①「敷地が道路に接していない」住宅は全国で117万1,800戸、「幅員2メートル未満の道路に接している」住宅は230万4,700戸にのぼる。ただし、都市計画区域外の建築敷地には接道義務がないため、これらがすべて再建築不可の土地というわけではない。
②東京都区部は全体が都市計画区域だが、専用住宅および併用住宅417万7,700戸のうち、「敷地が道路に接していない」住宅は7万6,300戸(約1.8%)ある。これらはほぼすべてが再建築不可の土地と思われる。
③さらに区部のうち、「幅員2メートル未満の道路に接している」住宅が17万9,800戸(約4.3%)ある。幅員2メートル未満でも、その一部は法42条2項道路として建築が認められているだろうが、大半は「再建築不可の土地」だと考えられるとしている。
④前面道路の幅は広くても接道間口が2メートル未満のために再建築不可となる旗竿地などについては調査されておらず、その実態が分からない。「あくまでも実務上の経験からみれば、無接道の土地よりも、敷地延長の幅が2mに足りない土地のほうがはるかに多いような印象を受ける」としている。
つまり、東京都区だけでも、数十万戸の再建築不可物件=空き家予備軍があるということである。当然、行政代執行による除去も、民泊や公共施設等の利活用をいくらやって、追いつかないということである。
このなかでは、どのようなまちづくりを進めるのか、問われることになる。
京都では、町屋保存のために、建築準法第43条第1項ただし書許可に基づき、接道が2m以下、または建築基準法第42条に規定する道路に接しない敷地も再建築が可能となった。これは、京都の町屋を守ろうという価値が前面に出た結果である。この点は、自治体ごとに条件が違う。
かといって、自治体ごとの判断にゆだねると、住民の当面の声に押されて、各自治体とも、安易に建築基準法の条件を緩める方向に進むだろ。しかし、もともと接道条件を定めた趣旨は、火災や地震などの災害が起きたときの避難経路、消防車や救急車が通れる経路の確保であるので、この本来の目的を見失ってしまう恐れがある。冷静かつ多面的な検討が必要になるだろう。