すっかり地球の生活に馴染んだはぐれ宇宙人は、行きつけの中華料理屋に昼ごはんを食べに入る。
この店はラーメンやチャーハンなどの定番メニューもおいしいのだけれど、
常連にしか出されない裏メニューのエビフライが絶品で、
はぐれ宇宙人は1ヶ月毎日通いつめ、つい2日前に、やっと主人から常連と認められ、エビフライを注文できるようになった。
そして、やっぱり、今日もそのエビフライを注文する。
自家製タルタルソースがたっぷりかかった2本のエビフライ、出されるなり、はぐれ宇宙人はかぶりつく。
途端、その味は全身に沁みわたる。
そしてあっと云う間にたいらげてしまう。
はぐれ宇宙人は地球に来て本当に良かったと思う。
◯
ぼくは、
店を出る。
ぼくはまだエビフライを注文することを許されない……常連と認められていない。
横にいた宇宙人より3ヶ月以上前からこの店に通っているというのに。
四畳半のアパート。
陽が暮れかかるころ、鏡を覗くと、そこにはこの世を楽しむことを許されていない男の顔が映っていた。
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