◯
研究所の最上階のテラスに、ぼくらは一列に並んで、双眼鏡で目の前の国道を見ている。
と、右からひとりのジョガーが走ってくる。
ぼくらの双眼鏡が一斉にそのジョガーへと向けられる。と同時に、空いているほうの手に握った鉛筆で手元の報告書に状況を書き留めはじめる。
ぼくは、双眼鏡をジョガーから横に並ぶ皆に向ける。
かれらは皆、ぼくだった。
非常階段を降りて、2階のドアを開けると、そこは自動車教習所の食堂の厨房だ。
ちょうど天津丼と塩あんかけ焼きそばができあがり、ぼくはそれをお盆に載せてホールへ運ぶ。
天津丼は3番テーブルへ。
塩あんかけ焼きそばは9番テーブルへ。
ホールの真ん中の大テーブルでは、幼稚園児たちがお絵描きの真っ最中だ。
と、隅っこにぽつんと座って、じっと白い画用紙を見たまま、なにも描けないでいる子がいることに気づく。
きっと、なにをどう描いていいのかわからないでいるのだということが、ぼくにはわかる。痛いほどわかる。
◯
ぼくは、もうなくなってしまった昔住んでいた家の、自分の部屋で、これからのことについて考えている。
庭に、女性がひとりいる。かのじょはぼくの数少ない友人のひとりだ。
庭に出たぼくに、かのじょは云う。
「元気にしてた?」
「うん。……って云うか、ぼくのこと忘れちゃったかと思ってた」
かのじょは微笑む。忘れるわけがないとその微笑みが語っている。
「ありがとう……ぼくの友だちでいてくれて、ほんとにありがとう」
ぼくはようやくそう云えた。
◯
ぼくは、もうなくなってしまった昔住んでいた家の、自分の部屋で、これからのことについて考えている。
庭に、男性がひとりいる。かれは白い帽子の男だ。
庭に出たぼくに、白い帽子の男は云う。
「きみの仕事についてだけど……」
云いたいことはわかっている。
そして、それは正しい。
けれども、それはもう、どうでもいいことなんだ。
◯
ぼくは、もうなくなってしまった昔住んでいた家の、自分の部屋で、これからのことについて考えている。
ふと気づく。
もうすでに、ぼくは旅に出ていたのだと。
つまり、いま現在、ぼくは旅の途中にいるのだと。
いったい、これで何回目の旅になるんだろう?
……いや、いままでの旅も、この旅も、これからの旅も、別々のものではなく、
すべて同じ、ひとつの旅なのかもしれない。
つづく
絵、とてもシック。
物語、優しく深い。
だんだんとイラストから細密画になっていくPちゃんの精進。
良い1日でありますように(^^)/
いつもコメントありがとうございます!
文は、書いておきたいことをちゃんと書こうと意識しました。
でも、なかなかうまく表現できなくて。
伝わるようにと思いすぎて、ちょっとありきたりになってしまったかもしれません。
けれど、ぼくは、旅に決着をつけたかったのです。
絵は、木を描くのが楽しくて、いつも気がついたら木ばっかりになっちゃって。描き込んでいくと、リアルに見えてくるのが面白いので。
ほんとは自分なりにディフォルメできたらいいのですけど、センスが無くて^^;(絵全体のレイアウトのセンスも欲しい!)
あと、2枚目は空の雲もリアルに描いたほうが良かったかな、と反省してます。
うさぎさんにとっても、今日が良い1日でありますように^ ^
ちょっと今まででないようなストーリー✨
おおきな切り株は何かを参考にしたのですか。
縄文杉のような、クスノキのような
ゴツくてカッコいいです✨
こんばんはー
文は結構悩んでしまって。
わかりやすく、伝わりやすくしようとし過ぎてしまったかもしれません。
なんかカッコつけてる感じになっちゃってますし^^;
でも、今回は書いておきたいことを書こうと心がけました!
あ、切り株ってわかっていただけました?良かったー!
描き込んでたら、なんか岩みたいになっちゃって(人物を小さくしたのもあって)。
あれは実は近所の公園にあった切り株で(直径30センチくらいの)。ずっと前に撮っておいた写真を見返して、これがデーンと画面の真ん中にあったら良いなと思って。
描き終えて、反省点はありつつも、とりあえず満足感はありました笑
それにしても、
とっくに続きの「その2」を投稿してる予定だったんですけどね……