1ヶ月ほど前のこと。
春が近づき、雪だるまは、
「そろそろこの街も住みにくくなってきたな…」
そうつぶやき、同時に、次に住みつく場所を探す旅に出ることを決める。
翌朝。
国道6号線に、北へと向かう雪だるまの姿があった。
そして…
いま…
彼は道ばたに沁みきっている。
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甥っ子が9歳という若さで、独学で新巻鮭をつくったらしい。
周りの大人はみな驚き、そして賞賛する。末は博士か大臣か、と。
その話が市長の耳に入り、甥っ子は表彰されることになる。
ぼくは表彰式に出席するため市役所に向かうが、道に迷ってしまう。
道を訊こうとひたち海浜公園の真向かいにある中華料理屋に入るが、主人は裏の菜園でゴーヤの世話に夢中で、声をかけても気づいてくれない。
隣の喫茶店に入り、 . . . 本文を読む
県内唯一の石油コンビナート、そのなかで、いちばん南にある円筒形のタンクの前に、スーツ姿の男たちがぞろぞろと集まってくる。
みな、それぞれ別々の方向から、それぞれ違った歩幅で。
彼らは、市役所の各課の課長たちだ。
20人ほど集まったところで、彼らはタンクの屋上にのぼる。
屋上のちょうど中心点に蓋があり、彼らはその周りに丸く並んで、タンクのなかを覗く。
タンクはからで、なかは薄暗い。
底にピアノ . . . 本文を読む