ぼくはいつの間にか〝焼きそばの隠れ里〟に迷い込んでしまったらしい。
ここは憎しみや怒り、悲しみといったマイナスの感情は存在せず、誰もなにも傷つくことのない、優しさと笑顔に満ちた理想郷だった。
そこに暮らす焼きそばの精は云う。
「たまにはうどんも食べるよ」
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〝焼き鳥丼の発案者〟を自称する男が、ある島へ渡るために、チャーターした漁船に乗り込もうとしている。
その島の住民は皆、島内の移動に最新型の軽トラックを使い、雨の夜にはピアノを弾き、寝る前に必ずホットココアを飲む。そしてスキレットの所有率は100パーセントらしい。
いよいよ出発のとき……。男は、たかぶる気持ちをおさえるように、大根を千六本に刻んでいた。
◯
……というのは4年前の話で、
彼はいま . . . 本文を読む