◯早朝。小貝川の土手の上の道を、ぼくは4人の男に担がれ運ばれている。男たちは、スポーツ選手ではないかと、ぼくは担がれながら、最前からそう疑っている。おそらく、ひとりは野球、ひとりはサッカー、ひとりは水泳、ひとりはバスケットボールの選手に違いない。やがて、男たちはぼくを担いだまま河川敷へ下りると、そこでぼくをゆっくりと丁寧に地面に下ろす。そして、スポーツ選手たちは、ぼくには一言も声をかけずに、なにや . . . 本文を読む
ある夜のこと…。ぼくは、朝ご飯と昼ご飯との間隔に比べ、昼ご飯と晩ご飯との間隔が不自然に空きすぎていることに気づく。これは歴史的な発見に違いない!ぼくは、自分へのご褒美にと、久しぶりに近所のそば屋の上カツ丼を食べることにする。ぼくはすぐにスーツに着替え、家を出る。店に向かう途中、コンビニの前の道で一頭の水牛とすれ違う。直後、違和感のようなものが頭をよぎり、ぼくは立ち止まる。「…あれ?あの水牛…もしか . . . 本文を読む
どこにでもあるような架空の街を、ぼくは歩いている。
どこにでもある架空の街だけあって、眼に入るものすべてがどこにでもあるようなものばかり。
ありきたりな架空は、現実よりもつまらない。
やがてぼくは目的地に着く。
街はずれのだだっ広い空き地…大型商業施設の建設予定地に。
この地下にモンブランをつくっていると見せかけて、金属製の物差しを竹製につくり直している工場がある、というウワサを聞きつけ、その真 . . . 本文を読む
急にぼくは新巻鮭が食べたくなるが、この時期に手に入るはずがない。
と、
年末に某スーパーマーケットから新巻鮭が一尾逃げだし、いまも逃走中であるとの情報を得る。
ぼくは昔住んでいたもうなくなってしまった家の近くの商店街に行き、その通りの真ん中で指揮棒を振りあげる。
緊張感を持ちつつも、やさしさを込め、最初のひと振り……
すると、いままでぼくが描いた人物や動物たちが、ぼくの周りに集まってくる . . . 本文を読む
誰も知らない山奥の洋館で、友好的な宇宙人はひとりで暮らしている。
ある日、いつものように高等数学の問題集を解きながら、自分好みのタルタルソースづくりをしていたが、
朝から身体中がだるく、少し頭痛がするのもあって、なかなか身が入らない。
風邪かな……少し寝れば良くなるかもしれない……。
友好的な宇宙人は、お気に入りのフォーレのレクイエムをかけると、布団に入った。
おそらく、ゆうべ、お風呂 . . . 本文を読む
北関東一の大泥棒が、東洋一厳重な警備システムを備えた〔◯◯魚店〕からシーラカンスを盗み出す。
もう警察が動いているかもしれない、一刻も早く逃げなくては……
かれは、ホームセンターに行き、本棚をつくるために木材を寸法に合わせて切り出してもらい、フードコートで釜揚げうどんセットを食べてから、西大通りを北へ逃走する。
大泥棒の予想どおり、かれを追って、すでに北関東一の刑事が東大通りを北へ向かっ . . . 本文を読む
宇宙センターの隣のディスカウントストアの駐車場に移動販売のやきとり屋が出ている。
見ると、やきとりを焼いているのは元同僚で、本当はねぎまを10本くらいは食べたかったけど、結局、つくねを5本、ねぎまを5本注文する。
そのあとスーパーに寄り、ぼんじりを5本買い足し家に帰ると、家がいつの間にかお寺になっている。
◯
日本上空の寒冷前線の位置と焼きおにぎりの焼き加減の関係性について重大な発見をしたぼ . . . 本文を読む
みるみる陽は沈みゆき、あっという間にあたりは闇につつまれる。
まるでこの世のすべての生命が息絶えたかのような静けさがおとずれる。
ぼくは疲れ切っている。
「今年もいろいろうまくできなかった……ほんとダメだったな……」
ふと漏らしてしまったぼくのつぶやきを聞いたやきそばの精は云う。
「あとちょっとで今年は終わり。
そして新しい年が始まります!」
◯
皆さま、よいお年を
. . . 本文を読む