肋骨大学附属病院の解剖室の前の廊下に、司法解剖待ちの死体が列をつくっている。
そのなかに、住宅街にある公園の死体と、県境にある事務所の死体の姿がある。
公園の死体が列の自分の前後を見て、
「ああ、こんなに並んでますよ、みんな死んでるんですよね。いやー、ほんとみんな大変だな」
などと、なにもかもわかったような口をたたく。心の込もっていない声と口調で。
それをまったく聞いていなかった事務所の死体 . . . 本文を読む
戦後すぐに撮影された、この街の写真を見る。
板塀に挟まれた、当然舗装されていない埃っぽい道を着物に山高帽の男性が歩いている。
家を出ると、霧がひどい。
踏切を渡ろうとするが、電車がひっきりなしに行き来して、なかなか開かない。
あきらめて、線路沿いの道を歩く。ランドセルを背負った半ズボンの男の子2人とすれ違う。
自転車屋さんの前を通りすぎ、細い川にかかる橋を渡る。橋の上には軽トラックが停ま . . . 本文を読む